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その23

 横っ飛びで槍をよけ、アーヤはいまいましそうにつぶやきました。


「ちっ、次から次へと現れおって」

「アーヤ、リリアンナはどこ?」


 彩乃が杖をアーヤに向けたまま、射抜くようににらみつけます。


「お前たちが居場所を知ったところで、どうにもならないではないか。なぜならお前たちは死ぬのだからな!」


 アーヤが再び石の巨人を召喚しました。彩乃も同じく巨人を召喚します。せりかと勇樹は二手に分かれて、アーヤへ突撃します。せりかの真空波を、光のカーテンで防ぎ、勇樹の槍は黒い鎖でからめとります。


「この鎖、こいつもおれの槍と同じ、魔法を吸収する鎖だな!」


 からめとられた槍を捨て、勇樹は何本も槍を出現させました。槍をアーヤめがけて投げつけますが、アーヤの黒い鎖が槍をはじいていきます。


「勇樹さん、わたしがサポートします!」


 衝撃波を放っていたせりかが、アーヤに接近して光のカーテンを切り裂きました。せりかの剣も黒いオーラをまとっています。


「そうか、お前も魔法を吸収する剣を作り出せるのか!」


 アーヤは本を片手に、せりかの剣を足で防ぎました。アーヤの靴は硬い金属でできているようで、せりかの剣をはじきます。黒い鎖を操りながら、アーヤはおどるように蹴りを繰り出します。回し蹴りに足払いに、飛び蹴りにかかと落としと、多彩な攻撃ですが、せりかも落ち着いて蹴りに反応します。


「ちっ、こいつ、この短期間でどれだけ成長してるんだ!」


 せりかに気を取られているうちに、アーヤの召喚した巨人が彩乃の巨人に吹き飛ばされました。彩乃の巨人がアーヤにこぶしを振り下ろします。たまらず飛びのくアーヤに、勇樹の槍が投げつけられました。光のカーテンを出しましたが、槍はそれを貫き、アーヤのからだも貫いたのです。


「ぐはぁっ!」


 血をふきだし、アーヤはその場に倒れました。紫色の目が、だんだんと光を失っていきます。そして、アーヤのからだも少しずつ、輪郭を失っていったのです。やがて、淡い光となって消えていきました。


「倒したの……?」


 肩で息をしながら、せりかがつぶやきました。地面に突き刺さった槍を引き抜き、勇樹がうなずきました。


「ああ、倒したんだ。だがまだ終わっちゃいない。リリアンナを倒して、ようやく終わるんだ」

「そうですね、まだまだ気を引き締めないと。彩乃さん、行きましょう」


 せりかが彩乃のほうを振り返ると、彩乃が地面にうずくまっていたのです。からだが淡いピンク色に光っています。


「彩乃さん? どうしたの、大丈夫?」


 急いでかけより、彩乃の背中をさすろうとして、せりかは悲鳴をあげました。


「彩乃さん、からだが、透けていってる!」


 勇樹もかけよってきましたが、驚きのあまり声も出ません。


「当然じゃ。真のたましいであるアーヤを倒したのだから、創られたたましいが消えることは必然。それはそなたも知っておっただろう、彩乃よ」


 遺跡の奥から、レイピアを持ったリリアンナが現れました。あざけるような薄ら笑いを浮かべています。


「彩乃さん、今の話は本当なの? あの人たちを倒したら、彩乃さんまで消えてしまうって、それは、本当なの?」

「なんだ、彩乃よ、お前は話していなかったのか? てっきりわらわは、そなたたちが知っているものだと思っていたのだが」


 せりかはキッとリリアンナをにらみつけました。


「どうしてそのような顔をする。だいたい、そのものも今はそなたたちの味方をしているが、結局はリアリアンだ。そなたたちにとっては敵なのではないのか、ドリーミアンの少女よ」

「彩乃さんは友達よ! 敵だとか、味方だとか、リアリアンだとかドリーミアンだとか、そんなの関係ない! わたしの友達よ!」

「まったく理解できないな。やはりドリーミアンはわらわたちと思考自体が違うのであろう」


 リリアンナはレイピアを構えましたが、せりかは見向きもせずに、彩乃の手をにぎりました。


「ねえ、彩乃さん、あいつのいっていることは本当なの?」

「せりか、だまっててごめんなさい。でも、いったらきっと、あなたたちが戦えなくなると思ったから」

「だからって、そんな……」


 言葉につまるせりかを、リリアンナが冷ややかな目で見おろします。


「そんな悲しむ必要などなかろう。彩乃だけでなく、そなたたちも消えてなくなるのだから」


 リリアンナがレイピアを動かそうとしましたが、黒い槍にはじかれました。


「ほう、そなたは冷静であったか、ドリーミアンの青年よ」

「おれが冷静だって? そうか、じゃあやっぱりお前たちリアリアンってのは、感情を理解することができないんだな。おれはもう、とっくに爆発してんだよ!」


 勇樹の気迫あふれる突きに、初めてリリアンナが驚愕の表情を見せました。レイピアでぎりぎりはじきますが、槍の穂先がからだをかすめて傷をつけていきます。


「せりかちゃん! 彩乃ちゃん、力を貸してくれ! 早くこいつを倒すんだ!」

「そんなの無理よ! そいつを倒したら、彩乃さんだけじゃなくて、りりあさんだって消えちゃうんだよ!」

「だからって、ここでこいつを倒さなかったら、りりあが愛したドリーミアンの次元も消えちまうんだ! おれはりりあを愛してる、だから、りりあの愛したこの次元も守りたいんだ!」


 せりかはまるで、ほおをぶたれたかのような衝撃を受けました。ぎゅっと彩乃の手をにぎりしめると、ぐったりしている彩乃を見ました。彩乃がじっと見つめかえしてきます。


「……わかったわ」


 ほっとしたように、彩乃がうなずき、目をつぶりました。きらきらとからだが透き通っていき、そして最後には消えていきました。手のぬくもりだけが、消えずにそこに残り続けました。

その24は本日1/29の20時台に投稿予定です。

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