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その22

 光のカーテンを目指して進んでいくうちに、その巨大さにせりかはだんだんと圧倒されていきました。


 ――現実世界でこんなことができるなんて――


 光のカーテンは、彩乃のものよりもさらに広範囲で、分厚いように見えます。中の様子をうかがうように、カーテンの周りにたくさんのヘリコプターが飛んでいます。


 ――本当にすり抜けられるのかしら――


 とうとう光のカーテンの目の前に来たとき、せりかは思わずつばを飲みこみました。勇気が手をふっています。せりかたちもそのそばへと飛んでいきました。


「まずわたしから行くわ」


 彩乃が光のカーテンに手をつっこみました。手ははじかれることなく、すっと光のカーテンを通過します。どうやら本当に通れるようです。せりかも意を決して、カーテンの中に顔をつっこみました。拍子抜けするほどにあっけなく、光のカーテンを通過しました。勇樹もカーテンを通って現れます。ガラス張りの首相官邸を見おろし、三人はゆっくりと降りていきました。




 ――せりかたちが首相官邸に降り立つよりも少し前――




 首相官邸内ではリリアンナが豪華なソファにどっかりと座り、じっと目を閉じていました。そばで倒れている人間たちから、ピンク色の光がリリアンナのからだに吸いこまれていきます。そこから少しはなれたところに、貝子みるこも目を閉じて床に座っています。しかし貝子みるこのたましいは、リリアンナのすぐとなりで立っていました。幽体離脱しているようです。そのまま貝子みるこは、リリアンナの頭にグッと手をつっこんだのです。紫色のもやがリリアンナの頭に現れました。貝子みるこがそのもやに触れると、ふっともやに吸いこまれていきました。




「ふふ、どんなトラップがあるかちょっと心配したけど、全然たいしたことないじゃない。まあこんなの、ミルちゃんの手にかかれば、ちょちょいのちょいだわぁ」


 砂ぼこりと石でできた柱だらけの遺跡を、貝子みるこはひとりで進んでいきました。柱にはあのまぶたのない目の模様がたくさん刻まれています。その模様から、ときどき紫色の光線が飛んできますが、そのたびに貝子みるこの赤い矢で相殺されます。


「こんなんじゃ準備運動にもならないわぁ。でも、あなたならちゃんと準備運動くらいにはなってくれるわよねぇ」


 貝子みるこが声をかけた先には、本を片手に持ったアーヤが立ちふさがっていました。


「やはりリリアンナ様を裏切ったな、ドリーミアンの女よ。だが、残念ながらお前はここで敗れ去る。リリアンナ様のたましいはこのわたしがお守りしているのだからな」

「別にぃ、裏切ったわけじゃないわぁ。だってぇ、結局世界を支配するのってあんたたちなわけでしょ? それじゃミルちゃんのものにはならないわけだし。かわりにミルちゃんがあんたたちの力を奪っちゃえば、ミルちゃんがこの世界の支配者になれるんだもん。ってことで、さっさとくたばってもらうわよぉ」


 貝子みるこが得意の早撃ちで、アーヤを狙いますが、光のカーテンが矢を防ぎます。


「またそれ? 能がないわねぇ」


 貝子みるこはキリキリと弓を引き絞り、そして青い矢を放ちました。矢は光のカーテンを貫通します。アーヤの悲鳴が聞こえました。


「くっ、どうして防御されないのだ」

「ユウ君の槍を参考にしてみたの、この矢は魔法を全部吸収するのよぉ。どう、すごいでしょ」


 肩にかすったのでしょうか、アーヤの右手が血でぬれています。


「ふん、それで勝ったつもりでいるとはな。お前の弓の弱点など、とっくにわかっているわ」


 アーヤが呪文を唱えると、遺跡の目が全て輝きだし、いっせいに貝子みるこに光線を放ったのです。遺跡は目もくらむような紫色の光でいっぱいになります。


「どうだ、いくら連射したところで、これは防ぎきれまい」


 高笑いするアーヤめがけて、青い矢が放たれました。かわしきれずに、アーヤのわき腹を矢じりが切り裂きます。血がふきだし、アーヤはその場にうずくまりました。


「バカなっ、全方向からの光線を、どうやってよけたのだ?」

「これはあの生意気な小娘の技を参考にしたのぉ。はんぱな攻撃は、全部弾き返しちゃうわよぉ」


 貝子みるこのまわりを、幅広の剣がおおっています。もちろん、全てジュエルでデコレーションされています。


「くっ、ドリーミアンのくせに、わたしにはむかうなど、許さん!」


 アーヤが呪文を唱えると、貝子みるこのまわりに巨大な石の巨人たちが現れました。


「こんな子供だましが、ミルちゃんに通用するわけないじゃない」


 巨人たちに、赤い矢を何発も打ちこんでいきます。そのたびに、巨人のからだが爆発し、砕けていきます。アーヤが杖で稲妻を放ちますが、貝子みるこの矢で稲妻の進路がずらされます。


「いつまで続ける気かしらぁ? こんなぬるい攻撃、ミルちゃんには」


 貝子みるこのからだが、突然ぴたりと止まりました。動こうとしても、金縛りにあったかのように動けません。アーヤが勝ち誇ったように笑いました。


「確かにぬるい攻撃だっただろう? 呪文を完成させるための、時間稼ぎをしていただけだからな。さあ、お前にもわかるようにしてやろう」


 アーヤがぶつぶつと呪文を唱えると、貝子みるこのからだに巻きついた、黒い鎖が出現したのです。


「くっ、いつの間に?」

「お前に気づかれないように、ゆっくりと巻きつかせたからな。かなり時間がかかったが、これでもうお前は動くこともできまい。さあ、裏切りの報いを受けてもらおうか」


 アーヤが光の剣を出現させました。そして貝子みるこに近づこうとした瞬間に、アーヤに黒い槍が投げつけられたのです。

その23は本日1/29の19時台に投稿予定です。

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