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死にかけのダンジョンコアに拾われたので、清い水から生活インフラ迷宮を始めます  作者: 乾燥しいたけ


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第83話 白い小箱は、開けた時から時を数える



 ライラが第6層から白い小箱を持ち帰った翌朝。


 第1層の空気は、昨日とは少し違っていた。


 騒いでいるわけではない。


 むしろ、みんな静かだった。


 静かに、白い小箱を見ている。


 清水側で管理している小箱が一つ。


 そして、ライラが第6層から持ち帰った小箱が一つ。


 白い箱が二つある。


 それだけで、第1層の空気が少し狭くなったように見えた。


 俺は黒い水膜の前で、その様子を見ていた。


「増えたなあ」


『増えたわね』


 ヴェルティアが当然のように答える。


「箱が一個増えただけなのに、なんか胃に来る」


『便利なものは、増えた瞬間から扱いが難しくなるものよ』


「便利なものって、もう少し優しく増えない?」


『迷宮報酬に何を期待しているの』


 それもそうだ。


 便利な報酬が、ただ便利なだけで終わるなら、迷宮運営なんて苦労しない。


 第1層では、いつもの面々が集まっていた。


 イリオさん。


 グラントさん。


 ロザックさん。


 オルド村長。


 マイラ。


 カイル。


 テラリア。


 そして、ライラ。


 ライラは白い布に包んだ小箱を片手で持っている。


 昨日、第6層で取ったものだ。


 まだ開けていない。


 外から見る限り、清水側管理の小箱とほとんど変わらない。


 白い。


 角は丸い。


 重そうには見えない。


 けれど、昨日から第1層にいる者たちは、その軽そうな見た目に騙されない。


 あれは、軽く持てる形をした重い問題だ。


 イリオさんが最初に口を開いた。


「最初に、所有を確認します」


 ライラが片眉を上げる。


「確認するまでもないと思うけど?」


「確認するまでもないことほど、紙に残します」


 イリオさんは紙を広げた。


 いつものような軽い受け答えではなかった。


 ここを曖昧にしない、という顔だった。


「昨日の第6層踏破報酬、霧蔵の小箱一個。取得者は、冒険者ライラ殿およびテラリア様」


 テラリアが嬉しそうに頷く。


「二人で取ったわ!」


「はい」


 イリオさんは続ける。


「この小箱は王都調査団の備品ではありません。護衛対象のために取得したものでもありません。第6層を踏破した冒険者が得た報酬です」


 その場が静かになる。


 ライラも、茶化さなかった。


 イリオさんは言い切った。


「所有権は、取得者にあります」


 ライラは小箱を抱え直した。


「そこまで言い切っていいの?」


「言い切らなければ、後で誰かが別の言い方をします」


 イリオさんの声は硬い。


「王都のために取った。護衛任務中に得た。調査団の成果である。そういう言い換えを防ぐために、今ここで確認します」


 ライラの目が少しだけ細くなった。


「いいじゃない」


 短い一言だった。


 だが、機嫌は悪くなさそうだった。


 イリオさんは、そこでテラリアを見た。


「テラリア様。小箱の扱いについて、取得者間での取り決めはありますか」


「ライラが持っていればいいわ」


 テラリアは即答した。


 あまりに早かったので、ライラの方が少し驚いた。


「いいの?」


「いいわよ。わたし、管理とか苦手だもの」


「言い切ったわね」


「それに、必要な時は一緒に使えばいいでしょ?」


 テラリアはにこっと笑った。


「面白いものを入れる時は教えて。あと、また取りに行く時は誘って」


 ライラは少しだけ目を細めた。


「欲が正直でいいわね」


「駄目?」


「いいえ。嫌いじゃないわ」


 ライラは小箱を軽く持ち上げた。


「じゃあ、これはあたしが持つ。使う時は相談する。テラリアが必要な時は貸す。それでいい?」


「いいわ!」


 イリオさんが記録する。


「取得者間確認。保管および使用管理はライラ殿。テラリア様は共同取得者として、使用時に相談を受ける」


 ライラが紙面をちらりと見る。


「悪くないわね」


「後で争わないための記録です」


 ロザックさんが低く言った。


「冒険者同士でも、報酬の扱いは先に決める。いい判断だ」


 グラントさんも頷く。


「特にこれは、値がつけにくい品ですからね」


「売らないわよ」


 ライラが即座に言った。


 グラントさんは柔らかく笑う。


「分かっています。ですが、売らない品ほど、価値の説明は必要になります」


「商人って本当に嫌な生き物ね」


「褒め言葉として受け取っておきます」


「褒めてないわよ」


 小箱を挟んで、空気が少し和らいだ。


 だが、本題はここからだった。


 マイラが白い小箱の側面を見た。


「数字がありません」


 その一言で、全員の視線が小箱へ集まった。


 ライラが小箱をひっくり返すようにして見る。


「本当ね」


 清水側管理の小箱には、側面に数字が浮かんでいる。


 最初は九九。


 そこから少しずつ減っていく。


 だが、ライラの小箱には何もない。


 ただ白いだけ。


 つるりとした側面に、水紋も数字も浮かんでいない。


 イリオさんの筆が止まった。


「取得直後には、数字が出ない」


「まだ決めない方がいいわよ」


 ライラが言う。


「その通りです」


 イリオさんは素直に頷いた。


「事実として残すのは、現時点で数字表示なし、です」


 グラントさんが目を細める。


「第1号小箱は、取得後すぐに開封確認をしましたね」


 マイラが頷く。


「はい。第6層踏破後、帰還してすぐ、蓋を開けて内部を確認しました」


「その時点で、側面に九九が出た」


「記録では、そうです」


 ライラは自分の小箱を見下ろした。


「つまり、これはまだ始まってないかもしれないってこと?」


 誰もすぐには答えなかった。


 答えたくなる話ほど、まだ答えてはいけない。


 小箱の側面は、白いままだった。


 グラントさんが静かに言う。


「もし、開けなければ始まらないのだとすれば、未開封の小箱には別の価値が生まれます」


 場の空気が、また少し重くなる。


 未開封の小箱。


 使用開始時期を選べるかもしれない小箱。


 それは、ただの小箱とは違う。


 ライラは指先で蓋の縁を撫でた。


 開ければ分かる。


 開けなければ、分からないまま保てる。


 未開封のまま王都へ持ち帰れば、王都の誰かは喜ぶだろう。


 商人に見せれば、値段がつくだろう。


 冒険者としても、遠征まで温存する手はある。


 小箱は静かだった。


 ただ白く、黙っている。


 ライラは珍しく、すぐには言わなかった。


 小箱を見る。


 テラリアを見る。


 清水側管理の小箱を見る。


 それから、第6層へ続く方を見る。


 昨日、霧の中で取ったもの。


 自分とテラリアが、戻るための線を残しながら取ったもの。


 売るために取ったのではない。


 王都の倉庫に飾るために取ったのでもない。


 ライラは息を吐いた。


「開けるわ」


 グラントさんが少しだけ目を動かす。


「未開封の価値を捨てることになります」


「そうね」


「本当によろしいのですか」


「いいわ」


 ライラは小箱を両手で持った。


「あたしは、これを使うために取ったの。未開封の値段を守るために第6層へ行ったわけじゃない」


 テラリアが嬉しそうに頷いた。


「うん。使う方が面白いわ!」


「そこはもう少し重く受け止めてもいいのよ」


「重いのは苦手だわ」


「でしょうね」


 ライラは少し笑った。


 迷いは消えていた。


「開ける。記録しなさい」


 イリオさんが紙を構えた。


 今度は茶化さない。


「記録します」


 マイラも数字確認の位置へ動く。


 グラントさんは一歩下がり、しかし視線は小箱から外さない。


 カイルも黙って見ていた。


 オルド村長は胃のあたりに手を当てていたが、何も言わない。


 今は笑うところではない。


 ライラが蓋を開けた。


 白い蓋が、かすかに音を立てる。


 中は、白かった。


 第1号小箱と同じ。


 底があるようで、ないような白い空間。


 何も入っていない。


 空っぽのはずだった。


 その瞬間。


 小箱の側面に、白い水紋のような文字が浮かんだ。


 九九。


 全員が息を止めた。


 イリオさんの筆が、紙の上で止まる。


 グラントさんの目が鋭くなる。


 マイラは即座に数字を確認する。


 カイルが小さく声を漏らした。


「今、出たよな?」


 ライラは小箱の側面を見たまま、ゆっくり言った。


「出たわね」


 テラリアが目を輝かせる。


「開けたら始まったのね!」


「第2号小箱、初回開封時に側面表示。数字、九九」


 イリオさんが、事実だけを口にした。


 マイラが続ける。


「開封前、数字表示なし。開封後、表示発生。内部は空」


 グラントさんが低く呟く。


「取得時ではなく、初回開封時に管理日数が始まる可能性が高い……」


 その声には、商人の計算が混ざっていた。


 ライラが顔をしかめる。


「また商人の顔になってる」


「なります」


 グラントさんは即答した。


「未開封の霧蔵の小箱は、使用開始時期を選べる可能性があります。これは、開封済みの小箱とは価値が違います」


「売らないわよ」


「でしょうね」


「諦めが早い」


「売らない方が自然です。ライラ殿なら特に」


 グラントさんは小箱を見つめた。


「ですが、今後、第6層踏破者が増えた場合、未開封小箱の扱いは非常に重要になります」


 ロザックさんが腕を組む。


「持ち帰った奴が、開けずに売ろうとするか」


「あり得ます」


 イリオさんが頷く。


「開封済みを未開封と偽る者も出るでしょう」


 カイルが嫌そうな顔になる。


「うわ、面倒くさ」


 ライラがカイルを見た。


「あんたが言うと重いわね」


「俺、今回は何も言ってない!」


「今回は箱が勝手に問題を増やしたわ」


 小箱は静かに白い数字を浮かべている。


 九九。


 それは数字であり、期限であり、価値でもある。


 俺は黒い水膜の前で、思わず唸った。


「開けるまで始まらないのか」


『そうよ』


 ヴェルティアは当然のように言った。


「取得した瞬間から減ったら、使う前に価値が落ちるもんな」


『高貴なる報酬に、そのような雑な仕様はないわ』


「親切設計だ」


『当然でしょう』


「でも、未開封品の価値が出るな」


『ええ。だからまた揉めるわ』


「便利なものって、揉めるために生まれてきてない?」


『使う者が揉めるのよ。物はただ、そこにあるだけ』


 そう言われると、何も言えない。


 悪いのは小箱ではない。


 小箱を見て価値を考える人間側だ。


 いや、迷宮側もだいぶ悪い気はする。


 第1層では、イリオさんが静かに紙を置いた。


「今後、霧蔵の小箱は開封状態を必ず記録します」


 ライラが小箱を閉じる。


「開けたか、開けてないか」


「はい。取得日、取得者、開封日、開封時の数字、所有者または保管者」


「多いわね」


「少なくして困るのは、取得者です」


 イリオさんはライラを見た。


「これは、ライラ殿の所有を縛るための記録ではありません。ライラ殿の所有を、後から別の名で奪われないようにするための記録です」


 ライラは、そこで口を閉じた。


 軽口は出なかった。


 少しだけ間を置いて、頷く。


「分かったわ」


 その一言で、空気が締まった。


 グラントさんも、今回は茶化さない。


「未開封であれば使用開始時期を選べる。開封済みであれば残日数が減る。取引価値、保管価値、冒険者道具としての価値、すべて変わります」


 ロザックさんが頷く。


「第6層周回を考える奴が出るな」


「出ますね」


 イリオさんが即答した。


「ただし、第6層は誰でも行ける場所ではありません」


 マイラが静かに言う。


「第5層を越え、第6層を踏破し、戻る必要があります」


 カイルが腕を組んだ。


「しかも、あの霧冷えの番隊を越えるんだろ。小箱目当てで突っ込んだら、普通に戻れないぞ」


 ロザックさんがカイルを見る。


「分かってるじゃねえか」


「経験者だからな」


 カイルは少しだけ胸を張った。


 それから、昨日より静かな声で言った。


「あと、待ってて分かった」


 ライラが見る。


「何が?」


「戻ってくる時、小箱より先に足を見るんだなって」


 場が静かになった。


 カイルは視線を下げる。


「昨日、二人が戻ってきた時、最初に箱じゃなくて足を見た。自分で歩けてるか。腕が動いてるか。寒さで変になってないか」


 イリオさんが静かに頷く。


「帰還確認です」


「うん」


 カイルは小箱を見た。


「小箱はすげえけど、持って戻ってこなきゃ意味ないもんな」


 誰もすぐには笑わなかった。


 テラリアも、にこにこしながら黙っていた。


 マイラが短く言う。


「記録します」


 カイルが少し照れたように眉を動かす。


「そこ記録されるのか」


「必要です」


 マイラは真面目に答えた。


「待つ側の確認視点です」


 ライラは小さく笑った。


 今度はからかう笑いではなかった。


「いいじゃない。待たせた意味があったわね」


「まあ、ちょっとはな」


 カイルはそう言って、照れ隠しのように頭をかいた。


 軽口は、そこで止まった。


 少しだけ、その空気が残った。


 小箱より先に足を見る。


 それは、第6層の報酬より帰還を先に見るということだ。


 清水の迷宮で、何度も繰り返されてきたことだった。


 マイラが第1号小箱へ視線を移した。


「第1号小箱も、初回開封時から始まった可能性があります」


 イリオさんが頷く。


「記録上、取得直後に開封確認をしています。取得時点で数字が出ていたかどうかは未確認ですね」


「はい。次に小箱を取得した場合は、未開封状態での観察時間も記録した方がいいと思います」


「採用します」


 ライラが小箱を抱える手に少し力を入れた。


「次に、ね」


 ロザックさんが見る。


「第6層へ行きたがる奴は増える」


「でしょうね」


 ライラはあっさり認めた。


「でも、あれを欲しいだけで取りに行くなら、霧に食われるわよ」


 テラリアが頷く。


「寒かったわ」


 カイルも言う。


「見えないし、音も変だし、敵がちゃんと組んでくる」


 ライラは第6層の門の方を見る。


「あの階層、火力があるから楽って場所じゃない。戻る道を作れないなら、小箱まで行く前に終わるわ」


 ロザックさんが静かに頷いた。


「掲示に使えるな」


「使わないでよ。あたしの言葉を勝手に売らないで」


「売らねえ。だが意味は使う」


「それならいいわ」


 ライラは小箱を見下ろした。


 側面の数字は、もう浮かんでいる。


 九九。


 開けたから始まった。


 オルド村長が、それまで黙って聞いていた口をようやく開いた。


「村としても、これは気をつけねばなりませんな」


 みんなが村長を見る。


 オルド村長は胃を押さえていなかった。


 杖に両手を置き、白い小箱を見ている。


「未開封の箱が高く売れるとなれば、村の若い者や外の冒険者が、第6層を軽く見るかもしれません」


 声は穏やかだった。


 だが、冗談ではなかった。


「白い箱に見えても、そこまでの霧は白く優しいわけではない。そこを掲示にも、講習にも、きちんと入れるべきでしょう」


 ロザックさんが頷く。


「その通りだな」


 グラントさんも表情を改めた。


「未開封小箱の価値だけが先に走るのは危険です。値段を言う前に、取得条件と危険を示すべきでしょう」


 ライラが小箱を抱え直す。


「ほら。商人もたまには安全側に立つじゃない」


「商品が壊れる市場は困りますので」


「言い方」


「人が死ぬ市場は、もっと困ります」


 グラントさんは静かに言った。


 その場に、また少しだけ重い沈黙が落ちる。


 小箱は便利だ。


 未開封なら、なお価値がある。


 でも、それを取りに行く場所は第6層だ。


 霧冷えの番隊がいる、本物の迷宮だ。


 ライラは小箱を膝の上に置いた。


「これは、あたしの遠征用にするわ」


 イリオさんが紙を構える。


「遠征用、ですか」


「薬。食料。予備の触媒。傷みやすい魔術素材。期限のある報酬。あと、琥珀の雫を一本」


 グラントさんが反応した。


「高い酒が混ざりましたね」


「大事でしょ」


「否定はしません」


 イリオさんは少しだけ考えてから言った。


「用途記録には、嗜好品兼交渉用物資として残します」


 ライラが少し意外そうに見る。


「止めないの?」


「酒として飲むか、贈答や交渉に使うかで意味が違います。遠征物資に含める余地はあります」


 ライラは口元を上げた。


「いいじゃない。今日は話が早いわね」


「昨日までの記録があるからです」


「積み重ねって便利ね」


「はい。面倒でも残す意味があります」


 テラリアが小箱を覗き込む。


「お菓子も入る?」


「入るでしょうね」


「じゃあ、わたしも使う時はお菓子を入れたいわ」


「溶けやすいお菓子なら意味はあるわね」


「やった!」


「ただし、勝手に開けない。勝手に出さない。勝手に食べない」


「最後が難しいわ」


「そこを一番頑張りなさい」


 ようやく、少し笑いが戻った。


 でも、今度の笑いは軽すぎなかった。


 小箱の価値。


 戻ること。


 未開封の危険。


 それを確認した後の笑いだった。


 俺は黒い水膜の前で、そのやり取りを聞きながら息を吐いた。


「ライラ、自分の物として使う気満々だな」


『当然でしょう。自分で第6層を越え、自分で取った報酬よ』


「王都に取り上げられる感じにならなくてよかった」


『そこを曖昧にしたら、迷宮報酬の意味が崩れるわ』


 ヴェルティアは白い小箱を見ている。


『迷宮は、踏破した者へ報酬を出す。国へ出しているのではない。ギルドへ出しているのでもない』


「冒険者個人に出してるんだな」


『ええ』


 ヴェルティアの声は静かだった。


『だからこそ、持つ者が考えるのよ。欲しかったから取りに行く。取ったから使う。使うから考える。そこまで含めて報酬だわ』


 第1層では、ライラが白い小箱を布で包み直していた。


 側面の数字は、もう浮かんでいる。


 九九。


 時を数え始めた数字。


 ライラはそれを見て、嫌そうに笑う。


「数字が見えると、急に急かされるわね」


 マイラが頷く。


「期限は行動を変えます」


「本当にそうね」


 ライラは小箱を抱える。


「でも、使う時期を選べるって分かっただけでも大きいわ。未開封で持つか、開けて使うか。そこからもう判断なのね」


 ロザックさんが言った。


「第6層の報酬らしいな」


「何が?」


「取った後も、判断させてくる」


 ライラは一瞬黙った。


 それから、鼻で笑った。


「嫌な報酬ね」


「欲しかったんだろ」


「欲しかったわよ」


 ライラは白い小箱を抱え直した。


「欲しかったから取りに行った。取ったから使う。使うから、考える」


 白い小箱は、ライラの腕の中で静かに数字を浮かべていた。


 今日から、その箱は時を数える。


 そして、清水の迷宮の問題も、また一つ動き始めた。



後書き

ここまで読んでいただきありがとうございます。


ライラの小箱は、本人の報酬として扱われることになりました。


そして、霧蔵の小箱は取得した瞬間ではなく、初めて開けた時から数字が浮かぶことも判明しました。

未開封の小箱には、また別の価値が生まれそうです。


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