EX2話 戦争前夜 -人間と亜人と勇者-
人類、人間・ヒト・ホモサピエンスなどのヒト種の進化の過程を含めての総称──だったのは約八十年前のこと。
今ではコミュニケーションなどが可能な知的生命体全般・この惑星の住人・この惑星生まれの他惑星住みを指すようになった。
人類もといこの惑星の住人などは、大きく分けて三種類にカテゴライズされていた。
まずはこの惑星の原住のヒト種こと「人間」で、もちろん一般的なヒト種でこの惑星の歴史とともにあった。
次に亜人種こと「亜人」で、人間との類似点がありながらも他の生物の要素も含むような容姿・特徴などを有した種で、人間と亜人のハーフも含まれる。
最後に”異世界帰り”とも”勇者の子孫”とも言われる前述の二種が異世界を経てこの世界にやってきた人たちとその子孫で「勇者」種とも呼ぶ人もいる”異能”を持ったものたち。
この世界・惑星から異世界への転生・転移・召喚などを以て特殊能力もとい”異能”なども得た状態でこの世界に帰ってきた・召喚・渡来した人類などを指す。
姿形は人間や亜人などと変わらないものの、人ならざる異能を持っていることで──かつては他の二種とも区別されていた。
加えて異世界を経ての肉体の変質か、それとも鍛えられたことで普通の人間比でも勇者種は”強靭”な傾向にあったこと、力加減を間違えれば他者を損傷・損壊させてしまう者もいたという。
そして人類に益をもたらすものと人類に害をもたらしかねないものと役に立ちそうにないものも含めて少なくない数の異能が確認された。
千差万別・多種多様・種種雑多、現在確認されているだけでも数百種類以上の異能が存在するという。
そして異能の多くは遺伝する、それも単一に限らずに複数種類の組み合わせも発見されている。
ちょっと前までは知名度の高い異世界帰りの勇者パーティ・その子孫などを除けば、異能のそれを自ら明かすか露見しなければ普通の人間や亜人として過ごせていた。
ただ一度異能持ちなのがバレてしまえば、畏怖され恐怖され忌避されることもある。
なにせ人の形をしていても内には未知の・人知を超えた特殊能力もとい異能を有している、場合によってはそれが普通の人間・亜人などに向くかと思うとそれは警戒されて当然で。
実際にかつてはその異能を振りかざして好き放題・傍若無人に振舞ったものもいたという、決して多くは無かったそれが勇者全体の評価に繋がってしまうことも避けられなかった。
結果的に見た目が異なる「亜人」と人ならざる異能を持った「勇者」は「人間」と区別され────差別も迫害もされた。
場合によっては亜人に近しい外見的特徴を持つもの、異能を持っていると誤認されたものも含めて差別・迫害された。
しかし法的にはそれぞれの人権が存在し・尊重されていることになっていた。
実際に差別と迫害されたものが法的に罰せられることはあっても、一部の普通の人間の意識の根底には区別・差別・侮蔑・嘲笑があった。
思うことは自由で口に出すことだって出来てしまったし、その違法さに周囲が目を瞑ってしまえば一方的に攻め続けられることもあったというし、それで反論・反撃したものがいたことで普通の人間目線から亜人・勇者に対する心象の悪化もありえたことで。
もちろん差別や迫害を通じて人間や亜人の類に対しての不安・恐怖・怒り・悲しみ・憎しみを勇者種と呼ばれたものたちが募らせていったのも確かなことで。
そして人間と亜人のハーフ、人間と勇者のハーフ、勇者と亜人のハーフとその子供・子孫も同じように見られた。
相互理解を呼びかけるもの・理解しようと努力するものもいないわけではなかった、けれどそれは結果的に小数派で多数派を覆すには至らず、それぞれが強い悪感情に塗り替えられていくことで対立は高まっていった。
異世界からの門が開き、一度は全人類と勇者と亜人が一丸となって異世界からの侵略者相手にこの惑星を守った。
そこから多くの亜人や、異能を持った元この惑星出身の勇者とその子孫たちが戻ってきて・やってきた約六十年ほど。
向かう先は迫害を通り越した”魔女狩り”か、それとも異能や亜人による報復的”虐殺”か、戦争前夜のようなひりついた空気があちこちで漂っていた。
そんな三種類にカテゴライズされてそれぞれ大きな壁を築きつつあったそれを、実質全て均してフラットにしたのが”異星からの侵略者”だった。
一度全ての人類における敵意・悪意・愚意・殺意・戦意を無くし、以降の人類は悪いこと全般ができなくなった。
思想や意識こそ尊重したものの、それを相手に悪意を以て伝えることはもう許されなくなったし出来なくなった。
危害を加えようとすれば頭が”ぴりっ”として未然に防がれる。
たとえ声に出して・文字にして相手に伝えようとしても、もう相手に認識されることはない。
もちろん勇者も異能を悪いことには使えないし、その異能を以て自分の意思で他者を害すことも不可能になった。
異能自体を消すことは出来なくとも、その者の行動を頭を”ぴりっ”とさせることで肉体動作からキャンセルするし、対異能シールドを以て防ぐことが出来る──とある例外を除いては。
そうして結果的にこの世界では表面上の全ての区別と差別と迫害は存在しなくなった。
そしてそもそもがそれぞれのハーフが増え続けたことで”当たり前”にもなっていったのも大きい、少数派だからと追い立てていたそれらは原種やハーフも含めて増えたことで普通の人間が必ずしも絶対的多数派とはならなくなったのも理由の一つにあって、そして事実と異なる偏見を少しずつ解いていった人たちもいて。
そうしたことで今この惑星では人間・亜人・勇者とそのハーフたちが共存・共生している。
<カクヨムでも連載中>
区別と差別と迫害がなくなるよう管理されることになった世界です。




