第31話 これからのこと。
私はどこにでもいる普通の女子高生、下十条ユリ。
今の趣味は人間観察……という体で女の子同士を眺める、当事者にならないし・干渉はしないし・探りも入れない、見たものを少し妄想で補完するぐらいのほんのり百合オタクで基本無害だと思う!
人には迷惑をかけない、模範的な生活をして、そして相手を”見て”そして”褒める”ことをモットーとする善良な市民…………だったはずなのに。
そんな私がある時サキュバスの才能に目覚めてしまった!
ムチムチになる身体……止まらない汗……周囲に”催淫”を”嫌悪”をまき散らす歩く災害……。
貯蔵している精気が尽きてしまうと、場合によっては国家規模で影響を及ぼしかねない私の異能……どうしてこんなことに。
私はただ百合を眺めていたかっただけなのに……。
明かされる下十条家の秘密、サキュバスクイーンと異世界帰りの勇者との間に生まれた子孫……そして全員が女性。
そんな私には大好きな姉がいて、そんな姉を私は自分の暴走でサキュバスの眷属にしてしまった!
死の無いこの世界、これから永遠に続くはずだった姉の人生を私が台無しにしてしまった…………。
でもそんなことになってもお姉ちゃんは私のことを受け入れてくれるという、器が大きいとか寛大とかそんな次元の話じゃなくて私にはもったいないお姉ちゃんだよ……。
そんなサキュバスの主となった妹の私と・サキュバスの眷属となった姉は、サキュバスに覚醒することに備えて”精気”を溜めなければいけない。
人間におけるカロリーとかのビタミンとかミネラルのその類、サキュバスにおけるエネルギー源。
サキュバスと人間の両方の側面を持つサキュバスハーフという特性ゆえに、サキュバス覚醒時でも高エネルギーの飲食をすること・人間時でも精気を吸うことでもエネルギー補給・貯蓄に回すことが出来る。
サキュバスの主従、眷属は自力での精気調達が出来ないので主が眷属に精気を分け与える……つまり私が精気を調達して、お姉ちゃんに補給する必要があること!
それでサキュバスが飢えた時には、生存本能が働いて”催淫”などの異能を以て精気を補給しようとする、そしてサキュバスクイーンの子孫である私はその出力があまりにも強いらしく、その”催淫”で国を滅ぼすレベルだということ。
つまり精気調達は欠かせない! そしてお姉ちゃんへの精気を分け与えることも日常的に必要なことに!
そんなことから私のサキュバスとしての他人の精気を吸って・溜める日々と、お姉ちゃんに精気を補充する日課が始まる……!
* *
ということで私はお姉ちゃんとの間に一定時間”触れ合う”日課を設けることになった。
平常時の精気補給における最大効率は粘膜接触らしいけど…………多少非効率でも私とお姉ちゃんが触れていれば精気の譲渡は出来るようなので、基本的にはそれで!
今日は生徒会で早くに家を出るお姉ちゃんと一緒に登校をしてる。
現在手繋ぎ中、傍から見ても仲のいい姉妹とかそんな風に見えるはず? 見えるといいな。
万が一にでも会えない時間にサキュバスが覚醒してお姉ちゃんが飢えることになったらと思うと、精気に関しては過不足なく渡しておきたい。
サキュバス覚醒時・むちむちな私がやらかしたあの時に集めた精気の貯蓄があるにしても、基本的には私の有している精気も減っていく一方なので調達しなければいけないんだけどね。
サキュバスの祖先にしてサキュバスクイーンにしてひいおばあちゃんのトェイさん曰く、”夢魔”として他人の夢に入って精気を吸う・同意の上はもちろんだけど精気を吸える相手こと”そういう相手”を見つけるのがいいとのこと。
前者はともかく、後者はムリだよ!?
いやだって「へへっ……ちょっと精気吸わせてもらっていいですか?」ってどんな変質者・変態!? 悪意が無くても通報されるわ!
意図としては恋人関係的に精気も吸える仲の人を見つけるみたいなことなんだろうけど、これまで彼女いない歴年齢の私にはムリ!
だから夢で調達すればいいのだ、他人の夢にお邪魔してちょーっと精気をもらうだけ、なに純愛神もそこに関しては実質黙認みたいなことを言ってたみたいだし……。
誰からもらおう?
かつての夢魔なら精気を吸う相手に忍び寄る必要があったけど、今の時代遠隔的に認識している相手なら夢に入ることが出来るようになったという。
もちろん拒絶? 出禁? 着信拒否? みたいに私がされていなければ出来るはず、出来るといいな?
トェイさんに聞いたところ『サキュバスが入る・見せる夢は当人の記憶に滅多に残らぬからそこまで気にする必要はないはずじゃ』たとえ残ったとしても朧げ程度じゃな、と付け足していた。
それならまぁ…………だけど、私としてはやっぱり精気を吸ってしまう以上はちゃんと同意を得たいと思うのは確かなことで。
ということで私は知人・友人たちに一大告白をすることを決めている。
それは私が”サキュバスハーフだったことが分かった”こと、そして”夢にお邪魔するかもしれない”こと。
それをもし許してくれるなら、これからも私と付き合いを続けてほしい……。
都合が良すぎるよなぁ、もしそれを言って相手がNOで拒絶されてしまうなら…………仕方ないことだと思う。
だってそれは人間の友達と思っていた人が実は亜人種とのハーフで、それもサキュバスという一見いかがわしいし実際にいかがわしいような側面も持っているということ。
そんなサキュバスが友達のよしみで精気を吸わせてくださいと言っているようなもので…………こう考えるとアウトな要素しかない!
それでもどっちみちこの私の体質が回りまわって迷惑をかけかねない以上、私の正体と私の行動については話さなければいけないと思っていて。
だからこれで拒んでくれて・嫌ってくれた方が私から必要以上に迷惑をかけないで済むからいいかもしれない。
仕方ないけど、しょうがないけど、当然のことだけど……本当は今まで私に付き合ってくれた友達がいなくなるのは寂しい。
だから心のどこかで”もしかしたら受け入れてくれるかもしれない”という下心もあっての告白なのも確かで、私はなんて矮小な人間……否サキュバスハーフなのか!
ともかく私は今日告白するぞ、最初にミドリとそして宮浦さんに……!
と、そこまで考えて私は”どこまで”言っていいかを考える、そして私たちは姉妹でサキュバスの主と眷属で……それ以外には”何か”があるのかを。
「お姉ちゃん」
「なに?」
私が呼ぶと繋いでいるお姉ちゃんの手が少しきゅっと反応する。
私としては私のこと、そして私と深く関連する眷属にしてしまったお姉ちゃんのことも話せれば相手にとってもフェアだとは思う。
「友達に私のことは話そうと思うけど……お姉ちゃんのことはどうしよっか?」
「私たちの主従のことでしょう? 構わないわ」
いいんだ、お姉ちゃん的にも……それはありがたいけど。
「……(その方が合法的に触れ合えるし)」
「えっと、なんて?」
「なんでもないわ、私の評判を気にしているのなら大丈夫よ。それで評判を下げる・拒むような相手ならそれまでのことだわ」
お姉ちゃんは大人だなぁ……。
「わかった、それでその…………私たちって姉妹で、サキュバスの主従ってことでいいんだよね?」
「ええ」
何が言いたいかと言うと、私は”あの”意識が落ちる前にお姉ちゃんに私とどうなりたいかと聞いて、特に無いと返ってきて、でもやりたいことはあって、そしてお互いに好きだと思っていて……そこで話は止まっている気がして。
実際のところ私たちの関係は”交際”していることになるのかな?
「その…………一応お互い好き合ってるわけだけど、いや私がそう思ってるだけなら──」
「ッ……! 好きよ、ユリ!」
「そ、そう!?」
「ええ。でも、あくまで”姉妹”であって”主従”だからそれ以外のことはいいわ」
関係性としてはそれで説明がつく、実は”姉妹で好き合っています”というのは主従の前提がある以上に必要がないのかもしれない。
「……(ユリが望むなら私の彼女と紹介してくれてもいいのだけど)」
「………”私の彼女です”って言った方がお姉ちゃんとしては安心する?」
「き、聞こえ…………本音を言うと安心出来るわ。でもユリの今後を考えればそれは足かせになりかねないわ」
「足かせ……?」
「ユリがサキュバスとして他人の精気を吸う以上、相手にも心を許してもらう必要があるかもしれない。なのに”私は彼女持ちですが精気は吸わせてください”というのを言葉にしてしまうと心象的にはどうかわからないわ」
「うっ……それは確かに」
確かにサキュバスの主従の前提はある、それでも”なら精気は彼女から吸えばいいじゃん”という感想が出てくるのは仕方のないことで。
「だから私はあなたの姉で、そして眷属で。その説明以上のことは必要ないわ、だから私たちも (まだ) 付き合ってない」
「まだ……?」
「また聞こえ…………付き合っていると言える相手が出来たのならそう紹介してもいいはずよ。その時にはその相手とも”そういう関係性”になっているかもしれないけれど」
「そういう関係性ねえ……」
つまりは”私がお姉ちゃんとは別に彼女を作る”ということ言っているんだと思うけど、うーんうーん想像できない。
「とにかく私はユリのことならきっとどんなことでも受け入れるわ、だから気にしないで」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどね……ありがとう、お姉ちゃん」
私にとって理想で、とても優しくて、ものすごく器が大きくて、そして私が言おうとしていることを全部理解してくれる最高のお姉ちゃんだなぁ。
そんなお姉ちゃんはこう言ってくれるけれど、お姉ちゃんを失望させない・悲しませない・辛い思いをさせないように私はしなきゃ!




