不安(リリー・ネリネ)
動物たちに案内されてたどり着いたのは、森の奥深くにある湖だった。湖の真ん中にはぽつんとひとつだけ洞窟がある。
動物たちがここで止まったということは、おそらくあの洞窟が喋れる動物がいる場所なんだろうけど──
「これ、どうやって渡るの?」
「見渡す限り、渡る場所なんてありません。」
「ミラちゃん、動物たちは何て言ってるのかしら?」
「うんとね、待ってればいいって!」
「そんな適当な……」
そういいかけたが、その変化は突然現れた。
湖一帯に白い霧が立ち込める。それは瞬く間にその場にいるすべてを覆うほど広がる。
「ネリネ! プリムラ! ミラ!」
「リリーちゃん!」
「リリー!」
「ママたちどこー?!」
私たちは互いを見失わないように声を出しあった。しかし、周りの白い霧は濃くなる一方だった。
「みんな……」
やがてみんなの声が聞こえなくなり、その事実がリリーを心細くさせた。霧が濃くなるのと比例して、どんどんと暗い気持ちが身体中を支配する。
いつかみんないなくなってしまうかもしれない。
ひとりぼっちになるかもしれない。
そんな思いが次々と出てくる。
「よしっ!」
パチン!
このまま暗い気持ちに支配されてはダメだと思い、自分の頬を叩いた。
「いったーい!」
自分で叩いたのにも関わらず、その痛みにおもわず叫んでしまう。
強く叩きすぎた。
それでも、声を出したからすっきりした。さっきまでの不安な気持ちが嘘のように消えてる。
改めて前を向くと、そこには人影が見えた。
「ついてこいっていってるの?」
その人は手招きをしているように感じた。
「行こう」
意を決して、その人の方向へ一歩踏み出しす。
***
「リリーちゃん!」
気づくと一人だった。辺りを見渡しても、人影が全く見えない。
「プリムラもミラちゃんも大丈夫かしら」
リリーちゃんの魔法は規格外だ。しかし、プリムラとミラちゃんは弱くないけど強くもなかった。
「まあ、それは私もか」
初めてリリーちゃんに会って助けられたとき、その姿に見とれた。怯えるだけの私と違って立ち向かっていくその姿は、私とは違う存在のように感じた。
けれど、それは私の思い違いだった。魔物を初めて倒したリリーちゃんは、悲ししそうで今にも泣き出してしまいそうな表情をしてた。
その時気づいた。
どんなに強くても私より年下何だって。
もう一度あったときは、リリーちゃんが笑顔で居続けられるように私が守ろうと思った。
あの時から私も強くなったと思う。冒険のための知識も身に付けた。
けれど、リリーちゃんには届かない。
プリムラを助けたとき、リリーちゃんの力は圧倒的だった。
そして思う、私はリリーちゃんにとって足手まといでしかないんじゃないかって。
1度不安な気持ちを抱くとどんどんと身体中広がっていく。不安に同調するかのように、霧も濃くなっていた。
「それでもリリーちゃんと冒険を続けるんだけどね」
足手まといなんて最初からわかっていた。それならもっと強くなるだけ。それほどリリーちゃんと冒険がしたかった。
「それに、リリーちゃんの隠し事も知りたいしね」
リリーちゃんの規格外の魔法。リリーちゃんに魔法を教えたという人のこと。まだまだリリーちゃんの秘密は多かった。
リリーちゃんのことをもっと知るまでは、ついていくに決まっている。
「これが惚れた弱味よ! 同性なんだけどね」
気づくと身体中を支配していた不安が消えている。
そして、霧の奥に人影が見えた。その人影は手招きをしているように見える。
「怪しいけどついていくしかないか」
しっかりした足取りでネリネは一歩を踏み出した。




