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【完結】すっからかんのマリエ☆攻略対象が絶倫しかいない乙女ゲーに転生したので抱き殺されないエンドを目指します  作者: ケロリビ堂


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75.オンドレアとマリエ

 人を殴る時、殴っとる方も痛いもんや! 殴らされとるほうの心の痛みにも気ぃ使え! とは俺はよう言わんよ。殴られとる方が痛いに決まっとるし、こっちも痛がらせたくて殴っとるわけやからね。


「おう、なあ、どうなんや、なあ」


 俺は銭ゲバ妖精の襟首を掴んだまま、人間離れしたキレーなお顔をボッコボコにぼてくりまわす。こいつ俺が事務所留守にしとる間にコソ泥しとったんよ! 許さへん、そんなん。当然の制裁や。なあ。


「なんとか言えや……あ? もう気絶したんかいな、アホが」


 襟首から手ェ離したら、野郎潰れたケロケロケロちゃんみたいなカッコで床にべしゃっと伸びたった。つまらんのう。

 おまけにこいつ、めったやたらと硬い。どんだけボコしたり指ひん曲げたりしたっても数日でぜ~んぶ元通りに治りよる。トカゲのしっぽかいな。


「エルフっちゅうのはなんやけったいなもんやな。俺らとは身体の作りが違ごとるんやね。まあまあ強く殴っとるのに歯ァすら折れへんし。ほんま、イライラすんで」


 そもそも、怪我に異常に良く効くポーションがションベンみたいな安値でいくらでも流通してるのがおかしいっちゅうねん。せやから暴力で人ぉ支配したり利用したりするんには死ぬ一歩手前までひつこく痛めつけて恐怖を植え付けたるしかやりようがないんよ。あとは思い切って一息に殺すかの二択しかない。まあ、当然やけど死体は口を利かんし言うことも聞かん。うまくはないわな。


「いっそのことお前も殺したったらスッキリするやろな……」


 こいつほんまムカつくねん。もう何度も俺は殺したいと思うとる。せやけど、なんでやろな。いつも殺すところまでいかんのや。

 あのゲーリッチのボンに対してもそれは同じでな。もうめんどいわ、いてまえ思てもなんでか毎回ブレーキがかかんのよ。


「まるで俺の知らんルールが世界に設定されとって、それを守らされとるみたいで気に入らんわ……、けったくそ悪い」


 他にも俺がやりたいのにやれんことはある。マリエのことや。俺はマリエを自分のモンにしたい。せやったら力づくでモノにしたったらええねん。それは明快なんや。せやのに、できひん。どうしても段階を踏まんとあかんような無意識の強制力が働いとるんや。


「せっかくまた会えたっちゅーのに、なんでこないに我慢せんならんねん……」


 俺はマリエと初めて会うたとき、ただの浮浪児、路地裏のドブネズミやった。それを今のお父ん、先代の闇ギルド長のイテモータル・シバイタルネンに拾ろてもろて養子になった。

 おとぎ話かっちゅうくらいの大出世、成り上がり物語やね。俺はなんももたん裸一巻から一転して王者の証である財力、権力、暴力をすべて手に入れたんや。せやけど好きな女だけまだ手に入れられへん。

 俺はマリエとおんなじピーチ色の髪の女でぎょうさん練習して、女を喜ばせる手練手管も覚えた。貴族街にマリエと住むための家も建てた。あとはマリエと再会して、恋人同士になるだけやった。


「せやのに、なんでお前やねん、このタニシ」


 何年かぶりにスラムに入り込んだマリエを助けたのは俺やなくてこいつやった。ほんとなら俺がやるはずだったヒーローの役をこのコソ泥妖精が掠めとったんや。

 ぶらぶらしとったゴロツキに報告受けてこいつの店まで様子見に行ったら、マリエはもうすっかりこいつと打ち解けよってからに、機嫌悪いの必死で隠して再会したら渡そう思とったブローチ渡すんで精いっぱいやったんや、俺は。


「そーかと思えばブローチもようつけんとこいつをナイトにしとるし……俺のことどんだけ凹ませたら気ィ済むんよ、マリエは……」


 そんでも、こいつがマリエのことなんとも思っとらん言うから。俺の恋路を手伝うてくれる言うから。俺心許せるツレもおらんし、一瞬だけ信じてやろうかと思うたんや。せやのにこいつ! こそこそと手癖の悪いやっちゃ!!

 俺はまた腹が立ってきた。もう我慢せんと、心理的なブレーキも無視してこのまま殴り殺そかな。そう思て床で潰れとる妖精クンの襟首をもっかい掴み上げて拳を振り上げたところで、ドアの音がして舎弟が二人駆け込んできた。


「ギルド長!」

「大変です!」

「何やお前らは! ノックもせんと! 邪魔すなや! 今このクソ妖精の顔面、もんじゃ焼きにしたるっちゅーねん!」


 入ってきた舎弟は俺がマリエの動向を別々に監視させとった奴らやった。イラつくのを抑えて俺は報告を聞くことにする。


「あ、お前さきに話していいよ」

「え、いや兄ィが先でいいですよ」

「どうぞどうぞ」

「どうぞどうぞ」

「どっちでもええからはよ言わんかい!!」


 俺が順番に舎弟の頭を掌でパンパンと一発ずつしばくと、先にしばかれたほうから口を開いた。


「マリエの姐さんが王宮に入れるようになりました!」

「なんやと? 王さんと取引できるようになったんかいな! そんでお前のほうはどないな話やねん」

「お、俺の方はマリエの姐さんが鉱山で賢者の石を手に入れたという報告です!」


 俺の頭の中でそれぞれの報告が組み合わさってカチりと嵌った。

 この国の王が賢者の石を手に入れたがっていて、持ってきた奴に莫大な報奨金を用意しているというのは有名な話や。なんでも賢者の石一個につき一億マニー出すとかなんとか……。マリエはそれをやり遂げる準備を一人で進めとるんか……。


「一足飛びに俺から逃れるつもりか、マリエ。許さんで……、絶対に逃がさへん……!」


 俺は伸びてぶら下がっとるエルフを掴み上げとった手を離し、上着を羽織って事務所を出た。もうなりふり構ってられへん。今日こそおまえを俺のモンにしたるからな。マリエ……!

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