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すっからかんのマリエ☆攻略対象が絶倫しかいない乙女ゲーに転生したので抱き殺されないエンドを目指します  作者: ケロリビ堂


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6/8

6.まりえとワルブレヒト

「え? ちょちょちょ、何? なんでわたしの家に引っ越し屋さんみたいなのが来てんの!?」

「やあおかえり、マリエ。錬金もしないでどこで遊び歩いていたんだい? 随分余裕だねえ。あ、それそこに置いておいて」


 スラムから帰って一安心って思ったら、なんでか知らない人たちがどやどやとうちに荷物を運びこんでいてわたしは思わず仰け反ってしまう。慌てて玄関に駆け込むと、中には屈強な男たちにあれこれ指示をしているワルブレヒトがいた。しかもマリエママのお気に入りのティーセットで優雅にお茶までしていた。


「ワルブレヒト……兄さん! 何!? なんで勝手に家に入ってんの? この人たち誰!? この大荷物はどういうことなの! ああ~、聞きたいことが多すぎる!」

「落ち着きなよ、お茶でも飲むかい? 安物だが悪くはない」

「それお母さんのとっておきのお茶じゃん!! マジでなんなの! 説明してよ!!」

「時々様子を見に来るって言ったけど、よく考えてみたらわざわざ来るのは面倒だからここに住もうと思って」


 ワルブレヒトの前から茶葉のポットを遠ざけながらもわたしは彼に詰め寄った。そういえば、ゲームではなんでか自宅の二階にいつもワルブレヒトがいて借金はそこに返しに行くんだった。イベント起こしたい時と借金を返したい時以外は行く必要がないし、ゲームの都合上そういうもんだと思ってスルーしてたけど、そうか、実際はこういうことになるんだ……。


「君の両親が借金を返せなくなった場合、この家はうちで差し押さえることに決まっていたんだよ。実際返せなくなったのでここはもう僕の物って言うわけ。でも僕は優しいから、君がここに住んで工房を使うことを禁止したりはしないよ」

「それをありがたがれとでも!?」

「そうさ。僕は別に君を身一つで追い出してしまっても良いわけだからね。一杯感謝してもらわなきゃ」


 ワルブレヒトはばちん☆ と魅力的なウィンクをしてくるのだが、ムカつくので全然魅力的とか思いたくない。様になってるのが本当に腹立たしい!


「それマジで言ってる? 感謝とかするわけなくない? いきなり借金背負わされて家に押し掛けられてさ……」

「うーん。可愛くない態度だなあ。僕の愛人になる女の子だからここに住むのはタダにしてあげようと思ったんだけど」

「わたしに苦労させてる男と一緒に住んで嬉しいとかなんで思うわけ……?」

「え? いやだって、僕いい男だし、それにお金持ちだし? 僕と住みたい女の子、多分掃いて捨てるほどいるよ?」


 きゅる、とか音がしそうなうるうる目でかわい子ぶって見てくるワルブレヒト。お坊ちゃま系のイケメンだからそういう仕草も似あうんだよな……。


「まさか、嫌なの? 嫌々同居ってのもプライドが傷つくよね。そういうことなら引っ越しはやめてもいい。ただ雇った人夫たちに違約金が発生するし、それは君に払ってもらわないとならないね」

「えっ、違約金?」

「そうだよ。ここは僕の家なのに、君がわがままを言って引っ越しをやめさせようとするわけだから。しかも僕を追い出そうとまで言う。そんな君がここに住み続けるためには借金とは別に家賃をはらってもらうことにもなるよ」

「ややや、家賃!? わたしの家なのに! いくら取るつもりでいるわけ?」

「そうだなあ……、人夫たちへの違約金が2,000マニー。家賃は月に3,000マニー払ってもらおうかな」

「にっ……さんっ……」


 頭の中でぎゅるぎゅると数字が回り始める。え? えーと、違約金の2,000は一回で済むとしてもイスマイルへの借金1万の利息がトイチだから大体月3,000で? 家賃が月3,000だと? いきなり8,000出ていく……無理!


「ぐ……わかった。いいです。一緒に住むのでいいです……」

「うんうん、そうだよね。僕と住めるの嬉しいよね? マリエは可愛いなあ♡」


 とろけるような笑顔を浮かべてワルブレヒトはわたしの頭をなーでなーでしてくる。こ、殺したい~ッ!!


「僕がこの工房で修行してた時に使っていた二階の部屋をそのまま使うよ。夜這いはいつでも大歓迎だから鍵もかけない。いつでも僕を襲いにおいで」

「行くわけないでしょ、もう……」


 イスマイルとも沢山喋って、帰るなりぎゃんぎゃん抗議して急にどっと疲れたわたしはへなへなと椅子に座りこむ。それと入れ替わりに立ち上がって階段のほうに行こうとしたワルブレヒトは、私の横まで来るとぴたりと止まった。


「マリエ、なんだい? そのブローチは。君にはそんなもの似合わないと思うけど」

「え? ああこれ……別にいいでしょ。あなたに関係ないっていうか……あっ!?」


 ワルブレヒトの手がさっと伸びてきて、私の胸元についていたオンドレアの猫ブローチをぶちっともぎ取ってきた!


「ちょっと何するの!?」

「知ってるよ。これ、下品な男の唾つけの証だよね。この街に住むものなら誰でも知ってる。何? お金に困って身でも売ろうとした? それとももう売っちゃったのかな。人のおさがりを抱く趣味はないんだけど……。もしそうだったらいますぐ僕の形に形成しなおさなきゃ……」


 一人で勝手なことを喋りながらワルブレヒトの目がどんどん据わっていく。怖い怖い怖い!!


「う、売ってないよ……。単にスラムの通行証みたいな意味でもらっただけ。返して。それがないと困る」

「そうなんだ。よかったよ。じゃあこれは僕が没収するね。よくない奴らと関わってまで借金を完済するマリエは解釈違いだから」

「生きた人間に対して解釈って何? そんなの関係ないから返してってば」

「だーめ。返してほしかったら僕の部屋にでも来れば?」

 

 ブローチを取り返そうとして手を伸ばすけど、しっかりと握り込んだ手を頭の上にあげられてわたしはぴょんぴょんとその場で飛ぶだけになってしまう。


「ははは、可愛いうさぎさんだ。それじゃ、僕は部屋に行くからね。あ、荷運び終わった? お疲れ様。これ代金ね」

「ありがとうございまーっす! あ、失礼奥さん」

「奥さんじゃありません! ねえってば、それ返してって、兄さん! ワルブレヒト兄さん!」


 無視して立ち去ろうとするワルブレヒトとついでに人夫さんたちにも腹を立てながら、わたしはまだあきらめずに後をついていく。ワルブレヒトはわたしを振り返りもせずに階段を登っていき、部屋のドアをくぐったところで急にくるりと振り向いた。


「ここから一歩でも入ったら、僕に抱かれたいって意味だと受け取るよ」

「……えっ、はぁ? そんなわけないんだけど……、きゃっ!!」


 なんでもかんでもそういうことに結び付けたがる態度につい食って掛かりたくなるわたしの腰にワルブレヒトの手が回ってぐっと引き寄せた。急なことにバランスを崩したわたしはワルブレヒトの身体に密着してしまった。


「さっきも言った通り、そんなに返してほしいならいつでも取り返しに来ていいけどね……。そうしたら君は僕とのめくるめく夜を体験して、それから僕なしでは生きていけない身体になるのさ……」

「そんなこと……あるわけ……」


 あたたかな胸板に押し付けられた頬がかっと熱くなるのを感じた。18禁ゲームのヒロインらしく、イケメンにちょっと耳とか舐められただけでへなへなになるように調整された身体が勝手に反応しているのだ。この状態で一度でも抱かれなんかしたら、本当にワルブレヒトの言う通りになってしまう……!


「……離してっ!」

「おっと……」


 わたしはやっとのことでワルブレヒトと自分の身体の間に両手を滑りこませて、彼の胸板をどんと突き飛ばした。思わず後ろにたたらを踏んで下がると、そんなわたしをワルブレヒトはうっとりするような顔で見つめていた。


 「ハグぐらいで耳まで真っ赤になって、本当に可愛いねマリエ。早く諦めて僕に屈した方が楽だよ。じゃあ、頑張ってね」


 へなへなとその場に座り込むわたしの前で、ワルブレヒトが勝手に住み着いた部屋のドアが閉まる。頼みの綱にしていたブローチを奪われたわたしは涙ぐんでしまいそうなのを堪えて、今は立ち上がるのが精いっぱいだった。

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