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箱入り魔王♀は失恋(鬱)エンドを許さない~争わない世界で魔物は人に恋をする~  作者: たーたん
第2章 テイマーと献身的な恋

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11話 絆は絶対。私より彼ぴの方が強い。

 魔物と人間の恋。魔物の中で流行っている現象。私が争いを望まなかった結果、魔物が人間の真似事をしたと評価している。望まないとはいえ、適度に戦いの場だって作ってるじゃないか。それに争いを望まないことは悪いことだとでもいうのか。


 悪い悪くないにせよ、魔物に恋なんて必要ない。恋をして何になるというんだ。いくら仲良くしても、人間のように繁殖だってしないのだぞ私たちは。それが人間たちの目的の一つじゃないか。


 人間も人間だ。魔物が人間に恋をしたとして、人間は本当に魔物に恋をしているのか? 魔物にそんなものはないと知っていてもそんなことしたいのか。実際そうなんだろう、だからマリアンヌみたいなことが起きる。


 勇者は……どうなんだ? あのケモ耳は……魔物なのか?

 二人は、恋、しているのだろうか。


「……」


 考えるだけで息苦しくなる。物を壊したくなる。なんなんだ。


「(マリアンヌ……)」


 私が関わらなければ、もしかしたらマリアンヌは自分の力であの栗毛と今も仲良く過ごし、願いは叶っていたのかもしれないと。私が余計なことをしたから……。


 そもそも、なぜ魔王の私が恋などという、繁殖の過程についての相談を受けなくてはならないのか。考えるべき点はそこだ。もっと違う、魔物の気を引く娯楽のようなものを考える必要があるかもしれない。恋よりももっと楽しくて、誰も傷つかないような。


「ええい!」


 もうわけがわからない。考えるだけでも鬱陶しい!


「あーーわかった、適当に選べ! 話だけは聞いてやる!」

「はい、魔王様」


 ライトは無作為に魔王城宛てに送られて来た恋愛相談の中から一つを選ぶ。過程の一切をライトに任せ、私はその最中に考えごとをしていた。


「(だが、私が無知なのも確かだ……)」


 恋を紐解いてもっと恋を理解していけば、マリアンヌの恋をやりなおして今度は形になるかもしれないと思った。マリアンヌの件は私の責任だ。人間にはゴーレムの言葉が聞き取れないという大失敗をした。喋れる魔物もいるがそれは少数だ。けど、私たちにとって会話は普通なことだったから、人間がどう聞こえるかなんて考える余地はなかった。


「魔王様。こちらをご覧ください。我ながら良い当て感をしております。この相談、渦中の問題にも関わる内容でございます」


 ライトはピカリと球体の頭を光らせると、ホログラムスクリーンに内容を転送した。パパパっと文字が並び、相談相手の画像や情報で画面が埋め尽くされる。


「ハーピー……。この色は亜種か? 見た事のない色だな」


 女の上半身に両手の代わりに大きな翼があり、下半身は猛禽類のような鉤爪を持つ鳥獣。独特な超音波を放ち、大空を群れて舞う。巣作りという習性を持っているが、繁殖のためではない。自分の好きな場所に食料やらを蓄えて自身の城を作るのだ。その住処が大きければ大きいほど、ハーピー界での位が上がる。


 相談内容はこうだった。


『魔王様へ! やっぴ! ハーピーのハピコだよ! 魔王様がミスゴの恋愛相談に乗ったってめちゃくちゃハピコらの間で話題になっててぇ! ハピコもお願いしたいことがあるんだあ。ハピコの彼ぴのことなんだけどぉ、あ、彼ぴってのは彼氏のことね! 彼氏は人間のテイマーの中でもお偉いさんでえ――』


 読みづらいことこの上なく、目が痛くなってくる。


「読み、づらい……」


 しかし、気になる言葉があった。彼ぴ=彼氏の謎。テイマーという単語。たぐりよせたマリアンヌの魔導核コアが熱くなった気がした。


「ハピコと彼ぴはラブラブなんだけど、もっともっと喜んで貰いたいんだ。だから、魔王様お願い! 彼ぴとの仲をどどんと認めて欲しいの!」





 平和で潤沢な資源にうつつを抜かすのがレスティア王国であるなら、隣国の軍事国家グラヴァルド帝国は攻めたがりだ。国境付近には強力な魔物を配置している。レスティアからもグラヴァルドからも通行しにくい森林地帯、グラヴァルドの領地ということになっているが、ここはある意味魔物の領域と言っても過言ではない。


 私たちの間では「森林F」と呼んでいる。私とライトは、森林Fのレスティア王国側に転移魔法で移動してきた。各地の地中に埋めていたり隠している魔物ポータルを経由して世界への移動は容易にできるのだ。

 今回はグラヴァルド内の魔物を監視している、四天王の一人である「灼熱のアブソリュート・ゼロ」、略してアブも同席するとのことで転移位置で待機していた。


「お待ちしておりました、魔王様」


 アブは四本の筋骨隆々な腕を持ち、様々な骨を重ね合わせた漆黒の鎧を身に纏っている。私の好きな黒だ。体は全身焼きただれたような溶けた皮膚をしていて、顔だけはドクロ。喋るたびカタカタと音を鳴らす。いわゆる不死系アンデッドだ。


 別にアブは死んでから今の姿になったわけではない。この世に魔物として生まれたときからアンデッドなのだ。定期的な魔王会議があるたびに、アブは不死系と属するのは違うのではと議論に上がる。今は「見た目がそれ」という私の決議で納得はしているようだ。


「アブ。話をしたように今は魔王様と呼ぶな。あのハーピー、ハピコのボスであり魔王の側近。近衛魔物隊長という肩書きでいる。名前は……まだ考えていない」


 アブは礼儀正しく私がいいと言うまで姿勢を崩さない。目線は下にし、片膝をついて恭順を示している。私が悩んでいる素振りをすると、僅かに顔をあげたアブは目玉のない黒い筒抜けた顔で私を見た。


「それでは魔物界で今流行っている魔王様のニックネーム、うさ耳のクロ、というのはどうでしょう。魔王様らしくとてもキュートでポップな、それでいて底知れぬマインドを感じる。てぇてぇ名称できゅんです」


 四つの手の親指と人差し指を使って大きなハートマークを作るアブ。


「クロ……。まあ、なんだっていいか……」


 ここからハピコに指定された場所は歩いて1時間ほどの距離にある。グラヴァルド寄りの針葉樹林を切り開いて建造したグラヴァルドの仮拠点だった。ハピコの話だと、ここに彼氏がいるらしい。向こうもハピコの上司たる魔物が来るのを知っているようで、時間も指定されている。


 歩きながら私はことのいきさつをアブに話す。といっても私はライトの上に乗っているのだが。地面がぬかるんでいるとか、根っこに足を引っかけて転んだら大変だとかで歩かせてくれないのだ。


 私は子どもじゃないぞ。でもまあ、靴が汚れるのはイヤだから両脚でライトの頭を挟むように押さえ、頭部てっぺんにある凹みを掴みバランスをとる。


 ぺたっとお尻をライトの頭につけているとやっぱり温かくて眠くなる。

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