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のっとり魔王の冒険譚  作者: 阿井川シャワイエ


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第34話 魔王対魔王対

 リオンの身体目掛けて暗黒剣が肉薄していき――。


「な!?」


 次の瞬間、ミャオの表情が凍る。

 

 確実に魔力は切れていた。

 迫りくる暗黒剣を逃れるすべなどない。


 なのに。


「――馬鹿はお前だろ」


 リオンは空中に浮かび、そのすべてを回避していた。

 彼の全身は再び魔力に覆われている。


「なんで……!? 完全に魔力が消えたはずなのに!?」


「お前、俺と一対一で戦ってるつもりだったのか?」


 視線を下方に向ける。

 ミャオの目もつられたように動き、ある一点で留まった。

 

「!」

 

 それは浮遊島の端の森の中。

 ユナを囲むように立つ四天魔の姿があった。

 ミャオを除いた幹部魔族全員が、ユナに手をかざしている。


 それが魔力の譲渡だと察したのだろう、ミャオの表情が奇怪に歪んだ。

 

「ニャオ……!? なんであんたがそこに……」

 

「お姉ちゃんだからね。ミャオちゃんが悪いことをしたら止めてあげないと」


 ()()()()()()()()()()()が届いたのかは分からないが、ミャオは明らかに激昂していた。

 

「なんでお前が私を裏切るんだッ!」


 悲痛な叫びと共に大量の魔力が込められた暗黒の球体が地上に向けて放たれ――全員の姿をブワッとかき消した。


「!?」


「暗黒剣っ!」

 

 その隙をつき、リオンは暗黒剣をミャオの身体に突き刺していた。

 

「イメージ映像だよばーか! わざわざお前に見える位置で魔力を注ぐ意味なんざねーだろ! これで終わりだ、散々調子に乗りやがって!」


 ユナの魔力量が急激に増大したことであちらの戦闘が終了したと察したリオンは、あえて魔力を使いきることで相手を油断させる戦法に出ることにしたのだ。

 もちろん向こうの詳しい状況は分からないため、森に投影したイメージ映像は、こうだといいなというリオンの願望が多大に混ざっている。


(思った以上に動揺してくれたな。おかげで隙をつけたぜ!)

 

 だが。

 リオンの脳裏に疑問がよぎる。

 

(なんだ? ミャオの反応がやけに薄いような……)

 

 ぼんやりとどこかを見つめているその姿は、まるで抜け殻のよう。

 生命エネルギーを吸われているせいだろうと考えていたが、どうもそれだけでは無いように思えた。

 

 暗黒剣が赤く染まるスピードが妙にゆっくりで……いや、むしろ。

 すでにエネルギーの吸収が完了しているような。


(まさか……!)

 

 ハッと剣を引き抜く。

 落下していくミャオの身体。

 

 ――ガシャァン!

 

 それと入れ替わるように、塔の天井を突き破って新たなミャオが飛び出してきた。


(予備の特殊ボディ!? くそっ、魂だけ抜け出して、新しい身体に入り込んでいたのか!)


 浮遊島をわざわざここまで移動させたのも、塔の頂上に予備の身体を隠していたからだろう。

 彼女は初めからギリギリの勝負になることを見越して、この決戦に挑んでいたのだ。


(調子に乗ってたのは俺ってわけだ!)

 

「……」

 

 ミャオは恐ろしいほど冷徹な瞳でリオンを見ながら、自身の周囲に半透明のシールドを何重にも張った。

 不意打ちを防ぐためだろう。

 今のリオンの手札では、あの分厚いシールドを突破できそうにない。

 勝ちに徹したミャオは、実際脅威だった。


(新しい身体になって、向こうは魔力量が完全に回復してるはず。一方の俺は、ユナから受け渡してもらった魔力しかない。少ないとは言わないが、さすがにこれは……)


「勝利のために仕込んでたのはお互い様だよね~。ま、咄嗟にしては良いやり方だったんじゃない?」


 ミャオは静かにリオンを称えてから、ニィと笑った。

 それは嗜虐心を隠し切れない、邪悪な笑み。


「……悪いけどアンタのことは、精神が完全に摩滅するまでいたぶらせてもらうから。泣いても喚いても許したりはしないけど、でも泣きわめいてくれた方が私の好みだし、あんたの寿命は延びるかもね。んで、そのあとは地獄に直接つれてってあげる。二度と青空を見られるとは思わないでね、ザコが」


「く、くそ……」

 

 ピンチではあった。

 だがそれでも、怯えた表情をつくることに、リオンは苦心していた。

 

 なぜなら――ミャオの背後に()()が見えたからだ。


(もしミャオが、洗脳という手段に頼らずに五天魔や魔族を従えていたのなら、きっと俺は負けてただろうな。でも――)


「いでよ、暗黒球体ッ!」

 

 リオンは大きく身体をのけぞらせながら叫んだ。

 玉砕覚悟で臨むことをアピールするためだ。


(一瞬でも気づくのを遅らせる……!)


「え、なにぃ? もしかしてこの状況で私に勝てるとでも思ったぁ!?」

 

 ミャオの顔が興奮で歪むのを見ながら、リオンは内心つぶやく。

 

(お前の敵は、俺以外にもいるだろ? だってミャオは、この世界すべてを敵に回したんだ。……俺だけを警戒するべきじゃなかったな)


「暗黒球体よ! ミャオに突撃しろ!」


「キュイー!」

 

「無駄ぁっ!」


 魔法をはじき返し爆炎に巻かれながらも、ミャオは余裕の笑みを浮かべ。

 

 ――けれど。

 

 何かを感じ取ったのだろうか。

 彼女は突然表情を消すと、ハッとした様子で背後を振り返る。

 

 場所は上空。

 誰の邪魔も入らない一騎打ちの戦場。

 

 ――そのはずだった。

 

 ミャオの背後には氷の橋が架かっていた。

 陽光を反射し、きらびやかに輝く橋。

 滑るようにその上を駆け上がるのは、レイリ。

 そして彼が魔法で押し流す氷のブロックの上で、赤い髪が優雅に揺れる。

 

「上機嫌だな、魔王よ」


「リーリア・ハルベルシア……!」


 勇者リーリアが空の戦場へとたどり着いたのだ。

 その手には、白塗りの鞘に納められた聖剣が握られている。

 

「長年の因縁に、いまこそ決着をつけよう」


 静かに告げる彼女の瞳は輝いていた。

 そこにあるのは未来への希望。


 ミャオはその眼差しにいらついたかのように、即座に手をかざした。


「消えろぉ!」


氷壁(ひょうへき)!」

 

 リーリア目掛けて暗黒剣が放たれるが、レイリが張った分厚い氷に阻まれる。


「ふっ!」


 その氷を踏み台にして跳躍しながら、リーリアは剣を抜き放った。


 それは金色に輝く聖なる(つるぎ)

 聖王国ごと滅失したはずのそれを、リーリアは天高く掲げた。


「聖剣よ! 我に力を与えたまえ!」


「負け犬の分際でえええ!」


 背後に飛び退りながら迎撃に入るニャオ。

 だが、リーリアの動きはそれより一歩早かった。

 

 氷の橋に降り立つと同時、渾身の踏み込み。

 聖剣はただ前だけを見据えるリーリアの意思に呼応するかのように、天をも貫く輝きを見せている。

 

「魔王よ、我らの怒りを知れ!」

 

 リーリアは吠えた。

 今までのすべてを叩きつけるように。


「――退魔(たいま)死滅刃(しめつじん)ッ!」

 

「ああああああああああああああ!」

 

 鋭い薙ぎ払いが。

 シールドごとミャオの身体を両断していた。

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