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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
アスカと光の教団

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カーティスとリックの騎士学校生活

「アスカ様、こちらのお召し物でよろしいですか?」


「はい、お願いします」


 今日はいよいよベンティゴ領へと向けて出発する日だ。朝食を食べ、今は着替え中。楽な格好で行きたかったんだけど、リックさんの賓客ということでドレス姿となった。


「髪型はこちらでアクセサリーも選ばせていただきますね」


 こうして出発準備が整うと、いよいよ部屋を出る。


「ジャネットさんたちはもう準備終わったかな?」


「下でお待ちですよ」


「そうなんですね。それじゃあ、行きましょう!」


 アンバーさんに案内され、邸の人に見送られながら馬車の前へと向かう。


「アスカ様、頂いた絵は大切にいたします」


「あっ、メンフィアさんも見送りに来てくれたんですね。ありがとうございます」


「それとこちらをお持ちください。部屋に置いていた物と同じバラになります」


「わざわざ摘んでくれたんですね。嬉しいです」


「では」


 メンフィアさんと挨拶を交わし、カーティスさんに手を引かれて馬車の中へ。その後はカーティスさんとリックさん、それにアンバーさんも乗り込んできた。


「あれっ? アンバーさんも同行するんですか?」


「はい。アスカ様のお世話をする者が必要ということで、同行することになりました。到着までよろしくお願いします」


「ありがとうございます。こちらこそ改めてよろしくお願いしますね」


「アスカ様、同行の騎士については出発後、休憩中に紹介します」


「分かりました。ジャネットさんたちは」


「あたしならここだよ」


「あっ、御者席の隣なんですね」


 私が皆の居場所を尋ねると、前の小さい子窓を開けてジャネットさんの顔が見えた。


「それじゃあ、リュートは?」


 流石に御者をしているはずもないし、キョロキョロと馬車の窓から辺りを見回す。


「リュート君なら前を行く馬に乗っているぞ」


「あっ、そうなんですね」


「もう一人、昨日アスカ様についていたベンと言う騎士がリュート殿の隣で、ブライアンが馬車の入り口におります。何かあればブライアンへ言えば対応してくれるでしょう」


「分かりました。日程はどんな感じですか?」


「六日で到着の見込みです。ただ、途中村や町へ寄りますので、多少は前後するかと」


「それでも私たちの見込みより早いですね。よろしくお願いしますね」


「任せていただきたい」


 こうして国境の町を出て、私たちはベンティゴ領へと向け北上を始めたのだった。



「ん、いざ出発してみるとやることがないですね」


《ピィ!》


 アルナも暇だと馬車の中でパタパタと羽根をはためかせる。


「仕方ないだろう。俺たちも馬車旅には苦労しているんだ」


「リックさんとかカーティスさんは普段どうして過ごしているんですか?」


「俺は景色を見たり、話をして過ごすな。カーティスは?」


「最近はカルディナと話をしているな」


「先輩とか。そう言えば結婚したんだったな」


「結婚で思い出した。お前、結婚式にも顔を見せなかったな。薄情な奴だ」


「あの頃は父上が俺を捜していることは知っていたからな。まさか、お前に依頼までしているとは思わなかったが」


「あの、カルディナさんというのは?」


 聞きなれない人の名前が気になったので、リックさんに聞いてみる。


「ああ、俺とカーティスが騎士学校へ行っていた時の一つ上の先輩だ。腕もいいし、当時から美人で有名でな。入学してすぐに仲良くなったんだ」


 リックさんがそこまで話すと、前からガタンという音がした。


「折角だし、ジャネットも一緒に話を聞くか? 小窓を開けっぱなしにしてれば十分聞こえるだろう」


「護衛の仕事はどうするんだい?」


「人数は十分だし、馬車にはアスカが作った魔道具を設置しているだろう。問題ないさ」


「……そこまで言われたら聞いてやるとするかねぇ」


「じゃあ、話もまとまったな。カーティス、話をしてやれ」


「俺からか?」


「当然だろう。俺からより、お前からの方が話に深みも増すだろうからな」


「では、話すとするか。まず、私とリチャードは隣り合った領地ということもあって、小さい頃から知り合っていたのですが、十五歳になったのを機に二人で王都の騎士学校へ入学したのです」


「あっ、カーティスさんも騎士学校へ行ったんですね。てっきり次期領主だから経済とか経営を学ぶのかと思っていました」


「もちろん、そういうことも学びますが、家の方で家庭教師を付けることもできますからね。意外と専攻は選ぶことができるのです。山岳や農地の多い領地ですから田畑を荒らす魔物を倒せればと思っていたのですよ」


 こうしてカーティスさんは当時のことを話し始めた。


   * * *


「リチャード、ようやく騎士学校へ入れたな」


「ああ。それにしてもカーティス。お前まで来るとは思わなかったぞ。別に騎士学校でなくとも良かっただろう?」


「お前から一本取るまでは追いかけるからな」


 当時の私は尖っていたから同年代の誰にも負けたくなかったのです。特に隣の領地で交友のあったリチャードは同年代より剣の腕が良く、見習騎士の中でも一目置かれていました。

 もちろん今なら彼の領地には強い魔物がいて、領主であろうとも討伐に出向くことから、必要な技能だと分かります。ただ、それでも過去の私は剣の腕で負けたくなかったのです。


「俺は負けないと思うからそれだとお前まで騎士になるぞ?」


「ぬかせ。そう簡単に勝てるとは思わないが、いつか勝つさ」


 しかし、この時の腕の差は顕著で、リチャードは主席入学。私は優秀な家庭教師を付けてもらって、やっと二十位以内に入るかどうかだったのです。そんな私たちの前に上級生が何人かやってきました。上級生だと分かったのは校章の色が違ったからです。学年ごとに違う色が採用されておりましたので。


「お前が今年の主席だそうだな。名前は?」


「人に名前を尋ねる時は自分から言うべきだと思いますが、先輩のお名前は?」


「生意気な新入生が! おい!」


 急に絡んできたと思ったら、私たちはすぐ上級生に囲まれてしまいました。そして乱戦になったのですが、私が一人を相手にしている間にリチャードは二、三人を相手していました。悔しくも頼りになりましたが、相手の方が数は上。次第に追い詰められていきました。


   * * *


「ひどい上級生たちですね。入学したばかりの人を大勢で囲むなんて」


「後で分かったのですが、恒例行事のように毎年行われていたようです」


「なんでそんなひどいことをするんですか?」


 私が怒りながら聞くとカーティスさんが答えてくれた。


「始まりは主席入学した学生が驕って周りの言うことを聞かない事例があったことからだそうです。授業では上級生から教えを受けることがあるのですが、その時に支障が出たとかで。以来、新入生の主席合格者にからむようになったのだとか」


「む~、それは個別案件だと思うんですけど……」


 説明を受けても納得できない私は頬を膨らませて感想を述べる。


「そうですね。本来であればアスカ様の言う通り、その年だけの案件でした。しかし、今度は上級生側が味を占めてしまったという訳です」


 木乃伊取りが木乃伊になっちゃった訳か。


「それで二人はどうしたんですか? 相手の方が年上ですし、数も負けてるんですよね?」


「ええ。そこで割り込んできたのがカルディナなんです」


   * * *


「ちっ、新入生の癖にあいつ、やりやがる」


「ふんっ、お前たちのように毎日遊んで暮らしている訳ではないのでな」


「野郎っ!」


「待てっ! 何をしているんだ⁉」


「カルディナか。相変わらず上級生に対して口の利き方がなってない奴だ。お前もこの際、教育してやろう」


「ふざけたことを!」


 こうして私たちは複数人同士で再び戦いましたが、流石に騒ぎも大きくなり、教官の声が響きました。


「お前たち、もめ事を起こすとは何をしている!」


「むっ、教官か。カーティス、逃げるぞ」


「了解、リチャード」


「何を逃げるのだ、お前たち」


「いやぁ、面倒な説教は苦手なんで。ほら、先輩も」


「あっ、ああ」


 驚いた表情のカルディナを連れて私たちは校舎の間に隠れて教官をやり過ごしました。


「あいつら、何処へ行った。二人は見慣れない顔だったが……」


「ふう、行ったみたいだな。助太刀ありがとうございます、先輩……で良いんですよね?」


「ああ、私は二年のカルディナだ。ああやって毎年三年が新入生に因縁をつける風習があってな。今年こそは止めようと張っていたのだが……」


「一人で張っていたんですか? 流石に無茶ですよ」


「しかし、他にいい方法が思い浮かばなかったのだ」


「それであんな無茶をされるとは、顔にまで怪我をされていますよ」


「さっ、触るな!」


 リチャードが触れようとすると、それを拒むカルディナ。痛いのかと気になり、私も話しかけてみました。


「カルディナ先輩、傷が痛むのですか?」


「私とて騎士を目指す者、この程度痛くもない」


「では何故、拒むのです?」


「そいつの顔が胡散臭い」


   * * *


「うっ、胡散臭い。リックが?」


「笑うな、ジャネット。俺もその時は哀しかったんだぞ」


「あっはっはっ。いやぁ、悪い悪い。でも、寄りにもよって初対面で胡散臭いとはね。見る目のある人だねぇ」


「そうだろう。ちなみに私の評価はリチャードと違って、腕は未熟だがまともそうだったらしい。今思うとひどい評価だが、初対面にしては見る目があるなと思ったな」


「それじゃあ、お二人が入学してからすぐに知り合って仲良くなったんですね」


「ええ。それからは三人でいることも多くて、よく一緒に稽古をしていました」


 カーティスさんもリックさんもその時のことを思い出しているのか、少し景色に目を向ける。


「その後、リックたちはどうしたんだい?」


「どうって、剣の練習さ。敷地も剣を練習する設備も整っている俺の家で稽古をしたんだ。領地から来ている騎士にも頼んでな」


 苦虫を噛み潰したような顔でリックさんが答えてくれる。その時はまだ今ぐらい強くなかっただろうから、領地の騎士相手には負け続けたんだろうなぁ。私もジャネットさんに勝つまで長かったし、気持ちは分かる。


「でも、そのお陰で二年の中では十位前後だったカルディナは上位三位へ。私も十位以内には入れるようになりました」


「厳しい稽古が実を結んだんですね。リックさんは?」


「ん、俺か。順位は横ばいだ」


 さり気なく言っているけど、最初が主席ってことはずっと一位だ。リックさんって本当にエリート街道を歩んできたんだなぁ。



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― 新着の感想 ―
>「ん、俺か。順位は横ばいだ」 >さり気なく言っているけど、最初が主席ってことはずっと一位だ。リックさん  そんな言い方だと、ちょっと嫌味に聞こえちゃうよねえ。  誰かに追い抜かれない様に頑張ったと…
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