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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
アスカと光の教団

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高原の討伐依頼

「アスカ、宿を引き払うけど忘れ物はないかい?」


「ありません。この町でやることはカディル商会に寄るだけですね」


「そうだね。よっと」


 ジャネットさんが荷物を持って部屋を出る。私もそれに続いて部屋を出るとリュートたちの部屋へと向かう。


「リュート、準備はいい?」


「あっ、もう用意できたんだね。僕らの方は大丈夫だよ」


 リュートたちと合流すると、朝からカディル商会へ。今日はアラシェル様の像を納品する日だ。



「ごめんくださ~い」


 商会で働いている見習の人に断って中へと入る。


「おや、アスカ様。ようこそいらっしゃいました。出発日にお呼び立てして申し訳ありません」


「いいえ。こちらこそよろしくお願いします。これが納品するアラシェル様の像です」


 私はこの間に作った像を出していく。


「おおっ⁉ どれも良い出来ですな。フェンネル、お前も確認して見なさい」


「では……本当に素晴らしい出来ですね。これならすぐになくなってしまいそうです」


「それが問題なんですよね。私は他にも卸しているので、ずっと作り続けられませんし、ここへばかり送れないんです。どうにかならないでしょうか?」


「ここまでの出来でなくてよければ、コルゴー村やヴァンダル村で作ればよいのでは?」


 目下、私の悩みだった神像を定期的に納入する悩みを打ち明けると、フェンネルさんが意見を出してくれた。


「おお、それはいいな。光の教団の神殿直下の村や、それに連なる村で作ればそれなりに説得力もある」


「う~ん。でも、細工をしてくれる人がいるでしょうか?」


「光の教団には周囲の村はお世話になっていますからね。事情を聞けばきっと手先が器用な者が名乗り出ると思いますよ」


 実際そうなったら助かるけど、ある程度のレベルも欲しい。やっぱりアラシェル様の魅力を余すところなく伝えたいしね。


「じゃあ、一旦細工をしてもらえる人を捜してもらっていいですか。その人に作ってもらったアラシェル様の像を見て判断させてもらいます」


「分かりました。次の休みにでも伝えに行きます」


「では、この像を一種類ずつ持って行ってもよろしいですかな? 村人も実物がなければ難しいでしょうから」


「そうですね。よろしくお願いします」


 私は今後の神像のことをカディル商会に頼み、その場を後にした。



「それではアスカ様、旅の無事を祈っております」


「フェンネルさんも病気なく過ごしてくださいね。町外れまで見送りありがとうございました」


 私たちが門へと向かう間、フェンネルさんはずっと見送ってくれていた。



「さて、これから国境の町へと向かうんですけど、三日ほどでしたっけ?」


「ああ。そこから国境の町で国越えを行うと、北北東へ進む。大体、そこから十日ぐらいで俺の故郷へ着くだろう」


 ということは野営の日数は最大で二週間近くになるのか。


「う~ん。国境の町で色々と仕入れないといけませんね」


 それに結局、卸先の在庫は作れなかったから、そっちも作らないと。


「それもだが、依頼も受けないとな」


「そう言えば、今回依頼を受けずに出発しましたよね? 何故なんですか?」


 いつもなら依頼を受ける話をするジャネットさんも、この件に関しては静かだ。


「あ~、あの町だと護衛の依頼はほとんどなくてな。港町から国境の町であるジェルベルグまでか、王都からジェルベルグまでの依頼が多いんだ」


「何か理由があるんですか?」


 港町からだと長期の護衛依頼になる。何か理由があるんだろうか?


「ああ。港町に着いたら誰もがすぐに商品を卸したいだろう? 一部は王都に、残りがこっち方面へ運ばれるんだ。そこで各町を中継する護衛依頼は日数がかかりすぎる。だから、そのまま国境の町まで一つの依頼で済ませるのさ」


「なるほど。でも、国境の町までなんですね」


 そこまで行くならルイン帝国の王都まで運んじゃえばいいと思うけどな。


「アスカ、ルイン帝国の王都まで運べばいいと思っただろう。そうなると、冒険者の代替わりにどうなると思う? 港町から隣国の王都まで、長期に渡る護衛依頼を遂行できる冒険者パーティーが必要なんだ。そんなパーティーをおいそれとは探せないだろう。それに、地理的問題もある」


「地理的問題ですか?」


「ああ。港町からルイン帝国の王都までの地形を把握することが必要になってくる。他にも往復の依頼を受けるため、情報の入手が遅くなってしまう。商機を逃したり、情勢にも疎くなってしまうからそれを避けるんだ」


 へ~、色々考えられているんだなぁ。確かに国境を跨いじゃうと、色々知っておくことも変わっちゃうし、変なトラブルにも巻き込まれそう。バルドーさんのデグラス王国とバルディック帝国みたいに仲が良くない国もあるだろうし。


「だけど、安心しなよ。道中出る魔物はリックが把握してるから、ちゃんと討伐依頼だけは受けてるからね」


「そう言えば、一度冒険者ギルドへ寄った時に依頼を受けてましたね。結局どうなったんだろうって思いながら、細工に夢中で忘れてました」


「まあ、その依頼も道中の滞在費で消えるだろうがな。確か受けた依頼はプラトーウルフとアーチビー。それにフォグオークだな」


「どれも聞いたことがない魔物ですね。ウルフとオークは種族が分かりますけど」


「プラトーウルフは高原に住むウルフ種だ。町を抜けて二日の間はほぼ出遭う魔物だ。アーチビーも同様だな。フォグオークは高地を抜けると出てくるオーク種だ。この辺りの高原を抜けると、湿地があってな。その湿地を生かした戦い方をするんだ」


「ふ~ん、それで強いのかい?」


 名前を聞いてもピンとこないので、ジャネットさんがリックさんに強さを聞く。


「どれも大したことはない。アーチビーが群れで来るのと、フォグオークは地形が湿地というところが注意点か。湿地は足を取られることも多いからな」


「地形に関してはどうしようもないですね」



 そんな会話をしながら歩き続けること三時間、話に聞いていた魔物が現れた。


《グルルル》


「あれがプラトーウルフだ。アスカ、数はあれだけか?」


「ちょっと待って下さいね……見えている五匹だけですね。それにしても綺麗な薄緑のウルフですね」


「高原は緑もそれなりにあるからな。保護色も兼ねているのさ」


「二人とも話してばかりじゃなくて、ちゃんと構えるんだよ」


「はい」


 向こうもこちらを視認してどう向かってこようか考えているみたいだ。そして、考えがまとまったのか、一気に上から駆け下りてくる。


「来るよ!」


「牽制します。風よ!」


 私は一気に駆け下りてくるウルフたちの動きを鈍らせるため、辺りに強い風を撒く。急な逆風に思うように動けなくなったウルフたちは当初の予定とは違い、個別に動き始めた。


「はっ!」


「くらえ!」


 集団での戦闘を回避でき、リックさんとジャネットさんが各個撃破していく。ウルフたちは個々では強くないので、すぐに戦闘は終了した。


「ふぅ~、アスカのお陰で楽だったよ。さて、マジックバッグにしまうとするか」


 その後も幾度か魔物の襲撃があったものの、特に強い魔物はいなくて今日の野営場所へと着いた。



「あっ、ここも場所が整備されてますね」


「同じような地形が続くからな。街道はあるとはいえ、こう岩肌だらけで休む場所もまちまちにならないように整備されているんだ」


「へぇ~。でも、辺りに背の高い木はありませんし、食事とか見張りはどうしましょう?」


「本当だね。夜通しどころか料理に使う火にも困りそうだ」


 私の懸念にリュートも同意する。飛んで辺りを見渡したら、薪になりそうな林でもあるかもしれないけど、なかったら困る。


「ああ、火に関してはこれを使うといい。料理用の火は諦めろ」


 そう言ってリックさんが出してきたのはロウソクとそれに被せるカバーだった。


「この辺りだとこの灯りで見張りを行う。料理は出来合いだな。皆も干し肉はストックしているだろう?」


「そりゃあ、干し肉ぐらいは常備していますけど……」


 でも、まだ町を出て一日目だし、野菜を使った料理とか食べたかったんだけどな。


「この地形じゃしょうがないよ。せめて、リュートにサラダを作ってもらいなよ」


「そうですね。リュート、お願い。アルナの分はちょっと多めにね」


「分かったよ」


《ピィ!》


 私と違って新鮮な野菜がたくさんもらえると分かったアルナは嬉しそうだ。反対に不満げなのがキシャル。火も使えないとあって渋い顔をしながら干し肉をしゃぶっている。


「ほら、高原を抜けたらきっとリュートが美味しいお肉料理を出してくれるから」


《にゃ!》


 その言葉でキシャルは元気よく食事を食べ始めた。私はそれを見ながらちらりとリュートの方を見る。頑張ってねとエールを送りながら。



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― 新着の感想 ―
 平原で焚き火すると、たなびく煙から火の光から、ここにいるよって全力で襲って下さいと言ってる様なものだから、安全の為にも控えなきゃならんですわな。
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