国の要人
「…どうやら終わったようじゃなエリザベス嬢よ。お主が選んだ指輪の所持者は中々の強者のようじゃ。」
その手に持つ双剣を背中に背負い直しながらハイヘルムがエリザベスの元へやってくる。その服には返り血が付着しており戦闘があったことを物語っている。
「ハイヘルム様、…えぇ、オウギ様はとてもお強いお方です。そしてそれでいてとても控えめなお方。自分の功績を決して誇ることなく名声をお求めになりません。」
エリザベスが横たわる兵士に回復魔法を施しながらハイヘルムと会話をする。既に重篤な状態の兵士はおらず今は骨折などの治療をメインに行なっている。
「ふむ…そうか。普通ならそんな男、逆に信用に値しない男だが…、エリザベス嬢がそう言うなら信頼できるか。ティーシャ嬢が何も言わないなら視ても邪なものはなかったのだろう。」
ザラスの妻であるティーシャの高レベルの祈祷師の力は大公に知れ渡っている。そのティーシャがエリザベスの近くにオウギがいることになんの行動もとっていないことがオウギの信用を担保していた。
「当然です!。オウギ様は私を何度も助けてくれましたが一度も対価を求めませんでした。…あ、ごめんなさい。少し強く魔法をかけてしまいました。今日一日元気になり過ぎるかもしれません。」
ハイヘルムの言葉に反応したエリザベスだが勢い余って患者に強く治癒をかけすぎてしまう。
「大丈夫です!。なんなら今から街の片付けに行ってきます。…エリザベス様のお陰で死亡者は出ませんでしたが街は傷ついていますから。」
横たわっていた兵士が起き上がりエリザベスに一礼して駆けていく。
「これからこの国は動く。2つの大公家が恐らく取り潰しになるじゃろうて。その次にどうするか。…考えるだけでくたびれる。儂は戦さ場の空気が吸えればそれで良いのじゃが…。当主となればそうはいかん。…面倒じゃなぁ。」
これから待ち受ける会議の連続に想像するだけでため息が出るハイヘルム。しかし当主の義務と出ることを決意するが同じく武系のアルタイルが放棄していることは知らない。
「…私もお父様のサポートをすることになると思います。本当はオウギ様に街を案内したりしたいのですが。」
「お互い思い通りにいかんな。それが世の常じゃがな。」
「ふぅ、疲れましたね。…ここで二体の魔族が暴れたのですか。」
「はい、王女様。報告ではそのようになっております。」
「…その割には被害が少ないですね。…イシュタル家とハルザーク家も反乱を起こしたというのに。」
「それについてですが前聖騎士長からの報告を覚えておいでですか?。」
「えぇ、確か魔族の襲撃に際し娘にかけた聖母の加護を突破した者がそれを退けたと。」
「その者がこの街に滞在しているようです。更にはノードルマン家の指輪の所持者だということです。」
「エリーの?。…そう…、なら会議の前にエリーのところに行きましょう。久しぶりにエリーの話を聞きたいわ。」
「御意。」