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ロストテクノロジーは誰のためにあるのか  作者: 維岡 真
第1章 ”零を探せ” 第7節 前夜祭

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放心

志乃は、バリアの中で、動くことができなくなっていた。


虚西コウが、俵屋と魔泉道に連れ去られた。


その光景を、彼女は目撃していた。


虚西の白い光が、消え始めた時、志乃の中で、何かが崩れ落ちたのだ。


彼女は、立つことさえできなくなった。


膝が、地面に落ちた。


バリアの中で、彼女は、ただ、その場に座り込んでしまった。


全てが終わった。


そう感じた。


虚西がいなくなってしまった。


彼女の唯一の拠り所が、消えてしまった。


白塔での不可思議な経験。


相模のアジトでの不安定な保護。


そして、虚西との出会い。


その全てが、この瞬間に、無意味なものに感じられた。


複数の勢力が、バリアの中で、それぞれの判断に基づいて動いていた。


吾妻は、白塔の正面から、突破を試みている。


虺竜文は、その同じ場所で、力での破壊を試み続けている。


クリス・レイシアと相模は、別の入口を探している。


獅子島は、敬語で、何かを指示し続けている。


飛鳥は、端末を操作し続けている。


シズクは、刀を握ったまま、状況を見守っている。


全ての勢力が、何かをしている。


だが、志乃は、そのどれもしていなかった。


彼女は、ただ、白塔を見つめていた。


その白塔から、かすかに、光が漏れ始めていた。


白い光。古い光。


その光が、白塔の奥から、わずかに露わになり始めたのだ。


その時だ。


声が聞こえた。


女性の声だ。


低く、優しく、何かの導きのような声。


それは、白塔での迷い込みの時と同じ声。


「志乃よ」


その声が、呼びかけていた。


「白塔へ」


志乃は、その声を聞いて、ゆっくりと顔を上げた。


その声には、何かの切実さがある。


何かの待ち焦がれた感情。


志乃は、その声に、次第に引き寄せられ始めた。


虚西がいない。


だが、この声は、ある。


この声が、志乃を呼んでいる。


白塔へ。白塔の奥へ。


志乃は、バリアの中で、ゆっくりと立ち上がり始めた。


その動作は、緩慢だ。だが、確実だ。


彼女は、白塔の方へ歩み始めた。


吾妻が、その動きに気づいた。


「志乃。何をしている」


吾妻の声が、届いた。


だが、志乃は、それに答えなかった。


ただ、白塔の方へ歩み続けた。


その足取りは、何かに導かれるような、確実な動きだ。


クリス・レイシアが、志乃の動きを見て、何かを理解したかのように呟いた。


「あの娘。何かを知っている」


相模も、志乃の動きを見ながら、子どもっぽい口調で呟いた。


「君は、呼ばれてるんだ。志乃。白塔から」


志乃は、白塔の入口に到達した。


その入口は、完全に密閉されていた。


だが、志乃は、その入口に手をかけた。


その瞬間、バリアが、わずかに揺らいだ。


白塔の奥から、女性の声が、さらに強く聞こえ始めた。


「志乃よ。中へ。白塔の奥へ」


その声に導かれるように、志乃は、白塔の入口を押し始めた。


その扉が、ゆっくりと開き始めた。


バリアの隙間が生まれた。


その隙間から、古い光が漏れてきた。


複数の勢力が、その動きに気づいた。


吾妻は、その隙間を見て、即座に判断を下した。


「全班。志乃に続け。白塔の内部へ侵入する」


学連の戦闘員たちが、その隙間へ向かい始めた。


虺竜文も、その動きに反応した。


「そっか。あいつが道を開くのか」


虺竜文が、その隙間へ向かい始めた。


クリス・レイシアと相模も、その動きを見て、行動を開始した。


複数の勢力が、志乃が開いた隙間へ集中し始めた。


だが、志乃は、それらを見ていなかった。


彼女は、白塔の奥から聞こえてくる女性の声に、ただ導かれ続けていたのだ。


白塔の内部へ。


古い通路へ。


地下へ。


その奥深くへ。


志乃は、その声に導かれながら、白塔の中へ消えていった。


その後を、複数の勢力が、追い始めた。


バリアは、志乃の通過によって、わずかに緩和されていた。


複数の勢力が、その緩和の中で、白塔の内部へ侵入し始めたのだ。


白塔の中。古い施設。


そこには、虚西がいる。


そして、俵屋と魔泉道がいる。


そして、志乃を呼ぶ女性の声がある。


複数の勢力が、その全てを求めて、白塔の奥へ向かい始めていたのだ。


志乃は、白塔の暗闇の中で、女性の声に導かれ続けていた。


その声が、彼女の心を満たし始めていた。


放心から、覚悟へ。


その転換が、白塔の内部で、起きていたのだ。

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