分裂
白塔の入口が完全に閉じた時、バリアの中に、深い沈黙が落ちた。
吾妻は、その沈黙を破った。
「飛鳥。バリアの構造を分析しろ。脱出の可能性を探れ」
吾妻の声は、沈着だった。だが、その中には、明確な焦燥感がある。
飛鳥が、端末を操作し始めた。その指の動きは、機械的で速い。
「総隊長。バリアの構造は、極めて複雑です。単純な力での破壊は、ほぼ不可能と判断されます」
吾妻は、その報告を聞いて、判断を下した。
「虚西を追う。全警備班に通達。バリアの隙を探りながら、白塔の内部へ侵入する準備をしろ」
吾妻の指示は、明確だった。虚西を放置することはできない。彼を追わなければならない。
だが、その時、虺竜文が、前に出た。
「待て。吾妻」
虺竜文の声は、相変わらず、戦闘狂的な響きを持っていた。
「俺たちは、ここで待つ必要はない。俺は、追う。あの二人に。戦う」
虺竜文の勾玉が、激しく赤く輝き始めた。
バリアの制限の中でも、彼は、何かに対抗しようとしていた。
獅子島が、敬語で、虺竜文に言った。
「キング。現在のバリアの中では、我々の力は、大幅に制限されています。白塔の内部へ向かうことは」
「関係ねぇ」
虺竜文が、言葉を遮った。
「強いのか。お前ら。ならやる。戦う」
虺竜文は、白塔の入口へ向かい始めた。
その動きは、物理的には制限されていない。だが、彼の力の展開は、完全に制限されていた。
吾妻は、その動きを見て、判断を下した。
「虺竜文。待て。無分別は」
だが、虺竜文は、吾妻の言葉を聞かなかった。
彼は、白塔の入口に向かい始めた。
その時、クリス・レイシアが、静かに言った。
「待つことにしよう。学連は追うらしいが、我が月砂は、ここで様子を見守る」
クリス・レイシアの空色の瞳は、何かを計算していた。
相模は、その言葉に反応を示さなかった。
ただ、彼の古い力が、わずかに展開され始めた。
「君たちは、動くんだ。吾妻。虺竜文。そして、我々も」
相模の子どもっぽい口調で、その分析は続いた。
「だけど、全員が、同じ方向へ向かうわけではない。分裂する」
クリス・レイシアが、その言葉を聞いて、微かに笑った。
「そうだ。我々は、別の道を探る。白塔の別の入口を」
クリス・レイシアの月砂の戦闘員たちが、バリアの端を探り始めた。
吾妻は、その分裂を見ながら、判断を下した。
「学連は、虚西を追う。それが、最優先だ」
吾妻は、その指示を出した。
学連の戦闘員たちが、物理的な手段で、白塔の入口への接近を試み始めた。
だが、そこにも、バリアが張られていた。
吾妻は、その壁に対抗しようとした。
刀を握ったまま、彼は、バリアを切ろうとした。
だが、その刀も、バリアに制限されていた。
その切れ味が、十分ではなかった。
吾妻は、その中で、なお、別の方法を探していた。
虺竜文は、白塔の入口に到達していた。
だが、その入口は、完全に密閉されていた。
彼は、その扉に向かって、勾玉の力を放った。
だが、その力も、バリアに制限されていた。
その爆発も、十分ではなかった。
虺竜文は、その中で、激怒し続けていた。
「くそ。何だこれ。開け。開けろ」
虺竜文の叫びは、バリアに吸収された。
獅子島は、その戦況を見ながら、敬語で呟いた。
「キング。この状況では、力での突破は難しいかもしれません」
だが、虺竜文は、その助言を聞かなかった。
彼は、ただ、戦い続けようとしていた。
クリス・レイシアと相模は、別の方向へ動いていた。
白塔の周辺を探りながら、別の入口を探し始めたのだ。
相模の古い力が、わずかに展開されながら、何かを感知しようとしていた。
「ここだ。別の道がある」
相模が、静かに言った。
月砂の戦闘員たちが、その方向へ動き始めた。
だが、そこにも、バリアが張られていた。
複数の勢力が、バリアの中で、分裂し始めていた。
吾妻は、白塔の正面から、突破を試みていた。
虺竜文は、その同じ場所で、力での突破を試みていた。
クリス・レイシアと相模は、別の入口を探していた。
志乃は、その全てを見守りながら、白塔から聞こえる女性の声に耳を傾けていた。
その声は、かすかに、聞こえ始めていた。
「志乃よ。白塔へ」
その声が、志乃に呼びかけ始めていたのだ。
バリアの中で、複数の勢力が、それぞれの判断で、動き始めていた。
一時的な休戦は、存在していない。
ただ、異なる目的を持つ勢力たちが、同じ場所で、別々の行動をしているだけだ。
虚西コウを取り戻すため。
白塔の秘密を知るため。
そして、女性の声に導かれて、白塔の奥へ進むため。
複数の勢力が、複数の目的を持ちながら、白塔を目指し始めていたのだ。




