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ロストテクノロジーは誰のためにあるのか  作者: 維岡 真
第1章 ”零を探せ” 第6節 四天王の座

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一進一退

暗い部屋。崩壊した天井から、塵埃がゆっくりと降り注ぐ。


相模と虚西が、部屋の中で対峙していた。


志乃は、床の隅に身を縮めて、その戦いを見つめていた。彼女は動けない。その場にいることさえ、許されるかどうか確かでない状態だ。


相模の霊気力が、部屋全体に満ちていた。白に近い、淡い光。だが、その光の中には、何かの圧倒的な制御がある。それは、単なる力ではなく、何千時間もの修練を積んだ者の技術だった。


虚西は、それに対抗していた。


彼の霊気力は、白い光ではなく、無色透明に近い。それは、光として見えながらも、同時に、何も映さない。制御されていないのではなく、制御の外にある、別の質感だ。


二人の力が衝突した時、部屋の壁が、かすかに揺れた。


それは、爆発的な衝突ではなく、水面に石を投げたときの、波紋のような広がり方だった。


相模が、一歩、前に出た。その動作は、舞踊のように優雅だ。だが、その先には、絶対的な意図がある。


虚西は、それに対して、身体を横に傾けた。完全に避けたのではなく、相模の力の流れから、わずかに身を外した。


二人の間で、無言の交信が続いていた。


志乃は、その戦いの中に、何かを感じ始めていた。


これは、相手を倒すための戦いではない。むしろ、何かを確認し合うための、儀式のようなものだ。


二人の動きが加速した。


相模は、部屋の古い機械装置を使って、虚西へ迫った。その機械が、相模の霊気力に反応して、刃物のような形へと変化していく。


虚西は、その刃を、生身の身体で受け止めた。


彼の腕から、白い光が放たれ、その光が、相模の力を吸収し始めた。


相模の目が、わずかに細まった。それは、興味の表現だった。


「おどろいた。君の力は変わりつつある」


相模が言った。それは戦闘中の言葉であり、同時に、問いかけでもあった。


「前は、ここまでではなかった」


虚西は、答えなかった。ただ、その力を、さらに強めた。


部屋の床が、ひび割れ始める。零という文字が刻まれた金属プレートが、その力で、鳴り始めた。


相模は、その反応を見つめながら、別の一手を放った。


彼の霊気力が、虚西の周囲の空気そのものを操作し始めた。それは、攻撃ではなく、制御だ。虚西の移動を制限し、その力の放出を封じる動き。


虚西が、その制御に対抗した。


彼の白い光が、空気の中で渦巻き始める。相模の力と拮抗する、別の質感の力。


志乃は、その戦いを見ながら、何かを理解し始めていた。


二人は、単に力を比べているのではない。


何かを問い、何かを答えているのだ。


相模の次の動きが、それを示唆していた。


彼は、虚西の攻撃を避けながら、低く何かを言った。


「ところで君は、誰から、その力を受けたんだい?」


その問いかけは、短く、簡潔だ。だが、その中には、何かの重大な意味が込められていた。


虚西の動きが、一瞬だけ止まった。


それは、迷いではなく、何かを選択する瞬間だった。


相模は、その瞬間を見逃さず、さらに続けた。


「白塔? それとも、別の誰か?」


その言葉が、部屋の中に落ちた。


志乃は、その問いの意味が、完全には理解できなかった。だが、その言葉が、何かの本質に触れるものだ、ということは感じた。


虚西は、答えなかった。


ただ、彼の霊気力が、さらに拡大した。


部屋全体が、白い光に満たされ始める。


相模は、その光の中で、一歩、引いた。


それは、退却ではなく、観察の姿勢だ。相模は、虚西の力の変化を、つぶさに見つめていた。


「そうか」


相模が呟いた。


「君は、まだ、自分自身も完全に理解し切れていない」


その言葉が終わった時、部屋の別の側面から、新たな気配が近づいてきた。


外からの侵入者たちの足音。複数の人間。複数の霊気力。


相模と虚西の戦闘は、一瞬だけ停止した。


志乃は、その一瞬の静寂の中で、深く息を吸った。


彼女は感じていた。


今、自分たちが「何かの準備」の中心にいることを。


この戦いは、誰かの計画の一部であり、この部屋は、何かより大きな舞台へ続く、入り口なのだ、ということを。


部屋の奥から、別の轟音が聞こえた。


新たな勢力が、さらに近づいてくるのを感じた。


相模の表情に、微かな笑みが浮かぶ。


「どうやら僕たちだけでは済まないようだね」


相模が、虚西ではなく、虚空に向かって、そう呟いた。

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