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うちの村に異世界から無能がやってきました  作者: 投降の旗印
第五章 炎の少女編

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66. 翌日の朝

--(マーヤ視点)--

 私たちは日没後すぐに町に入った。


 まず組合の派出所に行き、仕留めた兎20羽の尻尾を受付の机に出した。


小兎(ティニーラビット)20羽討伐ですね。こちらが報奨金です。」


 そう言って受付のお姉さんは2枚の銅貨を渡してきた。これで依頼は大丈夫。


 次に旅の副産物を取り出した。


「あの、この毛皮は買い取れますか?」


 そう言って私は大きな獣の皮を机に広げた。


「あのこれは何の毛皮ですか?」


王猪 (キングボア)の毛皮です。」


「え!? 王猪 (キングボア)!?」


 受付のお姉さんは驚いたのか大きな声で言った。


 そしたら周りの人にも届いてしまったらしく「あいつら王猪を狩ったのか!?」「バケモンだ...」「いや嘘に決まってるだろ。」とあれこれ言う声が聞こえる。


「あの、私はこの毛皮が買い取れるか聞いてるんです。どうなんですか?」


 私は周りの声を無視して受付のお姉さんを問い詰めた。


「ええと、あの、この毛皮が本当に王猪のものか分からないので....」


 彼女がそう言い淀むので、


「ユウト。あれを出して。」


 と後ろにいたユウトに指示を出す。


 ユウトは嫌そうな顔をしたが、渋々出してくれた。それは王猪の持つ大きな牙。私はこんな大きな牙を見たことはない。ユウトが持ち帰りたいと言って無理に持ってきたものだった。


 お姉さんはその大きな牙を見て目がテンになる。


 だがさすが受付のお姉さん。すぐに切り替えて机の上に置かれた毛皮と牙を見比べる。

 

(この厚い毛皮と、大きな牙。本当に王猪かもしれない。)


 ぶつぶつと彼女は独り言を言っていた。しばし考えこんで...


「お待たせしまってすみません。この毛皮と牙が本当に王猪のものか鑑定するので、数日待っていただけますか?」


 と私に言った。


「分かりました。しばらくしたらまた来ます。」


 私はそう言い、建物を出た。


 はぁ~疲れたな。早く休みたい。


「じゃあ!宿に行こう!」


 ユウトは全く疲れてない様子で言った。


 何でそんなに元気なの。


 私たちは謎に元気いっぱいのユウトに導かれる形で宿に着いた。


 部屋に入ると倒れこんだように寝た。


 ——————


 翌日、目が覚めると昨日の服のまま寝てしまったことに気づいた。


 あぁ~、何やってんの。服がくしゃくしゃになっちゃうじゃん。

 

 しわしわの服を伸ばしていると、もう一人起きていることに気づいた。


「あれ、ユウト早いね。」


 髪がぼさぼさの彼がぼーと座っていた。

 

「ああ、マーヤおはよう。中々寝れなくて...」


 彼の目の下にうっすらとクマが見える。


「もしかして、寝てないんですか!?」


「う、うん....まあ。」


「なにしてるんですか!?今からでもいいから寝てください。私は昨日の兎肉を使って朝ご飯を作るから。」


「なら、俺も手伝うよ。」


「だから、ユウトは寝ててください!それにあなたは何も手伝えないでしょ?」


 そう言って私は無理やりユウトを寝かせた。


 あの王猪との熱戦があったのに何でユウトは寝てないの?


 帰り道でシュラさんが、「王猪はユウトが一人で倒したもんだ」って言ってたからあの人が一番疲れてるはずなのに...


 逆にあんな戦いがあったからこそ興奮して寝れないのかな。


 でも疲れは溜まっているだろうし、今日は宿で休んでもらおう。


 兎肉に胡椒をふりまき、じっくりと焼きながらそんなことを考えていると、香ばしい匂いが漂ってきた。


「ん~~、いい...におい...」


 ファティマちゃんが匂いにつられて起きてきた。


「今日は昨日狩った兎を食べるよ。」


 私がそう言うとファティマちゃんは露骨に嫌そうな顔をした。


「かわいいうさぎさんを食べちゃうの?」


「実はうさぎさん、おいしいんだよ?」


「え~やだ。うさぎさん食べたくない。」


 彼女がそう言う。そんなことを言われても、兎肉しか用意していない。


 すると、


 ぐぅ~~


 とお腹が鳴った。


「ファティマちゃん、お腹空いてるんじゃん。」


「ん~!違うのがいい!」


「え~?兎肉しか用意してないよ~?」


「やだ!違うのがいい!」


 彼女はどうしても兎が嫌らしい。どうしよう。何か買いに行くにしても私はここを離れられないし。


「お、いい匂いだな。兎か?」


 すると、シュラさんが起きてきた。ちょどいい!


「そうなんですけど、ファティマちゃんが兎嫌らしくて、申し訳ないんですけどシュラさん何か買ってきてくれませんか?」


 そう彼に頼んだ。


「なに?ファティマ、兎が嫌なのか?」


「だって、あんなかわいいうさぎさんを食べたくない。」


「そうか....なら仕方ないか。わかった。ファティマちゃんの朝ご飯を買ってくる。」


「ありがとうございます。」


 そうお礼を言うとシュラさんは部屋を出ていった。


 じゅ~じゅ~


 兎肉が焼けていく音が部屋に響く。


 ファティマちゃんは何をしているかといえば、布団をかぶっているユウトを起こしている。


「ユウト~。起きて~!起きて~!」

 

「ファティマちゃん、ユウトは眠いらしいから寝かせてあげて。」


 私は鍋に向かいながらそう言った。


「むぅ、わかった。」


 不服そうな彼女が聞こえてくる。


「ほらご飯が出来たよ。」


「やった!おいしそうな匂いがする。ユウト!ごはんだよ!」


 ファティマちゃんは嬉しそうにユウトを起こす。彼はのっそり起き上がった。


「いい匂い。」


 私は兎肉をお皿に盛り付けて机の上に置いた。


「ほらユウト、朝ご飯だよ。起きてください。」


 寝ぼけた顔の彼はゆらゆらと席に座った。


「え、おいしそう。これが兎?」


「そうですよ。」


 私はシュラさんの分と自分の分を盛りつけて席に座った。


 ファティマちゃんのために一口大に切っていた肉はシュラさんとユウトに分けていた。


「おいしそう!」


 ファティマちゃんが羨ましそうにこんがりと焼けた肉を見つめていた。


「ファティマちゃん、一口食べる?」


 ユウトが一口大に切ったものを一つファティマちゃんにあげた。箸で彼女の口まで運ぶ。


「おいし~い!」


 彼女はそれを噛むやいなや幸せそうに言った。


「マーヤお姉ちゃん!もっと食べたい!」


 彼女はそう懇願してくる。


「え~?さっき食べたくないって言ったのは誰!?」


「ごめんなさい。でもうさぎ、すごくおいしい!」


「はぁ~、わかった。ユウトごめん、一口大に切ったものをここに盛り付けて。」


 そういって余っていたお皿を渡す。ユウトは嫌そうにしながらも渋々盛り付けた。シュラさんのも申し訳ないけどファティマちゃんにあげた。


 目の前にコロコロした肉が置かれて、ファティマちゃんはよだれを抑えきれない。


「おいし~!!」


 幸せそうな彼女の声が部屋に響いた。


 その後、朝ご飯を買って帰ってきたシュラさんが見せた絶望的な顔が忘れられない。私はその顔が面白くて笑ってしまった。


 ちなみにシュラさんが買ってきたご飯は、ファティマちゃんがお腹いっぱいになったみたいで、私とユウトとシュラさんの三人で分けた。

 

 あんな死と隣り合わせだった昨日と比べて、今朝はゆっくりすぎて拍子抜けだ。でも日常に戻ってきたって感じして嬉しい。兎もおいしかったし。


 そうして一日が始まった。

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