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うちの村に異世界から無能がやってきました  作者: 投降の旗印
第五章 炎の少女編

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57. お姉ちゃんの居場所は

 彼女は疲れてしまったのか、作戦会議が終わった直後に寝てしまった。


 私とユウトが晩飯に何を食べようか話している時にシュラさんが話しかけてきた。


「マーヤとユウト、二人には伝えておこうと思うんだが、リューベは、遊郭だ。」


 え、うそでしょ....。リューベが、そんなところだったなんて....


「....ほんとですか?」


 私は下から彼の顔を見上げる。


「ここで嘘をつくわけがないだろ。リューベは、王都リューゲンスにほど近い、ホルミン王国最大級の遊郭だ。その規模も客層もけた違いらしい。」


「シュラさんも行ったことはないですよね?」


「そりゃそうだ。ここからだと1年はかかるからな。」


「じゃあ、その噂は嘘で、リューベが普通の町という可能性は....」


「ないな。リューベが遊郭だというのは有名な話だ。マーヤちゃんは女の子だから知らなかったかもしれないが、ゲリスの成人男性でも皆知っているだろう。」


「そ、そうなんですね....」


 全く知らなかった。これから私たちはその町を目指すの?


「どうしますか?やめますか?」


 私はシュラさんに聞く。まだ幼いファティマちゃんをそんなところに連れていけないし、私も行きたくないし。


「う~ん。確かに、本当にファティマちゃんのお姉さんがリューベにいるかは分からない。もう一度ファティマちゃんに聞いてみよう。なぜお姉さんがリューベにいると分かったのか。」


 シュラさんは私の懸念とは別方向の回答をした。


「それもそうですけど...そんなところにファティマちゃんを連れて行ってもいいんですかね?」


「そうだな.....。ファティマちゃんやマーヤが入るのは危ないかもしれない。だが、幸いにも我らには男が二人いる。それに王都の近くだし、遊郭の外にも町が広がってるだろう。遊郭の中に入る組と町に残る組で分ければ問題ないだろう。」


「そうですね....」


 シュラさんはちゃんと先のことまで考えている。私は遊郭と聞いて思考停止してしまったのに。もし本当に遊郭にファティマちゃんのお姉さんがいたら、彼女はファティマちゃんより酷いことをされてるかもしれない。それを知ったらファティマちゃんはどうなる?


 その時が来たら私はどういう顔してファティマちゃんと話せばいいんだろう....


 ダメだ分からない。全く想像ができない。遊郭がどんな場所かもよくわかっていないから、考えてもしょうがないのかなぁ。


 ぐぅぅぅ~


 そのとき、私のお腹が鳴った。恥ずかしくて顔が赤くなる。


「お腹空いたよな。みんなで食べに行くか。」


 シュラさんが明るくそう言ってくれた。申し訳ない。


 私はファティマちゃんを起こす。瞼をこすりながらファティマちゃんは身を起こした。

 

 その後みんなで宿を出て、屋台そばに赴く。


 屋台の大将は、いきなり大所帯が来て、しかもホルミ族・キンミ族・ファミル族・ドーラ族の異色の組み合わせに驚きつつも明るく対応してくれた。


「ファティマちゃん、私のちょっといる?」


 私は隣に座るファティマちゃんに声を掛けた。もっと彼女が心を開いてくれるようになれたらいいな。


「うん!たべる!」


 小鉢にすくったそばを手渡すと、すごく嬉そうな顔をして箸を鷲掴みしたまま口に運んだ。


「おいひ~い!」


 幸せそうにそう言った。可愛い。もっとあげたくなっちゃう。


「俺のも食べるか?」


 ファティマちゃんを挟んで奥に座っていたシュラさんが声を掛けた。


 ファティマちゃんはシュラさんの言葉を無視し、


「ねぇ、マーヤお姉ちゃん。もっとちょうだい♪」


 とねだられてしまった。


「うん、いいよ!」


 もう可愛いから全部あげちゃう。


 シュラさんはファティマちゃんに嫌われたみたいだ。あんな怖い顔して問い詰められたら嫌いになっちゃうよね。


 一緒に旅をするんだから仲良くなってもらいたいけど、シュラさんも子供じゃないんだし何とかするでしょ。


 そんな感じで、ファティマちゃんとたくさんお話して、一人だけ他人みたいに黙って食べていたユウトを巻き込んだりして、その日の夕飯を終えた。


 宿に帰るときに、シュラさんが耳打ちしてきた。


「なぜ、お姉さんがリューベにいると分かったのかを、マーヤから聞いてくれるか?どうやら俺は嫌われてるみたいで。」


「そうみたいですね。分かりました。私から聞きます。」


 部屋に戻り、布団を敷いている時にファティマちゃんに聞いてみた。


「あのさ、ファティマちゃん、なんでお姉さんがリューベにいるってわかったの?」


 するとファティマちゃんは手を止めて答えてくれた。


「えっと...あのね...私が捕まった時に、男の人が言ってたんだ。『お姉ちゃんは今頃リューベにいるだろうな』って...」


「そ、そうなんだ。」


 とすると、人身売買をしてた男が脅しとして言ったことをファティマちゃんが真に受けちゃったのか?


「あ!それとね....。とちゅうで男の人が増えた時に、『リューベであいつの姉を見たぜ』って聞こえてきたの。」


 え!じゃ、じゃあ、本当にお姉さんがリューベにいるの!?


 私は驚いてシュラさんの顔を見た。彼もそのことを察していた。


 だとしたら、リューベにファティマちゃんのお姉さんがいる可能性は高いかもしれない。


「なら、リューベにお姉さんがいるかもしれないね。」


 私がそう言うと、


「ほんと!」


 とパッと顔を明るくしてファティマちゃんは言った。


 彼女にそう期待させてしまうのは本当に良いのかを考えてしまう。何も知らせずにいておく方が彼女にとって幸せかもしれない。


 いや、違う。彼女は知りたがっているのだ。そして会いたがっているのだ。今諦めさせちゃったら、彼女に後悔させてしまう。


 そう考えながらファティマちゃんの顔をじっと見ていると、ニコッと笑いかけてくれた。それに私も笑顔で返す。


 私はこの笑顔を絶対に守るんだ。


 そう夜の帳に決意した。

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