表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちの村に異世界から無能がやってきました  作者: 投降の旗印
第五章 炎の少女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/65

54. 少女を捜索せよ

 朝になった。

 

 憎たらしいほどに晴れやかな朝だ。


 こんなに綺麗な空の下で誰かが泣いている。


 絶対、ファティマちゃんを助ける。そう決めたんだ。


 よし、やるぞ。


「ふぁああ、お、マーヤ。早起きだな。」


 するとシュラさんが起きた。


「あまり眠れなくて...」


「大丈夫か?今日は忙しいぞ?」


「大丈夫です。」


「そうか。じゃあ、ユウトが起きたら朝ごはん買ってくるか。」


 シュラさんは優しい目でユウトの寝顔を見ていた。こう見ると彼はお父さんだ。


「ユウトは起こさないと、いつまでも寝てるので、起こしましょう。」


 そう言って私はユウトをたたき起こした。


「おはぁよ~マーヤ~」


 ユウトは全く目が開いていない。


「じゃあ、私たちはご飯を買ってきますから、待っててね。」


 私のその言葉にユウトは目をつぶりながらコクリと頷いたが、本当にわかっているのだろうか。


 シュラさんと一緒に商店街へ行き、おにぎり3つと軽くつまめるものを買ってきた。


 宿に戻りご飯を食べながら、三人で今日の行動を再度確認する。


「俺は情報屋のところへ、マーヤは町を見回る、ユウトは留守番。それでいいね。」


 シュラさんが開口一番そう言った。


「はい。」


「...はい。」


 ユウトは残念そうだ。やはりお留守番はさみしいのだろう。


「それとマーヤちゃん。」


 シュラさんが私を見た。


「はい。どうしました?」


「もし、道中でファティマちゃんを見つけたとしても下手に近づいちゃいけない。君も連れ去られるかも知らないから。もし彼女を見つけたら、すぐ帰ってくるんだ。」


「え、それじゃあ、せっかく見つけた意味がないじゃないですか。」


「俺とユウトを連れてまたその場所へ行けばいい。」


「二人を呼ぶまでに、彼女は移動させられてるかもしれないと言ってるんです!」


「だが.....そんな危ないところで君一人なのは....」


「大丈夫です。何とかします。」


 シュラさんは長く考えていたが、やがて諦めたように言った。


「まあ、出会わない可能性の方が高いからな。お前の勝手でいい。」


「ありがとうございます!」


 そうして計画は固まり、各々が動き出した。


 私は宿をでて、昨日男がファティマちゃんを連れて行った方向へ歩いていく。


 そこは普通の商店街だった。新鮮な野菜や魚がいたるところで売られている。朝だからか人も多い。


 これじゃあ、背の低いファティマちゃんは埋もれちゃう。全く探せない。


 私は路地を通って一本奥の道に入る。


 この道は先ほどと打って変わって静かだった。道が狭く、人も全くいない。


 誰も寄り付かないこの道は、悪い奴らが隠れるには絶好の場所だ。奴は表通りよりはこういうところにいるかもしれない。


 私はその細い道をゆっくりと歩いていく。道端にボロボロの服を着たキンミ族が死んだ目をして座っている。私はそれを見て見ぬふりをして通り過ぎた。


「おい、行くぞ!」


 どこかから、声が聞こえてきた。どこかで聞いたことのある声。


 私は壁を伝いながら、その声のする方へゆっくりと近づいていく。


 路地の角から、その声のした方をチラッと覗き込むと....


「やっぱり、あの男だ。」


 昨日、ファティマちゃんを連れていた男がいた。彼は女の子の手を引っ張っていた。


 あの子は!


 後ろ姿で顔は良く見えないけど、あの綺麗な赤髪、絶対ファティマちゃんだ。


 彼女は男に連れ去られるのを抵抗している。


 すると、奥からまた一人男が出てきて、ファティマちゃんをひょいと抱き上げた。


 暴れる彼女をものともしていない。そいつは男の仲間のようだ。


 マジか。相手が一人でも厄介だというのに、二人もいるんじゃ、私じゃ立ち向かえない。


 今朝のシュラさんの言葉が脳裏に浮かぶ。


 『連れ去られるかもしれない』か。


 そうかもしれないけど、私は彼女の役に立ちたい。今は二人を倒せなくても、シュラさんとユウトを連れてくれば余裕なはずだ。


 なら私がすべきことは、少しでも良い情報を持って帰ること。


 二人はファティマちゃんを抱えて歩きだした。私はバレないようについていく。


 誰かの後ろを気づかれないようについていくなんて、やったことがない。


 しかも、ここは路地裏。人がほとんど来ないし、見つかったら逃げ道が限られる。


 私がもう少し冷静だったら、すぐに宿に帰って、男にはもう一人仲間がいたことだけを伝えていたかもしれない。


 でもその時は、ファティマちゃんを助けたい気持ちが先行していた。


 しばらく尾行を続けていると、男たちは一つの建物に入っていった。蔵のようだ。そこが奴らの拠点なのだろうか。


 ここで尾行をやめることにした。蔵の中は行き止まりの可能性が高いので、これ以上の詮索は危険だ。この情報を持ち帰って、ユウトとシュラさんに蔵の中を調べてもらう方がいい。


 私は宿へ帰ろうと後ろを振り返ったとき、誰かとぶつかってしまった。


「あ、すみません。」


ぶつかったのは、ホルミ族の男だった。


「おっと、お嬢ちゃん。ここで何をしてるのかい?」


「あ、えっと....。それは...」


「まあいいや。ファミル族は結構な値がつくからな。」


 そういうと男は私の腕をつかみ引っ張る。


「やめてください!」


 私はその手を振り払おうとするが、男の力が強くて離れない。


 まずい!このままじゃ連れていかれる!


 私は全身で暴れて男の拘束を解こうとする。


「もぉ~暴れないでよ。」


 男がそう言うと、


 ドゴっ!


 と私のお腹を力強く殴った。


「ぐはぁっ!」


 私は痛みでその場に倒れこんでしまう。


 ダメだ。上手く体に力が入らない。


「お~い。誰か手伝ってくれ!」


 男が蔵の方へ向け助けを呼んだ。蔵からぞろぞろと男たちが出てくる。うそ....こんなにいたの....


 私は男に気づかれないように、魔法を使いお腹を治療していた。


「おい!そいつ、怪我治してるぞ!」


 近づいていた男の一人に気づかれてしまった。


「お前!さらに痛くなりてぇようだな。」


 そう言って、男は私のお腹を蹴った。


 ドゴっ!


 再度、お腹に強い衝撃が来る。


 いつの間にか蔵から来た男たちが私を囲んでいた。


「おいおい、商品をあまり傷つけるなよ。」


 男たちの一人はそう言った。


「そういう時はこうするんだよ。」


 すると男たちの一人が、私の口に袋をあてがう。中の空気を漏らさないためか袋の口が私の顔に沿うように押さえつけた。


 何、この匂い。甘い。なんかこの匂いを嗅いでると、眠くなってくる。


 だめ、こんなとこで寝ちゃだめだ。


 でも抗えない眠気が私を襲う。


 だめだ!だめだ。


 でも、ねむい.....


 ごめん....シュラさん.....ユウト............


 そこで私の意識は途絶えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ