8話 不穏の前触れ
本作はフィクションです。
登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
物語としてお楽しみいただければ幸いです。
――数日後。
「宿題が全然減らなーい!」
「そりゃやらないからだろ。」
白雪の家で、洸と碧と三人で夏休みの宿題をしている。
「はぁ、今日本当は、芽莉ちゃんと図書館の予定だったのになー…」
「残念だね〜。芽莉ちゃん、たまに家の事情でドタキャンするよね。」
「うん…でも家の手伝いって言ってたから、お店でもやってるのかな?」
「俺らと一緒だったりして~」
冗談混じりの洸だったが、碧が提案する。
「うちで調べてやろうか?」
「っそんな事しないで!知られたくない家庭の事情はあるの!」
家の事で苦労していた白雪だったからこそ、一番理解が出来た。
そんな騒がしい中に、襖が大きく開かれた。
「学生は楽しそうですね。」
「っ!灰月!?」
碧がすぐに気づいた。
「こんにちは灰月さん。今日も父の手伝いですか?」
「……。」
呂唖の視線は一瞬、鋭く白雪に向けられる。
「白雪ちゃん。…呂唖くん、婿候補だよ。」
洸が耳打ちする。
「え!すみません。知らなくて…」
「白雪さん、すぐ出て行ったもんね。」
呂唖の口元が、僅かに歪む。
「……ぅ。すみません。」
「構いませんよ。どうせ貴方は何も知らないんだから。」
棘のある言い方の呂唖。
「……。」
「親父さん待ってるんじゃねーの?」
碧が、さりげなく白雪の前に立つ。
「…ええ。そうですね。組長に怒られちゃうので行きます。今日は挨拶だけで…。」
一礼すると、呂唖は出て行った。
「…なんか、私したかな?…。」
「呂唖くんとも遊びたいな〜。」
「は?お前、物好きだな!」
白雪は何かが引っかかって、二人の軽快な会話に入れなかった。
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白雪は一人、本屋から出てくる。
(参考書あって良かった~…帰りにケーキ買っちゃおうかな〜)
「ねーねー、おねーさん!」
知らない男二人組が、白雪の肩を叩く。
「わっ!…なん、ですか?」
嫌悪感でいっぱいの眼差し。
でも二人組は全く気にする様子もなく、続けた。
「僕たちと、遊びに行かない?」
「夏休みでしょ?たくさん遊ぼうよ!」
「結構です!宿題やらないとけないので!」
真剣に言うと、二人組はバカにしたように笑う。
「あははは!真面目だな〜。」
「こんな真面目な娘が、跡取りって!」
その言葉に違和感を覚える。
「え?…跡取り?」
「あ!やべ!」
二人組の後ろから、緑の髪の男が頭を叩く。
「あははは~。バカかお前は。」
単調な物言い。
「す、すみません。」
三人目の登場で、嫌悪感は更に募る。
「お前らもういいよ。」
「あ、はい。」
「すみません!」
二人はバタバタと逃げるように、その場を後にする。
「なんですか?」
警戒する白雪に、掴めない男はニコニコするばかりだった。
つづく。




