5話 転校生
本作はフィクションです。
登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
物語としてお楽しみいただければ幸いです。
翌日。
結局、何も聞けなかったまま、朝を迎えた。
頭の中に残っているのは、昨日の光景。
(…10年一緒にいてあんな笑顔、見た事ない…。)
「白雪ちゃん?大丈夫?」
「え、あ……うん。」
芽莉の声で我に返る。
教室に入ると、どこか落ち着かない空気が流れていた。
「なんかね、今日転校生来るらしいよ。」
「へぇ……」
あまり頭に入ってこないまま、席に着く。
――ガラッ。扉が開く。
先生と一緒に入ってきたのは、一人の男子生徒だった。
「今日から転校してきた――」
ざわめきが広がる。
けれど。
白雪は、その顔を見た瞬間、少しだけ違和感を覚えた。
(……なんか、この人。)
「あまやなぎこう。です!
よろしくおねがいしまーす!」
(…軽い…。)
授業が終えると、突然声をかけられた。
「白雪ちゃん!」
「……え?」
顔を上げると、さっきの転校生が目の前に立っている。
「俺の事…わかんない?」
「…?」
「あの時、7人の――」
「あーー!」
白雪が思い切り立ち上がると、洸の腕を掴んで教室を出て行った。
走る二人が碧の目の前を通り過ぎる。
「…はぁ?」
碧は二人の後をつけていった。
人気のない所に来ると、息を切らしながら、白雪は手を離す。
「すごい、熱烈だね!」
「――何言ってんの!」
顔赤くしながら白雪が言う。
「ハハハ!面白いな〜」
「…私、学校のみんなに、家の事知られたくないの。だから…」
「うん、良いよ!言わない。
俺だって、まだ16だよ?婿と言われてもねー…」
「じゃあ、帰れよ。なんでわざわざ転校してきた?」
追い付いた碧が口を挟む。
「うーん…白雪ちゃんに興味あって?」
「碧?」
「あー、碧くんって、白雪ちゃんだーい――」
「うるせー!」
碧は洸の頭を叩く。
「痛ーい!白雪ちゃん!撫でて〜」
「え、あ、はい。」
反射的に白雪が洸の頭を撫でる。
「お前!」
今度は碧は洸の胸ぐらを掴む。
「もう!碧、辞めて!」
「アハハハ!ごめんね。からかいすぎた。」
「とにかく!お願いしますね!」
「うーん…気が変わった〜」
「え?」
「今日、白雪ちゃん家に招待して欲しいな!」
「はぁ?お前――!」
「碧は下がってて!」
渋々白雪の後ろに立ち、睨みつけている。
洸は少しだけ首を傾げて、軽く笑った。
「行けないなら、バラしちゃおうかな。」
あくまで軽い口調。
けれど、その視線はどこか読めない。
「…わかった。」
「白雪!」
「家くらい。この前だって居たんでしょ?
知ってるなら構わないわ。」
「じゃあ決まり!今日、一緒に帰ろ!」
洸はニコリとすると、その場を後にした。
「碧がややこしくするからだよ!」
「ごめん…。でもあいつ、白雪に馴れ馴れしいから!」
「碧のバカ!」
ぴしゃりと言いきられ、空気が止まる。
碧は小さいな声でもう一度謝った。
放課後、ソワソワする白雪を他所に、洸が話しかけてくる。
「白雪ちゃん、一緒に帰ろ〜」
「天柳くん。私も良い?」
芽莉が横から出てくる。
「もちろん!芽莉ちゃんの家はどこなの?」
「私は、白雪ちゃんとは、反対方向なんだけど、電車は同じなんだよ。」
そんな会話をしながら、駅に向かう三人。
後ろからパタパタと足音がする。
「白雪!」
「碧!?」
「俺も、一緒帰る。」
ぎこちない空気が漂ったが、洸が一掃した。
「良いよ良いよ!みんなで帰ろう!」
「天柳くんて、明るい人だね!」
「ありがとう!あと、洸で良いよ!」
駅に着くと、いつものように芽莉と別れた。
つづく。




