31話 愛する人、愛してくれる人
本作はフィクションです。
登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
物語としてお楽しみいただければ幸いです。
しばらくは穏やかな日々を過ごして居た。
その穏やかさに白雪は、ふと疑問を抱いていた。
「ねー、最近風我さん来なくない?」
「あー…そうですかねー…。」
「みんな良く遊びに来るのに、風我さんだけ、あれから見ないと思わない?」
「いやー、俺は会って…ません。」
暁斗の視線は斜め下へと注がれる。
「暁斗…私、嘘ついてる時の暁斗の顔、見分けるようになったのよ?」
「お嬢!?」
白雪は暁斗の顔を掴む。
「私の目、見て言ってみな!」
それは怖さはないが、気迫と可愛さに負け、暁斗は話してしまう。
「…風我は、何処にいるかはわかりません。
親父さんに、しばらく組を離れる。とだけ…だから婿候補も……。」
「――っ!
なんで!?私のせい?」
「それは違う!お嬢のせいじゃない!」
「…私が好きになる人は、みんな居なくなるのね…。」
「…お嬢……。」
「そっか!わかった!」
白雪はその場から離れる。その作り笑顔が痛々しくて、暁斗は見送る事しか出来なかった。
学校の帰り道、よく会ういつもの通りを、白雪は行ったり来たりしていた。
(やっぱり会わないなぁ…。)
ふと足が止まる。
(そうだ!あの人なら何か知ってるかも!)
風我の居る組が経営しているスナックを、白雪は探し始める。
(この辺歩いてたから…近い所だよね?)
キョロキョロしていると、あの日腕組んでいた女性を見つける。
(あっ!)
白雪は駆け出した。
「すみません!」
「誰?」
「あの、私、近藤白雪って言います。風我さん探してて、知ってますか?」
「あぁ〜、お嬢様ね。」
その人は白雪の足の先から頭のてっぺんまで、舐めるように見定める。
「知らないわ〜。会ったら教えて欲しいくらいです。そろそろ風我さんと寝たいのよね。」
「そうですか…ありがとうございます。」
頭を下げると、白雪はまた何処かへ走って行く。
「…あの時は隠れてたのに…。つまんないの。」
白雪は次の日もその次の日も街へ探しに出ていく。
途方にくれて、いつもの公園に居ると、影がひとつ…。
「朱月さん。」
「…この公園、俺の通勤通路したんだ。」
少し寂しそうな笑みで朱月は言う。
「え…。」
朱月は隣に座ると、片手で白雪の手に重ねる。
「俺、愛なんて知らねーから、白雪と結婚なんて無理な話だと思ってる。それでもうちの組長が、大丈夫だよ。って笑うんだ。」
朱月が白雪の前に跪く。
「何が大丈夫だか知らねーよ。と思ってたけど、わかったんだ。
好きになった。愛なんだってわかった。」
朱月は寂しそうに微笑む。
「俺を…選んでくれないか?」
「え……。」
白雪は目を見開いた。
「今、答えなくていいよ。」
「…う、うん。」
「……送ってく。」
「…ありがとう。」
今までと同じなのに、今までと違う空気を纏っていた。
白雪は風我を探し続けていた。
自分へのけじめ。朱月への誠意。
そんな言葉で、自分を奮い立たせていた。
そんなある日、碧が屋敷へ訪ねてくる。
「白雪…まだ探してんの?受験勉強は?」
「うん。まだ時間あるし、ギリギリまで…。」
「あてあんの?」
「…無いけど、ひょっこり戻ってきそうでしょ?」
「はぁ…。待ってろ。」
碧はどこかに電話をかける。
「あ、ちょっと待ってて。」
白雪にスマホを押し付ける。
「何?」
『もしもし?碧くん?』
その声は、ずっと聞きたかった声。
白雪は涙を落としながら、スマホを受け取る。
「…風我、さん。」
『っ!姫……碧、お前!』
「俺は白雪の味方なんで!」
白雪の肩に手を置くと、その場を離れた。
「切らないで!お願い!」
『……。』
「会えませんか?話したいの。」
『…俺、姫に相応しくないから。』
「それは、私が決めます。」
『……。』
「離れて行くなら、ちゃんと傷付けて!」
『姫…。』
しばらく沈黙する二人。
『俺、今、隣の県なんだ。
だから、すぐは無理。』
「私、行く!」
『いや、またなんかあったら…。俺が行く。
今度の日曜、碧くんに場所をメッセージで送っておく。』
「わかった…。」
『まだ仕事片付いてないから、切るよ。』
「うん。ごめんなさい。」
『いや、姫は悪くない。』
「……。」
『……。』
中々通話を切れてないでいる二人を見兼ねて、碧が電話口に出る。
「じゃあ風我さん、これから白雪と二人で勉強するので〜。」
そう言うと、プッと通話を切った。
「碧!」
「勉強、しよ!」
「ありがとう。」
白雪は少し嬉しそうに、碧と勉強を始めた。
「くそ!……姫…。」
風我は、絶とうと思っていた想いが溢れて、碧の冗談半分の言葉にさえ、余裕がなかった。
つづく。




