30話 壊すもの、守るもの
本作はフィクションです。
登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
物語としてお楽しみいただければ幸いです。
佐竹がすごみながら返事をした。
「あ?なんだ?」
「夫婦になる前に、俺にくれません?」
カイはニコリとしながら言う。
「はぁ?」
「やっぱり真っさらなお嬢が欲しいんです!」
佐竹は飽きれたように、頭を抱えた。
すると――バキ!
鈍い音と共に、カイは地面に倒れた。
「…お前、調子にのるなよ。」
口元の血を拭いながら、カイは立つ。
「……ダメですか?」
「そんなの後でいいだろ!」
佐竹が掴みにかかる寸前。
パン!
「うぐっ!」
「……っ!」
白雪の視界に、赤いものが広がる。
「え……はぁ、っ…はぁ…。」
「すみませんお嬢。血は出さないよう、話し合いしたかったけど、無理でした〜。」
白雪の目から涙が溢れ出る。
過去を聞いて、克服したと思っていたが、まだ無理だった。
近づくカイ…
体は言うことを聞かず、声も出せない白雪。
「…お嬢。」
カイの指が、太ももをなぞる。
「やめ…て……た、はぁ、はぁ…」
白雪は意を決して叫んだ。
「…助けて!!」
ドアが蹴破られる。
と、そこに居たのは風我。
「てめぇ!――殺してやる!」
カイに飛びかかると、鈍い音が響く。
何度も何度も…。その音に白雪は、現実に引き戻される。
「…風我さん!辞めて!!」
一瞬怯んだ隙に、カイは銃口を風我に向ける。
パン!
風我は咄嗟に顔を背けて、無事だった。
「はぁ、はぁ…ぐっ…痛いじゃないですか、風我さん。」
「そこに転がってるやつも、お前が撃ったのか?」
「…はい。」
しばらく睨み合う。
「…お嬢が、殺したいほど好きなんです。」
カイが先に口を開いた。
「…姫のいない世界で、お前は生きていけるのか?」
風我は柔らかく微笑んだ。
「俺は生きていけない…。だから、一生守んだよ!」
カイの顔面に、思い切り蹴り上げた足が入る。
そのままカイは後ろへ倒れた。
「はぁ、はぁ……姫!」
白雪の元へ駆け寄ろうとした時、自分の手が血まみれなのに気づくと、立ち止まった。
「俺…こんなじゃ姫を助けられねーわ。」
顔に着いた血を、無造作に拭う。
その目は冷たく、今にも消えて無くなりそうだった。
「…風我さん。私なら大丈夫…」
「誰か、…呼んでくるから。」
立ち去ろうとする風我を止めたくて、白雪は縛られた足で立つ。
けれど自由はきかなく、ドサっと倒れてしまう。
その音で風我は振り返ると、その顔は苦痛でゆがんでいた。
「…助けてくれないの?」
「っ!血だらけだよ?」
「私、少しは克服したの…。見てよ。」
白雪は自分でも分からないまま涙が止まらずにいた。
風我はゆっくり、目を逸らさず、白雪に近づくと、縄を解いた。
「姫…。良かった…。」
白雪は風我の肩に、泣きながらもたれると、それに応えるように、風我が強く、でも優しく抱き締めた。
遅れて、朱月と暁斗がやって来る。
暁斗は組員と後始末を、朱月は二人をただ見つめていた。その手は血が滲むくらい強く握られていた。
一同が屋敷に戻ると、土や埃で汚れている白雪を、気にせず芽莉は抱き締めた。
子供のように泣く二人を洸が抱き締めると、碧、千里と続いた。
すると二人の涙は消え、笑顔が戻った。
「風我、汚れ、落としてこい。」
「いや…俺、帰るわ。」
暁斗の言う言葉に軽く返して、姿を消した。
廊下で朱月とすれ違う。
「俺は、こういうやり方しか出来ない…。」
風我がポツリと言う。
「皆そうだろ?あいつを守る為なら…極道なんだし。」
朱月がふっと笑みを零しながら言う。
「無表情が笑った…こえー。」
軽口を叩く風我。
「冷徹が人の事思うって…気持ち悪。」
朱月が拳を出すと、風我が軽く拳を突き出した。
そして風我の選択を、白雪はまだ知らない…。
つづく。




