29話 狂愛
本作はフィクションです。
登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
物語としてお楽しみいただければ幸いです。
「…ぅ…っ!?」
硬く冷たい地面に、両手足を縛られ、薬で眠らされていた白雪が目を覚ます。
「お目ざめですか?お嬢様。」
「…あなた、組の人ね?」
「よく分かりますね。まぁ、だからお友達から離れたんだろうけど。」
横たわる白雪の目の前に、座り込む。
「敵対してる組は私を、"近藤の娘"って呼ぶけど、あなたは"お嬢様"って言ったでしょ。」
「勘が鋭いんだな。俺らを見て、すぐ警戒したもんな。一般人に見えなかった?」
「見えないわね。」
白雪は睨む。
そこへ他の男たちが入って来た。
「佐竹さ〜ん。髪の毛置いてきたぞ〜。
て、お嬢起きたの?」
「え…あなた…。うちに住んでる…。」
「カイです。覚えてくれてるの!?嬉しいな〜」
「当然よ。…家族みたいなものじゃない…。
それより裏切ってたの?」
「いいえ。皆がお嬢を憧れる。暁斗さんだって…お嬢は誰の物にもなっちゃダメなんですよ。」
笑顔からは狂気が滲み出ていた。
「俺は婚姻届にサインしてくれれば良いよ。」
佐竹が横から口を挟む。
「で、俺はお嬢を、壊す。リガイノイッチってやつかな?」
「夫婦になったら、一回ヤラせろよ?」
「え?キレイなまま殺したいんだけど…」
「そのキレイなお嬢様を汚すのも良いと思わないか?」
カイは少し考えたのち、薄ら笑いを浮かべる。
「それも良いかも〜。皆、どんな顔するかな〜?楽しみだね。」
「っ……。」
――一方三人は、碧が場所を絞ったが、範囲は広く、難航していた。
「もう一時間…」
朱月は焦っていた。
「もう少し西に行ってみては?」
同乗している組員が言う。
「碧に確認してみて。」
「分かりました。」
こうして見つからないまま、更に一時間が過ぎていた。
白雪の元に、婚約届けを持った組員が入ってくる。
「お待たせしました。」
「おせーよ!」
外で、そんな会話が聞こえる。
すると、目の前に居たカイが、一歩ずつ近寄る。
「何?辞めて…。」
縛られた足では逃げられず、背中は壁に当たった。それでもカイは進み、白雪の前にしゃがむと、首筋の舐める。
「ひゃっ!」
気持ち悪さで顔が歪む。
「俺が先にもらっちゃおうかな。」
耳元で囁く。それさえも嫌悪感で、白雪は顔を逸らした。
「碧さんの時は、許してあげたのに?」
「やめて、一緒にしないで!碧とあなたでは、雲泥の差。月とすっぽんよ!」
「はははは。俺、組長の息子でもないもんね…。
あ!わかった…俺と夫婦になればいいのか…。でもそしたら、佐竹さん怒るよな〜。殺っちゃえば良いのか〜?」
「何言ってるの!?」
「そんな怖い顔しないで?冗談だよ。
隣の部屋には組員がたくさん居るんだ…俺一人じゃ勝てないもん。」
カイが、んー。と考えていると、佐竹が婚姻届けを持って入ってくる。
「お嬢様、これ書いて欲しいんですけど。」
「嫌です!」
「そうですよね。…じゃあお友達連れて来たら書いてくれます?」
白雪の顔から血の気が引く。
「どういう事?何かしたの!?ねぇ!」
「まだ。です。
今屋敷は、碧さんとお友達、婿候補だった人と数人の組員しかいないみたいですよ?」
佐竹はニヤリとする。
「こっちも少数だけど、場数はこっちの方が上だし、碧さん一人じゃ無理でしょ…どうします?」
「……。」
(ハッタリ…じゃなさそう。屋敷に居た方が安全と思うし、捜索には暁斗たちの方が力になる。碧も強いけど、みんなは守れない。)
白雪の顔は諦めていないが、不安から涙が滲み出てくる。
「…佐竹さーん。お願いがあります。」
カイが、不敵な笑みを浮かべながら、睨み合う二人の間に入った。
つづく。




