23話 終わらない関係
本作はフィクションです。
登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
物語としてお楽しみいただければ幸いです。
人気がない所へ来ると、千里はぽつりぽつりと話し始めた。
「僕は…父の、言う事を聞くのが当たり前だった。でも、花は好きなんだ。
実は、婿、候補は、白雪さんのお父さんからの提案だった。」
「え…?」
驚く白雪に、くすっと微笑んで続けた。
「僕が父に叩かれた日、白雪さんのお父さんに、婿候補を辞退します。って言ったんだ。そうしたら…」
――『そうか。千里が決めたのか。お前は少し生きづらそうだったからな…良かった。』
「白雪のお父さんは、小さい頃から僕を見ててそう思ってたらしくて…白雪さんと付き合えば、何か変わるかもって。」
「そんな…私何も出来ないのに…。」
「ううんそんな事ないよ!僕は勇気を貰ってる。それに…」
千里はふわりと白雪を抱きしめる。
「千里さ――」
「ちょっとだけ……」
千里の心に淡く灯った何かを、白雪にそっと返すように。
「…良ければ、友達になって欲しいな。」
「…はい。もちろん!」
「ふふふ。ありがとう…。」
千里が体を離すと、二人は微笑み合う。
飲み物を手にした朱月が戻って来る。
「…飲み物買って来た。」
千里と朱月は目が合うと、小さく頷く。
「そろそろ閉園だって。…帰るか。」
「もうそんな時間…そうですね!」
残念そうな白雪を連れて、出口へ行くと、暁斗が迎えに来ていた。
「暁斗!」
「お嬢、迎えに来ました。」
「ありがとう!」
そんな会話を聞きながら、千里が朱月に話しかけた。
「白雪さんとの時間、作ってくれて、ありがとうございました。」
「あぁ。」
「友達に、なれました。」
「あぁ。」
俯く千里に、朱月は続ける。
「…朱月でいい。…俺も、千里って呼ぶ。」
「え…。」
「もうライバルじゃないから…友達なんだろ?」
左右違う瞳が大きく見開く。
「はい!…ありがとう朱月!」
「あぁ。」
「ふふ、朱月はもう少し表情出したら良いよ!」
頬を緩めた朱月に、千里も笑みを返した。
暗闇で生きていた二人には、想像つかない想いを胸に…。
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冷たい風の中にも、どこか春の気配が混じり始めていた。
「碧くん!卒業おめでとう!」
ウルウルとした目で洸が見つめる。
「碧…たまには遊びに来てね。」
白雪から涙が落ちる。
碧の卒業式。
在校生代表の芽莉と、付き添いで来ていた白雪と洸は碧に抱きついていた。
「……。
俺、大学こっちだから、引っ越さない…。」
白雪と洸は一斉に碧を見る。
「知らなかった!」
「受かるかわかんないから、言ってなかった…。」
「なーんだ!じゃあまた遊べるね〜」
軽く言う洸は、白雪の腕を掴んで碧から離れた。
「…ははは…。でも先輩はお家、継ぐのかと思いました。」
芽莉が聞くと、洸もうんうん。と頷く。
「母さんが…看護師なんだけど、大学くらい行けって……。」
「え!?看護師さん!?」
「極道と看護師さん!?」
「おじ様が怪我で入院した時に、おば様が担当で、一目惚れされたんだって!」
驚く二人を他所に、白雪が言う。
「えー!ステキ!」
「えー…芽莉ちゃん。」
碧の両親の出会いを羨ましそうにする芽莉。
「おば様の方が怖いんだよ!ね!」
「あぁ……すげー怒られた。」
碧は白雪を見つめる。
「あ、うん。想像つく…」
「でも、俺の気持ち知ってたから…
……いや、ごめん。もうこの話は…」
「碧くーーん!こっちで写真撮ろー!」
二人の気まづい空気は、同級生に破られた。
「ごめん行くわ!じゃ、また連絡する!」
「うん、またね!」
「バイバーイ。」
「卒業、おめでとうございます!」
碧の三年生最後の背中を、三人は見送った。
また一つ季節は過ぎていく。
つづく。




