21話 想いは隠したまま
本作はフィクションです。
登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
物語としてお楽しみいただければ幸いです。
――『組長は命に替えてもお守りします。』
呂唖の瞳が大きく開かれる。
「誠司おじさんは、そう言って出かけた。」
「え…白雪、父さんに会ったの?」
「うん。だから悲しかった…」
思い出して、白雪の目から涙がポロポロ落ちる。
「でも!だからって、本当に…」
「俺を庇ったんじゃない…あいつは優しいから…後輩を庇ったんだ。」
「はぁ?…そんな、嘘だ…」
「本当だ。」
当時その場に居た組員がそう言うと、呂唖の手から銃がカチャリと落ちた。
「組長をお助けしろ!」
白雪は呂唖を優しく抱きしめる。
「…白雪。」
「私、呂唖くんの事――」
呂唖は、そのあとの言葉を封じるように口付けをする。
「っ!」
「俺にはそんな資格ないよ…」
そう言って涙を流す呂唖。
数日後。
呂唖は、母親の待つアメリカへと発った。
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白雪はいつものように、公園に居た。
(はぁ…。)
思い出すと涙が溢れるから、考えないようにしようとする…でもそう思えば思うほど、考えてしまう。悪循環だった。
俯く白雪の足元に、影落ちる。
顔を上げると――朱月だった。
「…なんで?」
「いちお、組の中で情報は共有してるから。
またここかと思って…。」
隣に座る朱月。
「高台の公園連れて行ってやろうか?」
「………いえ、今は助手席が辛いので…。」
そう言うと、白雪は泣きだしてしまう。
朱月は肩を引き寄せる。
涙で濡れようが、構わず。
「うぅ……好きって、言わせて、もらえなかった…。」
「…その方が、辛いな。」
「うん…」
「今度会ったら、文句言えば?」
「うん…」
それ以上会話はなかった。
二人は離れる事なく、ただ時間だけが過ぎていった。
「送っていく」と朱月に言われ、屋敷前まで来ると、千里が出てくる。
「千里さん!」
白雪は驚く。
その顔は赤く腫れていた。
「誰がやったんですか!?
その前に、手当て受けましたか?」
「え?」
白雪の剣幕に千里はたじろんでしまう。
「白雪、藤塚が困ってる。」
「でも、頬が腫れてて…うちの誰かに叩かれたんじゃぁ…?」
「ち、違いますよ!
……父に叩かれました…。」
千里は俯いしまう。
「僕、華道に専念したい。って言ったんです。…白雪さんに言われた事、嬉しくて。」
「へー。」
朱月は少し羨ましい表情で、二人へ交互に視線を動かす。
「それでなんで叩かれるんですか!?」
やはり白雪の怒りは収まらない。
「それは…白雪さんと結婚して、組長になれと…」
「……せっかく千里さんがやりたい事言えたのに…。」
「俺は、藤塚には組長無理だと思うけどな。」
朱月の言葉に千里が反応する。
「それは、ライバル一人減らしたいだけなのでは?」
「――なっ!」
「別に僕は結婚したくないとは、言ってません。」
意地悪く千里は横を向くと、少し顔を赤くした白雪と目が合う。
「そうだ!白雪さん。休みの日一緒に出かけませんか?」
「え?あ、はい。」
千里の気迫に押され白雪は返事をする。
「場所は僕が決めますね!」
「俺も行く。」
朱月が横から入ってくる。
「ライバルなら、邪魔しないとな。」
「良いですよ!受けて立ちます!」
火花を散らす二人に、白雪は困惑していた。
(最近みんな、積極的じゃない?
心臓がもたないよ…。)
つづく。




