20話 待ち受ける者
本作はフィクションです。
登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
物語としてお楽しみいただければ幸いです。
「パパはまだ戻ってないの?
話があるのに…。」
暁斗に尋ねる。
「はい…呂唖と一緒なんですけど…
電話は電源が入っていなくて。呂唖も。」
「まだ仕事中って事?
パパならわかるけど、呂唖くんまで?」
暁斗と途方にくれていると、組員がバタバタと走ってくる。
「お嬢!大変です!今、家の電話に…
――遠藤ってやつが…」
「っ!?
遠藤って、芽莉ちゃんの件の?」
「親父さんを人質にした。と…。」
「なんだと!?」
暁斗が声を荒らげる。
「……。どういう事?呂唖くんは?一緒なんでしょ?」
「詳しい事はわからなくて…。
お嬢に――来いと。」
白雪と暁斗は息を呑む。
「そんなとこお嬢に行かせられない!」
暁斗は直ぐさま反対する。
「良いよ。行く…。」
「しかし!」
「私が“組長の娘”だって、向こうに知られたって事でしょ?
ここで話さないと、また同じ事が起きるわ。」
「みんなを集めます。」
組員が動く。
「少人数で、俺も行く。残りは屋敷を守れ。」
暁斗が指示を出す。
言われた住所は、使われていないビルの一室。
白雪は緊張した顔で、暁斗を先頭にドアをゆっくり開ける。
そこには――縛られた組長。と遠藤。
そして……呂唖が居た。
「パパ!…呂唖くん?」
困惑気味の白雪に、暁斗が続く。
「呂唖!お前やっぱり…。」
「来たね。」
白雪が来たとの確認すると、すっと立つ。
「……組長。俺が誰だかわかってますよね?」
「あぁ。灰月誠司の息子だろ…ちっせえ時は良く屋敷に連れて来てたからな。
…こんな事した理由もわかってる。
お前、殺気丸出しなんだよ…。」
少しの笑みを含んで言う。
「はは。そりゃあ、あなたは父さんの敵なんで!」
「呂唖くん…今までのウソだったの?」
今にも泣きそうな白雪に、呂唖が応える。
「白雪が俺を好きにさせて、傷つけてやろうと思った。でも…」
白雪への視線は外さず続ける。
「俺は…白雪を好きになった。本気で…。
でも……同じくらい、憎くてたまらない。」
呂唖の目に涙が浮かぶ。
「お嬢さま。組長助けたかったら、俺と結婚してくださいよ。」
低俗な笑みを浮かべながら、遠藤が言う。
「遠藤さん、ごめんなさい。お断りします!」
「あぁっ!?透かしてんなよ!」
白雪に飛びかかって来た遠藤を、組員がねじ伏せた。
「下っ端が!お嬢に触れると思うなよ!」
あっという間に遠藤は外へ出された。
「…組長。なんで父さん殺したんですか?
父さんは弱いから、抗争には行かないってよく言ってた。なのに、あの日急に出かけて行った。」
銃を取り出し、組長に向ける。
「呂唖くん!辞めて!」
「動くな!俺、本気だから。」
そう言う目は僅かに揺れている。
「…あの日、抗争へ連れていく組員が足りなくて、誠司を連れて行った。」
「そんな、理由で…」
「違う!」
一人の組員が声を上げた。
「よせ!」
組長が制止する。
「……。あの日、お嬢が誘拐されたのもあって、組はピリピリした。組員が足りなくて、組長が行こうとしたところに、灰月が、」
――『組長が行くなら俺も行く。』
「て、言ったんだ。」
組長は俯く。
「止めてくれれば良かったじゃないか!」
呂唖が声を荒らげる。
「バカヤロウ!俺らは組長のためなら、体張るんだよ!」
暁斗は更に大きく声を出す。
「組長は止めた!お前と母親がアメリカに行くのを、灰月も行け。って。足洗えって言ってたんだよ。」
「もういい。俺が屋敷に居れば、誠司は死なずに済んだんだ…。」
「当時、若頭の組長が出ていくのは当然です。」
「くっ…うあああ!」
発狂する呂唖は引き金を引いてしまう。
――パン!
「うっ!」
組長の足に血が滲む。
「パパ!」
白雪は父親を背に、両手を広げて呂唖と向き合う。
「っ!全員動くな!今度は白雪を打つぞ!」
呂唖は白雪に銃口を向ける。
「お嬢!」
「お嬢、戻って!」
みなが白雪の所へと、動こうとした時。
「動かないで!誰もよ!
暁斗、下がりなさい!」
「お嬢…。」
白雪の目は真っ直ぐ呂唖を捉えているが、一帯の空気を変えてしまう、それは会長と同じようだった。
「会長の素質があるのは、俺じゃなくて、白雪って事か…。」
そして誰も動けなかった。
つづく。




