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白雪と7人の極道たち  作者: 白 月虹


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2/5

2話 7人の婿候補

本作はフィクションです。

登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

物語としてお楽しみいただければ幸いです。

「ただいまー。」


大きな門をくぐると、広い庭に池が見える。


「お嬢!おかえりなさい!」


庭を掃除している黒いスーツの男たちが、挨拶をしてくる。


「うん。ただいま!」


白雪が笑うと、ほんの一瞬男たちの動きが止まる。


慌てて視線を逸らす者もいれば、耳まで赤くなる者もいた。


(……またこうなってる)


白雪は気づいているのかいないのか、そのまま門の奥へ歩いていく。


「お嬢。組長がお待ちです!」


「え?何改まって…」


白雪は父親が待つ部屋の前へ行くと、男たちが襖を丁寧なに開ける。


「何?仰々しいなぁ…」


白雪は一歩入ると、嫌な予感がして、後ろへ下がろうとする。

が、もう襖は閉められている。


「おかえり、白雪。」


「な、なんですか?パパ。」


「白雪、20歳になるまでに、この7人の中から、婿を選びなさい。」


父の後ろに立つ男たちが、一斉にこちらを見る。


そこには――7人の男が並んでいた。


挿絵(By みてみん)


「……えっ!?」


白雪は驚きのあまり、声が裏返ってしまう。


「そんな!20歳で結婚しろって事!?」


「行く行くは、白雪がこの近藤組を継いでいくんだ。婿には私の下に着いて、色々覚えて貰わないといけないしね。」


「ちょっと待って!

そんなの、急に言われても…。」


「白雪。これは組全体で決まった事だ。」


受け入れられず、白雪は大きく襖を開けて出ていく。


部屋に戻った瞬間、張り詰めていたものが一気にほどけた。


「……無理……」


ぽすん、とベッドに倒れ込む。


頭の中に浮かぶのは、ずらりと並んだ男たちの姿。

あの視線、あの空気――思い出すだけで息が詰まりそうになる。


その時コンコン、と扉がノックされた。


「……誰?」


少し警戒しながら声をかける。


「俺。」


その一言で、胸の奥がわずかに緩んだ。


「その声……碧?」


扉を開けると、そこには見慣れているはずなのに、少しだけ知らない顔をした幼なじみが立っていた。


「久しぶり、白雪。」


「ほんとに……久しぶり……」


三年ぶり。

変わっていないようで、確実に変わっている。


背も、声も、視線も――少しだけ大人になっている気がした。


「入っていい?」


「う、うん……」


碧は当たり前のように部屋に入り、迷いなく白雪の隣に腰を下ろす。


距離が近い。

昔からそうだったはずなのに、なぜか少しだけ意識してしまう。


「顔、青いけど。大丈夫?」


「……うん。碧も、居たね。」


「そりゃね。夕霧組組長の息子だし。」


あっさりと返されて、白雪は思わず顔をしかめた。


「何あれ……急すぎるでしょ……!

7人から選べって、意味わかんない……!

みんなだって、嫌でしょ!?」


溜め込んでいたものが一気に溢れる。


静かに手が伸びてきて、優しく頭を撫でられる。


「俺は、嬉しいけど?」


「えっ?」


「……他の奴らと、無理に仲良くしなくていいし。」


ふと、声音がわずかに変わる。


「俺がいればいいでしょ。

急に引っ越したから、白雪が寂しい思いをしてるんじゃないかと心配だったんだ。」


「う、うん…驚いたけど…」


優しいのに、どこか逃げ場を塞がれるような感覚。


「……碧?」


「なに?」


ニコリと微笑む碧の顔は、優しさと危うさが混じっていた。


それでも、さっきまで感じていた恐怖は、確かに少し薄れていた。


「じゃあ、また来るね。」


「うん……ありがと、碧。」


扉の前で軽く手を振ると、碧は名残惜しそうにしながらも廊下の向こうへと消えていった。


その背中を見送ってから、白雪は小さく息をつく。


「はぁ…。これからどうしよう。」


ぽつりと呟く。


七人の中から、一人を選ぶ。


そんな現実が、じわじわと迫ってくる。


(……普通に、過ごしたいだけなのに。)


その願いは、もう叶わないのだと。


白雪は、まだ知らなかった。



つづく。

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