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白雪と7人の極道たち~この中から婿を選べと言われても嫌です。~  作者: 白 月虹


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14話 追憶

本作はフィクションです。

登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

物語としてお楽しみいただければ幸いです。

祖父はゆっくり語り出す。


「…あれは十年前、白雪が六つの頃。

当時は統制が甘くて、抗争が多かった。」


「そして、お前は誘拐された…。」


「……覚えてない…」


白雪は目を丸くする。


「当時、お前の父親は血の気が多くてな。」


少し躊躇しながら続ける。


「お前の母親...沙苗さんを亡くしたばかりで、余計気が立っていたんだ。」


――『白雪まで居なくなったら…俺は!』


「そう言ってあいつは、俺の言葉を聞かずに単身、敵地に乗り込んだ。」


「ママ…パパ…」


「強かったからなぁ…あいつ自体、さほどの傷も無く制圧していった。」


「――だが、」


「…流れ弾が、動けない白雪の方へ向かった…」


「えっ?私…?」


「あぁ。当時、敵側の下っ端だった暁斗が…

覆い被さるように、庇ったんだ。」


白雪は思い切り振り返る。


「うそ…。」


暁斗と目が合う。

慈しむような瞳。


会長は続ける。


「暁斗の肩に銃弾が当たり、血が吹き出た。」


「白雪は、倒れ込む暁斗に声を掛け続けていたな。」


「――肩の傷…その時の?」


白雪の目に涙が滲む。


「あの時と同じ顔ですね。

大丈夫と言っているのに、ずっと心配してくれて…俺が縄で縛ったのに…。」


沈黙を破るように、少し笑みを浮かべた会長が続けた。


「そこからだな。あいつが白雪に益々弱くなったのは。そして、暁斗は命の恩人だ。と言って、自分の傍に置いた。」


「俺は…小さな娘を人質にするやり方は嫌でした。」


目を閉じ、少しの笑みを零す。


「お嬢が泣いて心配してくれたのが嬉しくて…お傍に居たいと思いました。」


暁斗が、自分の胸の内を話すのは初めてだった。


「その後白雪は、暁斗に触れた手が血まみれなのを見て、意識を失ったんだよ。」


「…そんな!私っ。」


暁斗に強く抱きついた。


「ごめんなさい。全部忘れてて!」


「お嬢!」


硬直する暁斗。

その小さな背中を抱きしめ返せば、全て手に入るかもしれない。

そう思った。でも、出来なかった。


(俺のせいで、十年間苦しい思いをしたんだ。)


しばらく迷った末――

暁斗は、そっと背に手を置いた。

ゆっくりと、確かめるように叩く。


それ以上は、できなかった。


「暁斗…お前は本当に、そんな役回りだな…」


会長は、暁斗に哀れな目を向けていた。


「良いんです…俺は、これで十分なんで…」

(俺がお嬢に選ばれる事はない。なら、一番近くで守りたい…。)


白雪の涙が止まるまで、暁斗は動かなかった。


━━━━━━━━━━━━━━━


翌日。

学校が休みもあり、白雪は公園のベンチに一人でいた。


(はぁ…なんか色んな事がありすぎた…。)


空を見ていると、影が落とされる。

驚いて後ろを振り返ると、そこに立っていたのは、朱月だった。


「朱月さん!驚いた…。」


「何やってんの?」


「色々考えてまして…。」


朱月はしばらく黙ったまま、白雪を見つめる。


「あのぅ……」

(暁斗より何考えてるかわかんない…。)


「…車。乗って。」


「え?いえ、私まだここに…。」


「早く。」


「うぅ、はい…。」


訳もわからず、白雪は朱月の車に乗る。


「どこ行くんですか?」


「……。」


「私に、興味ないんじゃなかったです?」


「……。」


(…返事がない!なんなのもう!)


そんな風に考え事をしていると、車が停まる。


「着いた。降りて。」


「あ、はい。」


そこは――街を見渡せる高台の公園。


「わぁ〜!すご〜い!」


「そこ、座ってて。飲み物買ってくるから。」


ベンチへ促される。


「風も気持ちいい〜!」


「それ、独り言?恥ずかしくないの?」


「っ!」


すっと出された飲み物を見て、白雪はキョトンとする。


「サイダーって…。」


「嫌いだった?」


「いえ、飲めますけど…普通お茶とか…。」


「あー、女の飲みそうな物わかんねーもん。」


興味なさそうに、朱月は缶コーヒーを飲む。


「だからってサイダー…ぷっ、あははは!」


「…あんた、笑ってた方が良いよ。

その方が、周りの人たちは楽しそうだ。」


思いがけない言葉に、白雪の顔は赤くなる。


「…ありがとう、ございます。」


「それと、俺に敬語使わなくていいよ。

いちお、あんたの方が立場的には上だし。」


「はい…って!その理論なら、あなたは私に敬語使うべきじゃない!?」


「…あー、今更?」


見つめ合う二人の間を、風が通り過ぎる。


「ここ、俺が一人になりたい時に来る場所。

考え事したくなったら、連れてきてやるから言いな。」


「良いの?大切な場所…。」


「…良いよ。」


挿絵(By みてみん)


柔らかく笑った朱月の顔に、白雪は目が離せなくなっていた。

そうしてしばらく二人は、街を眺めていた。



つづく。

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