13話 謝罪とその先
本作はフィクションです。
登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
物語としてお楽しみいただければ幸いです。
碧の事を聞こうと、白雪は父親の部屋へ向かおうとしていた。
「お嬢。お待ちください。」
「なんで?」
暁斗が白雪を制止する。
すると…。
「この度は――申し訳ございませんでした!」
ドアの向こうから聞いた事のある声。
白雪はノックもせず、開けてしまう。
「…夕霧のおじさん。」
「白雪さん!」
「白雪!」
「……。」
顔が傷だらけの碧と父親が、土下座をしていた。
「やめてください!
私、怒ってません!おじさんも、碧も、椅子に座って!」
「しかし…。」
「……。」
恐縮している二人を横目に、白雪の父親が口を挟む。
「白雪、辞めなさい。
お前には関係ない事だ。」
「っ!?関係ない?
私は当事者よ!何を言ってるの!?」
「今は大人の話だ。」
「……パパなんて嫌い!!
いつも勝手に決めて……私の気持ち、何も聞かないで!私が良いって言ってるんだから、いいの!!」
部屋は、張り詰めた沈黙。
父親は何も言わず、ただ白雪を見つめる。その視線は厳しいまま――だが、わずかに揺れていた。
「……はぁ。」
小さく息を吐く。
「……分かった。」
ぽつりと零れたその一言に、空気が緩む。
「夕霧。下がって良い。」
「……この度は――」
「良い。謝罪は聞き飽きた。
白雪が許してるなら、俺は…もう何も言わない。」
「ありがとうございます!ほら碧。」
「……ありがとうございます。」
碧は一度だけ顔を上げ――すぐに視線を落とした。
そして父親に続き、静かに部屋を後にする。
「パパ…。ありがとう。」
父親に笑顔を向けると、暁斗と一緒に碧を追いかけた。
「夕霧のおじさん!碧!」
「っ!」
俯いたままの碧。
その拳は、わずかに強く握られる。
「あの、碧…学校休んでたから…傷、酷いのかなって。」
「傷は…大丈夫。……お前は?」
「私は平気!どこも痛くないし!
…学校来るよね?」
「……。」
「白雪さん、本当は家に戻そうと思ってたのですが、親父さんが
『白雪が気にするから、そのまま卒業しろ』って言ってくれたんです。」
「そう…良かった。」
ほっとする白雪。
「白雪さんには、今後近寄らないようにしますので。」
碧の父親は頭を下げる。
「それだと、お嬢が気にします。」
暁斗が堪らず口を挟んだ。
「はい。気にします!」
白雪は笑顔で答えた。
「……。」
碧の父親はもう一度頭を下げる。
「それにしても、親父さんも白雪さんには頭が上がりませんね。
やっぱり"あの件"があったからでしょうか。」
気が緩んだ碧の父親がそう言うと、暁斗が強めに制止する。
「夕霧さん!」
「おっと…すみません。では我々はこれで…」
そう言うと二人は、足早にその場を後にした。
「ねぇ…暁斗?」
「はい…。お嬢、俺は何も…。」
暁斗が何も言わないのはわかっている。
白雪は父親の部屋へ戻った。
「お嬢。…お嬢?」
暁斗が制止を試みる。
白雪は止まらず、ノックもそこそこに部屋を開けた。
「パパ!」
「っ!?白雪?」
「お話があります。」
「お嬢!」
暁斗の声は届くことはなく、白雪はそのまま踏み込んだ。
「"あの件"で、パパが私に頭が上がらない。ってなんの事ですか?」
「な、なんの事だ?…暁斗?」
「夕霧さんが…多分十年前の…」
「っ!――それは。」
廊下まで響いた声。
「おい。廊下まで聞こえてるぞ?」
低く唸るように声。
その一言で空気が一変する。
振り返ると――会長が立っていた。
口元には、わずかな笑みを浮かべて。
「親父!」
驚く父親に、何も気にする事なく椅子に座る。
「…会長。」
暁斗が制止するように、後ろから声をかける。
「もう、頃合いじゃないか?」
「しかし…」
「白雪はそのせいで苦しんでいる。
親としてそれでいいのか?」
父親の踏み切れない様子に、会長が諭す。
「俺は…白雪に嫌われたくない。」
「パパ?」
意味がわからず立ち尽くす白雪。
「親父が話してくれ。」
そう言うと、父親は白雪に目を向けることもできず、そのまま部屋を後にした。
「おじいちゃん?」
「座りなさい。」
「…はい。」
白雪が椅子に座ると、暁斗は後ろに控えめに立つ。
そして祖父は語り始める。
つづく。




