11話 不穏の正体
本作はフィクションです。
登場する団体・人物はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
物語としてお楽しみいただければ幸いです。
「お嬢がいなくなった?」
暁斗の声が低く落ちる。
「楽屋に入ったはずなんだ!でも――」
風我の言葉を遮るように、暁斗が舌打ちした。
「……来てないんです。」
千里が言う。
白雪の父親もすぐに人を動かし始める。
「みなで探す。会場周辺ももう一度当たれ。」
その一言で、空気が一斉に動いた。
――数十分後。
「……見つからない。」
焦りが滲む声。
暁斗の苛立ちは、もう隠しきれていない。
「俺はこっちへ。」
碧が静かに口を開いた。
「心当たりある場所、少し回ってみる。」
「……あぁ。」
風我は短く頷くき、碧はそのまま背を向ける。
「何かあったら連絡する。」
軽く手を上げて、その場を離れた。
――けれど。
その背中は、どこか落ち着きすぎていた。
辺りが暗くなる頃、白雪の家から、さほど遠くないマンションの一室。
白雪は薬が切れて目を覚ます。
そこに居たのは――
「……碧?」
「白雪。目が覚めた?」
「あれ?私、千里さんの楽屋に…」
碧の近くに寄ろうとした時、片方の足が重く感じた。
見ると、鎖の付いた足枷が、ジャラっと鳴った。
「――っ!?」
碧に嫌悪の目を向ける。
「何これ!外してよ!」
「…なら、俺と結婚しようよ。」
「…碧……。」
「俺、小さい時からずーっと白雪が好きだったんだよ?」
碧がジリジリと白雪に近寄る。
「なのに、親父さんがうちのおやじに地方を仕切れ。って…お前も見てこいって…。
そりゃ逆らえないでしょ?」
白雪の足に、指を這わせる。
「――っ。やめっ!」
「うちは所詮、近藤組の傘下!
でもここで認めて貰えれば、白雪と結婚出来ると思ったんだ!」
碧は白雪の頭を掴み、唇を合わせる。
「――!」
自由な手は、思い切り碧を押した。
「小さい頃は、キスしたじゃん…」
「小さい頃とは…関係も意味も、今は違う…」
「…そうだね。」
押された距離を縮める碧。
「親父さんは何考えてるんだ?
7人も婿候補なんて!俺が、居るのに…」
「やめて…碧…」
白雪に馬乗りになると、胸元のボタンを引きちぎる。
「っ!」
必死に抵抗するが、碧に組み敷かれてしまう。
顕になる胸元に、顔を埋める碧。
「ごめん…でもこうするしか…」
その声は震えていた。
スカートを捲し上げた瞬間――
ドアが蹴破られる。
暁斗は、一瞬思考を停止する。
風我が踏み込んで、碧に飛び付いていた。
「…てめぇっ!」
碧と風我がベッドの下へ落ちる。
暁斗は我にかえると、胸元が開いた白雪に自分のジャケットを掛けた。
鈍い音が響く。
「――っ。風我さんやめて!暁斗、辞めさせて!」
暁斗は、白雪に見せまいと壁になる。
「暁斗!ねぇ!」
白雪の足枷の鎖が鳴る。
「…俺だって!本当は殴りたい!」
「っ!」
暁斗が声を荒らげたのは初めて。
白雪は、暁斗の胸に縋り泣くしかなかった。
つづく。




