↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

6話 反省会

 影が薄いとは言うが、今までの出来事を例とするならば、そんな言葉では言い表せない程だ。


「だから…1人でお買い物できないんだぁ〜」


 先程までの重々しい口調と違い、もう既に諦めているかのように、テーブルに突っ伏している。

 こんなに可愛い子に気づけない人がいるなんて、人生の10割以上損しているに違いない。


「でも、もうどうでもよくなったんだ」

「…と言うと?」


 俺の質問に口角を上げながら、いじらしい笑みを浮かべる。


「だって、私に気づいてくれる人がま(・)た(・)1(・)人(・)増えてくれたからっ」



 昨日の雛実ちゃんとのデートは、あの笑顔を見てから記憶が無い。そういえば、雛実ちゃんの年齢を聞くのを忘れていた。早いうちに聞いておかなければ、一線を超えた時、どんな死刑を執行されるか分からない。


「あぁ、またデートしたいなぁ」


 今はまさに大学の講義を聞いているのだが、右耳から左耳へと最速で流れていく。


「じゃあ講義はここまでで、出席は今から渡すミニレポートの提出でつけるからな〜」


 まずい、今日は朝からバタバタしていたため、パソコン以外を持ってきていない。こんな時に限って、知り合いも周りにいない。いや、1人いた。


「月見里さん、ペン貸してくれない?」


 前に座っていた月見里さんの肩を叩くが、無言で肩を払われる。


「…愛妻弁当は作ってくれたのに」

「っそんなもの作った覚え無いわよ!」


 月見里さんの怒号が教室内に響く。しかし、清楚そうに見える月見里さんが叫ぶとは思わないのか、またすぐに静寂な空気になる。


「あのねぇ…私、大学では結構大人しめな立ち回りしてるんだから」


 ほのかに頬を染める月見里さん、とても美人だ。


「あんた、ちゃんと話聞いてるぅ?」


 顔は笑顔だが、怒りマークが月見里さんの髪を埋めつくしている。


「あんたとはたまたまっ!部屋が隣だけの他人!分かった?」


 周りに聞こないようにか、至近距離で怒りを露にするが、いい匂いと顔面が強すぎること以外何も入ってこない。


「とりあえず、ペン貸してくれない?」


 月見里さんは自分の分を書き終えたのか、こちらにペンを投げつけてくる。


「月見里さんありがとうっ」

「…死ね」


 顔面も強いが言葉も強い。レポートをどうにか書き終え、借りたペンを月見里さんに返しに行くが、どこを回っても姿が見えない。



「てことで、浠柑から渡しといてくれ」

「浠柑のこと雑に使いすぎじゃない?まぁ、この後ゼミだから別にいいけどっ」


 喫煙所にいた浠柑にペンを渡し、軽い雑談を終え、俺もゼミに向かった。



 家に帰る途中、颯介の誘いで前回の合コンの反省会をするため、オカ研メンバーで居酒屋へ足を運んだ。


「集まっていただきありがとうございます。不肖ながら、私門前颯介が乾杯の音頭を取らせて頂きます」


 長ったらしい音頭に浠柑は、雑に『全員惨敗〜』と勝手に飲み始める。


「あんたらが浠柑のタバコ止めなかったら、上手いこと彼氏出来てたかもなのに」


 灰皿にタバコを押し付けながら、浠柑はこちらをギロリと睨む。


「いや、まず存在がヤニ臭いからバレてんだろ」


 当たり前だが颯介に怒りの鉄槌が下された。


「でもまぁ、浠柑を止める以前に潰れちゃダメだろ」

「だって!あんなに可愛い子が目の前にいたら、シラフじゃ保てないだろ!」


 情けない発言だが、理解できてしまうのが悔しい。


「浠柑は可愛いからいいとして、2人とももっと自分磨きしな?」


 上から講釈を垂れてくる浠柑は、酔いが回ってきたのか辛辣な意見を述べてくる。


「まず颯介は〜自信無さすぎ!シャキッとしてたらそこそこなんだから〜」

「え、浠柑…俺の事…」


 再び鉄槌が下された。


「そしてぇ幽太!あんたは女性に対して距離感下手!霊華ちゃん言ってたんだよ?」


 ゼミでペンを返す際に話したのか、だいぶ語弊がある切り取り方をされている。


「浠柑、言っていいことと悪いことがあるんだよ」


 颯介の優しさが逆に辛い。


「そういう浠柑だって、口悪いしヤニカスだし、胸(・)な(・)い(・)じ(・)ゃ(・)ん(・)か(・)!(・)」


 俺も酔いが遅れてやってきたのか、思わず口が滑る。


「幽太、言っていいことと悪いことがあるんだよ」


 これは怒りの鉄槌コースだと思い、顔を強ばらせる。しかし、その制裁は中々やってこない。


「…うっさい」


 浠柑は新しくタバコに火をつけると、明らさまに拗ねててしまう。

 颯介と目配せし、浠柑を褒める方向にシフトする。


「そういや浠柑、前髪切った?やっぱり浠柑はどんな髪型も似合うな〜」

「切ってないし」


 またタバコが1本消える。


「なんか浠柑痩せたか?いつもより、華奢に見えるぞ?」

「痩せてない。むしろちょっと太った」


 このままではタバコが何本あっても足りない。


「どうする颯介」

「ああなった浠柑は、カートン1つじゃ機嫌直んないぞ」


 金欠の財布から、カートン代が消えるのはだいぶ痛い。だがしかし、機嫌を直して貰わなければ合コンが開かれることもない。つまり、童貞を卒業出来ないまま大学を卒業と言う、矛盾のような未来になってしまう。


「他に浠柑のいいとこなんて、普(・)通(・)に(・)可(・)愛(・)い(・)ぐらいしかないしな」

「っか、可愛い?」


 颯介の言葉に、浠柑はこちらに視線を戻す。


「俺、変なこと言ったか?浠柑って、タバコ抜きにすれば坂道系に居そうなタイプだろ?」


 お前、そういう事を普通みたいに言うなよ。ほら見ろ、浠柑が顔面真っ赤になってるぞ。


「へへっ、やっぱり浠柑って颯介から見ても可愛いんだぁ〜?」


 こうなったらこうなったで面倒臭いが、浠柑は笑っている方がいい。その夜は、タバコの煙が店内を埋めつくした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。