日本古典10作
我が国の古典文学から十作を選んでみた。我が国の古典文学にも、奥深い趣のあるものがたくさんある。翻訳もので読んだものもあるが、出版の関係から、がんばって古文を原語で読んでみたものもある。
本のスタンダードとしては選考基準があまいが、そこそこの娯楽性を持つものを選んでみたつもりである。ちょっと難易度は高いが、我が国を知るためには読むのに挑戦するのもよいだろう。
竹取物語
とりかえばや物語
今昔物語集
枕草子
堤中納言物語
信長公記
おくのほそ道
好色五人女
東海道中膝栗毛
南総里見発見伝(白井喬二訳 抄訳 全2巻)
作者不詳「竹取物語」
平安時代に成立した幻想恋愛小説である。有名なかぐや姫の物語である。五人の求婚者をすべて袖にして、帝すら振り、月へ帰るとは、ずいぶん、お高い恋愛小説である。しかし、逆に、高い完成度でその美しさを書き上げたといえるだろう。
作者不詳「とりかえばや物語」
平安時代の恋愛小説である。兄妹があり、兄は女装をして宮廷で出世して、妹は男装して宮廷で出世する物語である。ジェンダーの問題を平安時代に取り上げた問題作だといえる。
作者不詳「今昔物語集」(岩波文庫 全4巻)
岩波文庫の「今昔物語集」は、良いものを抜粋して編集したものである。本当はもっとたくさんある。一ページから三ページくらいの短編の集まりが千篇以上あり、平安時代の幻想文学になっている。異変に遭遇したり、鬼や天狗などの怪物に襲われたり、退治する話が多く、実話を幻想味に仕立て上げたものである。幻想要素のない短編も、人情味や殺伐した戦いがあり、読んで刺激になる。
清少納言「枕草子」(全2巻)
平安時代のエッセイ集。筆を盗まれて困っていたり、銀河や恋愛のことなど、なかなか面白いエッセイだ。私は源氏物語よりこちらをとる。勝とうとしてはいけない。負けようとして勝負するべきであると清少納言はいう。私には耳が痛いところだ。
堤中納言「堤中納言物語」
短編集なのだが、面白い仕掛けがしてある。虫愛ずる姫君の話だけでなく、全話、興味深く読める。帝の下ネタが読めたり、美人姉妹が登場したり、なかなか楽しい一冊である。
太田牛一「信長公記」
信長の伝記。前半は、美濃の国盗りをするところまでだが、後半、信長の人生を書き継ぎ、本能寺の変で死ぬところまである。途中で、天下人になっていて、天下人になった信長の混乱する政治がうかがえる。歴史書であるが、非常に楽しく読める。
松尾芭蕉「おくのほそ道」
紀行文。うわさでは聞いていた。松尾芭蕉は忍者だったと。そして、大人になって実際に「おくのほそ道」を読んでみると、どっからどう読んでも、忍者にしか読めないのである。松尾芭蕉は、江戸時代の幸せに生きた文化古典だといえる。俳句の意味も、忍者だったことを思えば、意味が変わってくるものだ。
井原西鶴「好色五人女」(河出文庫)
「好色五人女」「好色一代女」「西鶴置土産」の三編からなる。「好色五人女」は五つの短編からなる。女狂い、色情狂を肯定する西鶴の視点で、まちがった若い男として出てくるキチゲエは、私は、現代の観点からしてみると格好いい男であり、魅力的だと思う。キチゲエということばは、「好色五人女」に準拠している可能性があり、ぜひ我が国の文化を知るために読むべきである。
十返舎一九「東海道中膝栗毛」
東海道の楽しい旅になるはずが、ヤジロベエは常識とはちがっていたという話。禁書に近い危険文書である。我が国の長い歴史の中にはトンデモないことが起きるもので、ヤジロベエ問題は頭の痛い問題である。
曲亭馬琴「南総里見八犬伝」(白井喬二訳の抄訳 全2巻)
仁義礼智忠信孝悌の八つの宝玉を持った八犬士がさまざまな苦難を乗り越えていく。親の八房の活躍の場面が長く、伏姫と結ばれるのも獣婚だなあと思い、手放しでは喜べないが、八犬士の活躍する場面になると確かに楽しい。




