一般書(日本)15作
我が国の一般書について。楽しい本がとてもたくさんある。
最後の二冊、「新・物理入門」と「化学の新研究」はあまりにも難しいため、現役受験生以外に読むものはいないかもしれないが、長いこと文系知識に甘んじ、高校理系の知識を知らなかった私の後悔のために入れておいた。高校物理や高校化学は一度は目を通しておきたいところだが、難解なものに向かう気力のない人は読まなくてよいです。
科学の方法
戦時期日本の精神史
食と日本人の知恵
太陽の法
間違いだらけの自衛隊兵器カタログ
天使の記号学
悪口の技術
もてない男
理性の限界
フォン・ノイマンの哲学
グノーシス(筒井賢治)
よくわかる祝詞読本
重力と力学的世界
新・物理入門
化学の新研究
中谷宇吉郎「科学の方法」
科学実験の精度は六桁であると指摘した1958年の科学哲学の本。砲丸を地上に落とす実験も、厳格に測定すると、毎回、六桁の精度を越えては一致しないのだ。科学とは、再現可能性のあるものの法則を見つけて、それを利用して道具を作ることである。そのような科学とは何かというものがこの本を読むと見えてくる。
鶴見俊輔「戦時期日本の精神史」
第二次大戦についての良書。明治維新で我が国が行ったことは何なのか。それは小学校を五万軒建てたことである。それにより、江戸時代の識字率が向上して、明治時代にはイギリスの識字率をうわまわることができた。朝鮮併合において、朝鮮から徴用した徴用工と従軍慰安婦の人数についても書いてあるが、この数字を歪めようと激しい政治闘争の中に巻き込まれてしまうのだろう。
小泉武夫「食と日本人の知恵」
和食の記述が美味しい。その和食を食べたことがあれば、その美味しさが頭に浮かび、口の中に生つばがたまって来る。とても美味しい和食の文章がつづく。これほど美味しい食のエッセイはめったにない。
大川隆法「太陽の法」
東大法学部のエリートが思いつくままに宗教本を書いてみたら、大ベストセラーになり、その資金をもとに新興宗教の教祖になって一生、宗教談義を出版していた。スピリチュアルの大家である大川隆法だが、最初の一冊はなかなか面白い。三次元、四次元、五次元とか、一度は中二病になって考えてしまうものだが、その次元考察のよくできたものが書かれている。
日本兵器研究会編「間違いだらけの自衛隊兵器カタログ」
自衛隊の兵装について批判的だった1995年の本。世界中の兵器を紹介して、近代兵装をさまざまな視点から検討していた本。戦車、装甲車、戦場トラック、対空ミサイル設備、高射砲、自走砲、対地ヘリ、これらの区別がつくだろうか。つかなければ、1995年前後の地上戦ではあまり役に立てない。海上装備も、航空装備もあるぞ。これらを一度、理解したい人におすすめ。
山内志朗「天使の記号学」
天使について、語源をもとに正体を探る本。著者は、スコラ哲学の哲学者である。天使があまりにも美しく、とても魅力的だから、嬉しくなる本。天使についての学術的知識は確かなものであり、たくさんの言語を飛びかって、天使の語源に迫る。天使の姿はいつから天使の姿になったのだろうか。誰が何のためにあの姿を設定したのか。
ビートたけし「悪口の技術」
口述筆記のエッセイであるので、分野をまちがえたかもしれない。有名タレントの57歳の時の本だが、けっこう知的な分野、ニーチェだとか政治家先生だとかを冗談をまじえて知的に風刺しているのだ。何十ヵ所と笑えるところがあり、全体の完成度も高い。タレント本が高く評価されるのは本職の作家たちは落ち込むかもしれないが、面白いものは面白い。
小谷野敦「もてない男」
もてない男についての評論である。もてない男というものを鋭く理解しており、共感を覚える。大学生になる頃に、異常性癖といえるものが出始めるのは、これは社会設計の参考にせざるを得ないのではないか。そのまま、無情に年齢がすぎていくのは悲しいものである。もてない男はとても阿呆なものだから。
高橋昌一郎「理性の限界」
対話式の哲学入門書である。対話篇になっているので、とても読みやすい。愉快でなかなか笑えるのだが、それでいて、哲学的に深いことを考えさせられる非常に良い本である。グールドの不完全性定理は非常に難解で、すべてを明瞭に理解するのは難しいのだが、それをきっかけに、わからないことにどう対応するかという哲学の姿勢を学べる気がする。
高橋昌一郎「フォン・ノイマンの哲学」
たくさんの有名な科学者たちがでてきて、とてもたくさんの面白い逸話が紹介されている。有名な科学者たちの世界がどんなものだったのか知りたい人には、この本を強く薦めたい。私はもともと、ノイマンという人物に疑いを持っていた。数学、経済学、量子力学、コンピュータ科学という多彩な分野で第一線級の業績のあったノイマンの業績ははたして本当だったのか、不思議だった。詐欺の疑いを持っていた。この本は詳細な事実をもとに、それが事実であったことを記している。なぜ、そのような多彩な業績ができたのか、少しは想像できた。
筒井賢治「グノーシス」
初期キリスト教会における異端グノーシス思想を三種類、紹介している。グノーシスの本質が何なのかは、明確に語ることはできないが、「知識」を意味する。イエスはグノーシス主義者だったといううわさがある。キリスト教にとってどうだということは置いておいて、この本で語られる神々の神話はとても感動的で面白いのである。
瓜生中「よくわかる祝詞読本」
日本神道がどのようなものかを伝えるには、今まで読んだ本の中でも最も参考になった本である。統一された教義がないという日本神道の本なので、記述の構成はバラバラで重複などが激しく、楽しく読むにはちょっとコツがいるだろう。しかし、日本神道、神社関係の格好いいことばを探すにはとても良い本で、儒教でも仏教でもヒンドゥー教でもキリスト教でもイスラム教でもない日本の神を知るには極めておすすめな本である。
山本義隆「重力と力学的世界」
天動説から地動説が誕生して、物理学が誕生していく16世紀~19世紀ヨーロッパの近代科学の本を何十冊と読んで、それをまとめてくれた本。現代は科学の時代であり、近代科学の礎となった黎明期の物理学者たちを詳しく知るには最適な本である。近代科学の形成において、ニュートンこそが最大の天才であるとされている。
山本義隆「新・物理入門」
旧帝大受験向けの高校物理の参考書である。めちゃくちゃ難しいので、覚悟してもらいたい。力学、熱学、波動、電磁気学、光学、微視的世界の六章からなり、日常では目にすることのない物理学の基礎がたくさん語られる。例題は、ほとんど解けないと思うが、東大生や駅弁大卒の技術者は解くことができる。読んで学ぶのに数ヵ月かかる。
卜部吉輔「化学の新研究」
これも旧帝大受験向けの高校化学の参考書である。めちゃくちゃ難しいので、覚悟してもらいたい。化学というものが、原子核と電子の距離についていろいろと分析している学問なのだとわかる。現代社会を築いた偉人たちの名前と業績が載っている。読んで学ぶのに半年以上かかる。




