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本のスタンダードをもう一度振り返る・読書おすすめ厳選100作  作者: 木島別弥
第二篇 読書おすすめ厳選200作目・101作目~200作目
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10/15

日本文学25作

 前回、日本の小説を15作紹介した。しかし、それでは、あまりにも少ない。他に紹介したい日本の小説は、まだ、たくさんある。そこで、小説とエッセイに限定して、25作を選んだ。中には中古書でしか手に入らない貴重な本もあり、ぜひ、出版社には良書の流通を維持してほしいものである。

 ジャンルは、純文学、ミステリ、SF、一般文芸、エッセイ、など、特に枠組みにこだわらずに選んだ。

 私の趣味はなかなか一般人に賛同してもらえないのだが、この日本文学の25作はあまりにも有名作ばかりの当たり前な書評になってしまった。すでに流行ったものばかりで、新しく私が発掘したものがない。もし、読み逃しているものがあれば、これを機会に読んでみることをおすすめする。短めの本が多いはずだ。私は、短めの本の方が楽しんで読めたのだ。



空中ブランコ

羅生門・鼻・芋粥・偸盗

沈黙

ルンルンを買っておうちに帰ろう

説教師カニバットと百人の危ない美女

金毘羅

風の歌を聴け

1973年のピンボール

インストール

1000の小説とバックベアード

悪党の詩

地図と拳

世界は密室でできている。

三姉妹探偵団

マリオネットの罠

人間そっくり

第四間氷期

美しい星

BOY‘S SURFACE

スバル星人

プリズム(神林長平)

総門谷

最後にして最初のアイドル

俺か、俺以外か。ローランドという生き方。

水滸伝(北方謙三、おすすめは3巻まで。8巻まで読了。全20巻)




奥田秀朗「空中ブランコ」


 直木賞の受賞作である。中学生の間でも流行ったという。精神科医の患者の治療を名探偵の犯罪推理に模したミステリ短編集なのだが、これがどうして、人物描写に巧みな笑いありの人情劇に仕上がっているのだ。ミステリが変化して、傑作現代劇がいつの間にか作られていたのである。五作すべておすすめである。特にハゲの話は深い人間味を感じさせる。



芥川龍之介「羅生門・鼻・芋粥・偸盗」


 有名な定番を抑えておきたい。今昔物語集のパクリだろうという声もあるかもしれないが、芥川のこの頃の作品は鋭い人物描写が描かれる。四作、どれも味わい深いのだが、特に挙げるなら「偸盗」である。芥川が人生最大の失敗作と評した作品である。女が簡単に人を殺し、男に魅かれ、望ましくない人生に落ちていく様子が描かれる。



遠藤周作「沈黙」


 キリスト教布教の歴史小説である。人物の動きや配役は大袈裟かもしれないが、それがちょうどよい具合に読み進める速度を楽しませてくれる。題名が心に残る。我々の日常において、外交と興亡の歴史において、彼は沈黙している。それは教理に反することではないのか。ポルトガル宣教師の布教活動において、キリスト教の教理を探る。



林真理子「ルンルンを買っておうちに帰ろう」


 1980年代バブル経済の頃のエッセイ集である。ウソもあるだろう。隠しごともあるだろう。そんなバブル経済の女性コピーライターのエッセイにおいて、本音を垣間見ることができる気がする。これはもう80年代バブル経済の時代の文化古典だろうと思うのだ。新しい時代は次々と作られる。そのたびに、その時代を表わす文化古典を我々は選んでいかなければならないのではないだろうか。



笙野頼子「説教師カニバットと百人の危ない女」


 1990年代に彼女を一万人つくることのできた男、説教師カニバットの記録である。説教師カニバットは実在した人物であり、草柳大蔵である。マンガ「マンガで分かる心療内科」の依存症編で、結婚願望依存という症例が出てくるが、女性の結婚願望がどれだけ凄まじいのかを表わしている。ホラーじみた刺激の強い書物であるが、純文学作家笙野頼子によって記録されたまちがいない純文学である。人を知る参考になるだろう。



笙野頼子「金毘羅」


 著者は神主の家系に生まれたのだろうか。神道に詳しい。こんなに神道に詳しい本はあまり見かけない。理系にあらずんば人にあらずな家庭に生まれた主人公の内面世界が神道によって語られていく。幻想的で、悲しく、保守的で、生きる息吹のする小説だった。



村上春樹「風の歌を聴け」


 我が国にはどうせ女性の美というものを理解した文学が存在しないので、定年後に自分で書こうとしていたおじさんがいた。我が国の恋愛小説となると、例えば、これですね、と私が村上春樹のデビュー作のこの本を紹介したら、その内容に満足して、おじさんはもう自分で書く必要はないと定年後の夢をあきらめたらしかった。そんな名作。



村上春樹「1973年のピンボール」


 主人公が台式ピンボールの高得点を狙う話である。私はこの小説が好きである。目指すべき目的があって、それに対して実行して、まわりの人は誰もそんな自分にはおかまいなしで、孤独な戦いを乗り越え、目的を達成する。目的の成就は、必ずしも、幸せを主人公にもたらさないけど、主人公は満足する。人生はこんな積み重ねて成り立っていると思う。



綿矢りさ「インストール」


 同級生の長口舌から始まる小説。果たして、女子高生である主人公の生きる意味とは何か。生きる目的とは何か。生きる目的を探すことは、学校をサボることなのか。学校とは近代文明において作られたものであり、それ以前には必ずしも子供は学校に行かなかった。生きる目的を探すためには近代文明から抜け出さなければならないのか。



佐藤友哉「1000の小説とバックベアード」


 小説を書くという題材の小説はたくさんあるけれども、その中ではかなり面白い方の小説。片説家から始まり、小説家が出てくる。驚くべきことに、小説家が出てくる。小説を書いたことのある人が出てくる。出版経験のある人まで出てくる。小説好きにはたまらない一冊。この価値観、好きだな。本を読んでいる自分に味方がいることを教えてくれる良い読書だった。



D・O「悪党の詩」


 喧嘩の強い男の自伝である。女について語ると敵が多いのだろう。女については語られない。喧嘩が学校で有数に強く、誰がダサいかをダベッて暮らしていた少年が、ヒップホップをやる話。完成度の高い自伝で、どことなく新約聖書をモチーフにしている趣がある。これも現代文化の文化古典だろう。



小川哲「地図と拳」


 第二次世界大戦における満州での話である。私の知る限り、最も優れたアジア情勢の第二次大戦の小説である。ネタバレできないから、この本で小川哲が展開した重要な指摘を説明できないけど、本当に、どうしても確認したかったことがわずかだが書いてある。私はそれを参考に第二次大戦を考えている。



舞城王太郎「世界は密室でできている。」


 ラノベではない青春小説を探している人にはこれを薦めている。エロい場面のない終始ハイテンションな小説を探している人にもこれを薦めている。「ここではないどこかへ」そんな気持ちが弾け飛んだ小説である。「ここではないどこかへ」という思いは、ハイテンションな展開を迎えて、感情的な非日常へと至る。



赤川次郎「三姉妹探偵団」(1巻だけ)


 短くて読みやすくて、はらはらして、意外な犯人の推理があって、家族の温かな暮らしに安心できる。そんなミステリがこれだ。ミステリ入門ならこれから読めばいい。誰でも気軽に読めて、楽しく推理を盛り上げられて、ちゃんと面白いドンデン返しがある。売上を高めるには完璧な小説ではないか。さすが、赤川次郎。



赤川次郎「マリオネットの罠」


 主人公は男の大学生のミステリである。魅力的な題材が次々と出て来て、非常に読みやすい。つづきの展開が気になる。連続殺人事件の犯人は誰なのか。ラストのドンデン返しまで、美少女がたくさん現れては事件に関わってくる。しかし、ミステリだから、美少女は怖い。怖いよ、美少女。赤川次郎は独特の雰囲気があって、すでに我々の深層風景のようでもある。



安倍公房「人間そっくり」


 地球人そっくりの火星人がやってくる話。誰かが書かねばならないことを、非常に上手に書いてくれた小説。面白い。パターンを組み合わせて、この話の最も面白い展開にたどりつけるか。この小説は、知的な刺激に満ちていて、どことなくオシャレであり、日常会話で知っている人がいたら、冗談の種になるそんな話。



安倍公房「第四間氷期」


 まちがえてはいけないが、氷河期の話ではない。間氷期の話である。だから、とても暑い舞台の小説だ。予知をする機械についての話なのだが、予知について考える人は、確かにこの小説で書かれたことが参考になるのであり、この小説が理解できない人に予知の機械について考えるのは難しいのである。



三島由紀夫「美しい星」


 父は火星人、母は木星人、息子は水星人、娘は金星人。一家が宇宙人だらけの大杉一家。彼らは地球が核戦争に脅かされていることを危惧して、地球を救う使命を感じていた。なんというか、この小説もひとつの深層風景なんだよな。読む前からこの話を知っていたような感覚にとらわれるけど、決して知りはしなかったんだよな。大杉一家が悪の宇宙人に勝つか負けるかわからなかったし。



円城塔「BOY‘S SURFACE」


 不思議な小説である。理系的修辞学の熟達した素晴らしい傑作文学である。円城塔はこの小説が書きたいがために小説家になったらしいが、なるほど、ひとつの到達点を示している。どんな頭をしていたら、こんな小説を思いつくのか想像だにできない。



大原まり子「スバル星人」


 ポップでハイセンスなライトな恋愛小説といったら、これをあげる。チャコミャコ四部作の第三作目だけを取り出して、傑作だと紹介するのもどうかとは思うが、私は第二作を読んでいないし、それでも、第三作の魅力たるや、キリスト教文学史に必ず名を残すだろうというべきものである。



神林長平「プリズム」


 幻想SFの傑作である。前半と後半では内容がちがうのだが、前半は幻惑怪奇な極限に挑んだSFのひとつといえる。いや、高度に発達した科学は魔法と見分けがつかないので、このSFの科学は魔法と見分けがつかないのである。未来について何らかの示唆をくれるSFだと思う。



高橋克彦「総門谷」


 超能力SFの最高傑作だと思う。長い前振りを読みきって、結末にたどりつけば、最後の結末にはビビること請け合いである。超能力とは何か。精神力で物体を動かすことができるのだとしたら、この世界はどのようにできているのか。



草野原々「最後にして最初のアイドル」


 三作からなる短編集。第一作「最後にして最初のアイドル」のアイドルに救ってもらいたいとしか思えない。こんな完全な宇宙救済物語は、バルザックの「セラフィタ」の天国を越えるだろう。これくらいの巨大な愛が未来に実現するのならよいのな。「皆殺しだ」というセリフを思い出すたびに、感動して涙が流れてくるのだ。



ローランド「俺か、俺以外か。ローランドという生き方」


 短いエッセイ本である。しかし、何事にもこだわるという著者らしく、本もとことんこだわって作ってある。このホストの書いた本の方が、そこいらの作家の書いた本より面白いんだから仕方ない。けっこう笑える書き方がしてあった。「俺か、俺以外か」という題名もかなりのパワーワードで、頭にこびりついて離れない。



北方謙三「水滸伝」(面白いのは三巻まで。八巻まで読んだ。全20巻)


 男を描くハードボイルド作家の北方謙三であるが、この「水滸伝」では、男の恋愛感情をかなり珍しく描写している。豪傑好漢の集団であったら、女はどのくらいいるのか、問題になる。女に困らないほどモテる男たちの心理を書いたものがあったら、ぜひ、読んでみたいものである。この小説に書かれた男の心理はそのひとつの特徴的なもののひとつなのだろう。


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