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21:この星を墓所で埋め尽くしたのは
波音が聞こえた。寄せては返す波打ち際の泡立つ音。心地よいそよ風の音。
「目は醒めた? いのり」
『わたしはどれくらい、眠っていましたか……?』
「丸一日。アルマの太刀が魔力を充填するまで、ずっとここで」
湖岸の砂浜。低木の下の地面に突き刺したアルマの太刀。朝もやのなかで、黒髪の青年と桜色の髪の幽霊がテトラポットの上に腰をおろしていた。
いのりは膝を抱えて、ポツリと呟いた。
『沈んじゃいましたねぇ。天の方舟の首都、テラノバの遺構』
「帰ろう、か」
「ええ。いつもの、あの植物園に」
いのりは安心しきったようにまぶたを閉じると、風に消されないギリギリの声量で囁いた。
『ねえ、久遠くん?』
「なに?」
『わたしが、アルマです』
呆けたように漆黒の瞳を見開いた久遠に、いのりは愛を告げるように畳み掛けた。
『この星を墓所で埋め尽くしたのは、わたしです』
第惨話「いのりのアトリエ」に続く




