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アトリエアルマ/錬金術師型電波望遠鏡  作者: 朝野神棲
第弐話 図書館塔の占星術師
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17:いのりは星を落としたのか!

 はじめは、流れ星に見えた。だが、一瞬だ。


 ゆっくりとトドゥルの蒼穹を滑り落ちていく、一条の金色の光の筋。久遠は、オシラサマの驚異も忘れてその光景に見入っていた。


 光はぐんぐんと高度を下げてくると、――少しだけ横にそれた。


 そのまま音速を超えて、湖畔都市にいる久遠の頭上を通り抜けていき、やがてさらに向こうの山間部へと一直線に落ちていく。


 そして光は、山の向こう側へと消えて……爆ぜた。


「なんなんだあれ……って、うわあっ!」


 遅れて、耳朶を叩くような衝撃波と暴風が届く。久遠はたまらず悲鳴をあげた。


 衝撃波は廃ビルの残っていた窓をすべて砕き、ビリビリと大気を震わせる。暴風は砕けた廃ビルの建材を吹き飛ばし、地べたに這いつくばる久遠を大きく煽った。


「……いのりは星を落としたのか!」


 かぐやの力を借りていのりが捧げた祈りは、星を落とす祈りだと聞いている。


 暴風が止む頃には、湖畔の水面が大きく荒れ初めていた。水位は見る見る上昇し、久遠の立つ環状道路や商業区画を飲み込んでいく。


 久遠はたまらず、近場の高台……高速道路の高架へ逃げようと、穴だらけの幹線道路を駆けだした。視界の隅で、キルポイントで無力化した獅子のオシラサマが大量の澄んだ水に押し流されていくさまが見て取れた。捨て台詞に似た雄叫びが遠ざかっていく。


 あっけなさすぎる、勝利だった。しかしかぐやから届いた無線で、現実に引き戻される。


(いのりが上流のダムを破壊したわ!)


「ダム?」


(この湖畔は自然湖じゃないの! 墓所の治水のために設けた貯水池なのよ!)


 さしもの久遠の顔色が変わった。


(他の神獣も押し流されたのを目視で確認したわ! 取り急ぎ防衛は成功よ! 近くに資源運搬用のモノレールが併設されているから、それを使って対岸に離脱なさい!)


「わかった! ――いやわからん! モノレールってなんだよ!」


(記憶を取り戻して元の世界に帰りたいんでしょ! 今はあの子のことだけ考えて!)


 ノイズとともに通信が切れる。見る見る勢いで、湖面の水位が上昇していく。果たしておれたちは、ここまでやるべきだったのだろうか。久遠は奥歯を噛みしめると「いのりは……」と声を絞り出した。


 ……間に合わないかもしれない。

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