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アトリエアルマ/錬金術師型電波望遠鏡  作者: 朝野神棲
第弐話 図書館塔の占星術師
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16:あいしてる!

 一方、いのりは、湖畔を見渡せる廃ビルの屋上に立っていた。ばさばさと吹き付けるビル風に身体を煽られながら、ガジュマルに侵食された屋上の縁から湖上都市を見下ろしていた。


『風、つよいなあ……』


 暴れる三つ編みを手で抑えながら、ビルの隙間を駆け回る久遠とオシラサマの姿を目で追いかける。五臓六腑にまで響く獅子のオシラサマの咆哮や、図書館の外壁上から放たれるT2荷電粒子砲の甲高い炸裂音が、ここまで反響して聞こえてきた。


 ビルの屋上には、巨大なパラボラアンテナが一基。いのりはその足下で立ち止まると、腰の位置で浮遊していたアルマの太刀を手に取り、くるくるとバトンのように操りながら、剣先を地面に突き刺した。黒光りした刀身に、金色の魔法陣が浮かび上がる。


『賢者の石、読み出し開始』


 アルマの太刀を地面に突き刺したその瞬間、いのりの姿が変化へんげする。


 桜色の虹彩は、目の醒めるような金色に。ゆるい三つ編みのおさげは、太ももまで伸びる金色のストレートヘアに。衣服も、黒地に金刺繍のドレスに。


 つまり、限りなくかぐやに酷似した姿に。


 変身を遂げたいのりは、かつかつと踵を踏み鳴らす。そして見晴らしの良い開けた場所まで進んでいくと、ぺろりと人差し指を舌で舐め、天高くそれを掲げた。


『視界良し、風向き……良しっと』


 こころなし、声の具合もかぐやっぽく大人びていた。


『天の福音を預かりし星見の巫女が語りかけん。我、空裂き雲穿つ巨神の盟友なり』


 アルマの太刀を中心に、金色の魔法陣が展開される。いのりは詠唱を続けながら、展開された無数の魔法陣たちに指を奔らせていった。


『天の方舟との通信擁立。低軌道を周回中の遠隔宇宙服に支援を要請。応答あり十二件。これが天の方舟の巫女が聴いていたという星の声だというのなら……』


 知らないはずの魔法陣に、学んだはずのない詠唱。意味を理解できるのは、かぐやちゃんから託された賢者の石の恩恵なのだろうか。


(誘導地点にオシラサマを固定した! いつでも撃てるぞ、いのり!)


 通信を受けて目を凝らすと、地上付近で久遠と獅子のオシラサマの姿が見えた。


 獅子のオシラサマは湖面に足をとられ、溺れるように藻掻いていた。


『さっすが、久遠くん! あいしてる!』


 いのりは嬉しそうに手を合わせると、魔法陣をぴんっと人差し指で弾いた。


『半径五キロメートル以内の衛星写真送受完了。解析図から着弾予想地点を算出。GPM全球水分布観測システムに基づく浸水予定地区を算出。爆撃予定地域への警報発令。初速修正。コリオリ偏差修正。敵味方識別装置クリア。射線クリア』


 いのりははるか前方で溺れている獅子のオシラサマと、退避を済ませた久遠の後ろ姿を驚異的な視力で見届けると、覚悟を決めたように声を張り上げた。


 それはまるで、とっておきのショーの幕開けだと言わんばかりに……。


『最終安全装置解除。射角修正プラス二度。T2電磁加速砲・アメノカコヤ、電圧正常――』


 いのりは天高く右手を掲げると、ぱちん、と指を鳴らしてみせた。

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