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アトリエアルマ/錬金術師型電波望遠鏡  作者: 朝野神棲
第弐話 図書館塔の占星術師
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11:パリティディスク固定を組んでる

 翌朝。ホムンクルスの修繕は大詰めだった。傷口や火傷の治癒は終わり、あとは身なりを整えてあげるだけ。まずは車椅子に載せ替え。金刺繍やフリルが散りばめられた、黒いゴシックワンピとヘッドドレスを着せる。うなじと脚部の隕鉄装甲の装飾に合わせて、いのりが(七割がた趣味で)図面を考え、久遠が錬金炉で布を出力してこしらえたものだ。


「アルマの器を点火する。中に挿さってた賢者の石の読み出しが始まれば、成功だ」


『太刀の重力鋲を投錨します。多少時空が歪みますが、御容赦を』


 いのりは側で浮いていたアルマの太刀を手に取り、ホムンクルスに切っ先を向けた。


『天の福音を預かりし、星見の巫女が語りかけん……』


 ホムンクルスは心臓部分にあたるアルマの器が起動しなければ動かない。だがアルマの器の動力である内蔵重力鋲を抜錨するには、内蔵重力鋲が生み出す重力波と同レベルの重力波を加えなければならない。そのため、いのりのアルマの太刀が必要になるのだ。


 いのりの虹彩と髪がほんのりと桜色に発光し、黒い波紋が浮かぶ隕鉄製の刃にも、桜色の魔法陣が浮かび上がる。太刀の発する光がホムンクルスに吸い込まれていく。


『充填タキオンの減速開始。キャリブレーション省略。霊媒投下三秒後に疑似霊子結晶炉との同調率調整。DNAストレージケーブル内の循環溶液の濾過を確認』


「こっちはUEFIの再設定が終わった。言語選択八十一番。ブートデバイスの優先順位は賢者の石を先頭に。パリティディスク固定を組んでる。破損箇所をチェック」


 ホムンクルスの透き通るように長い白髪が、ほんのりと淡い金色に光りだす。光はうなじのコネクタをつたい、極太の麺状コードにも伝わっていく。金色の光はそのまま大温室の水辺や設備にも拡がっていき、心臓の脈動のように明減を繰り返した。


 一瞬、ホムンクルスが脊髄反射をするようにビクッと背筋を仰け反らせる。その官能的なさまも相まって、久遠は少しだけ背徳的な気分にさせられた。


「……んにゅ」


 長いまつ毛がぱっちり開き、ビー玉のような瞳に光が灯る。


 スレンダーな肢体がぴくりと動き出す。起伏に欠けた胸も浅い呼吸で上下する。


『ああ、やっと目が醒めた。わたしたちの姿がちゃんと見えますか?』


「いのり、ちょっと退いて。おれも見たい」


『あのね、久遠くん? この子はまだ目覚めたばかりなんですよ?』


 戸惑い気味のホムンクルスだったが、いのりの姿を直視した瞬間、目の色が変わった。


「あんた、はっ……!」

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