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アトリエアルマ/錬金術師型電波望遠鏡  作者: 朝野神棲
第弐話 図書館塔の占星術師
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4:当たりが強くない?

 その後二人は水をかけあってじゃれあったり、じゃれ合いすぎて険悪なムードになったりしながら、最終的に久遠が空腹を訴えたので昼食をとることにした。久遠は服を乾かしつつ、手ずから捕まえた小魚を鉄串で貫き、焼いて食べようと試みた。


 水面に浮かぶ神獣の遺骸の上で荷を降ろし、簡易コンロの前で手作りのマッチを何度も擦る。


「上手く火が点かない。頭薬の配合を間違えたかな」


『色気を出して硫化燐マッチなんてものを自作しようとしたからですかね』


「錬金術って難しいんだな」


『師匠の有り難みが分かりましたか?』


「なんか今日のいのり、当たりが強くない?」


『ふんだ』


 いのりは久遠の後ろで楽しそうに彼の作業を見守りながら、何を思ったのかふと歌い上げるように言った。


『……〝錬金術は、命を別のかたちに変える奇跡。そして奇跡を行使して何かを生み出す者は、その奇跡の根源や起源を理解しなくては、奇跡を振るってはならない〟』


「?」


『術者に伝わるおとぎ話、現代錬金術が確立されるより遥かな昔に成立したという、タケコ岩の誓いという逸話です。錬金術を行使するには、物事の本質を理解しないといけません。その素材が、技術が、知識がどこから来たのか。錬金術によって姿を変えることで、どこへ向かってしまうのか。言い換えるなら、想像力が乏しいひとは錬金術を行使すべきではないし、行使することも至難だということ。』


「よくわからないな。手順とか、結果とか、物事の表層……教本をなぞるだけじゃだめだってことなのかな」


『ふふ、いっぱい考えてください。この星はわたしとあなたの二人きり。時間はいくらでもあります。この世のすべての時間がここにあるんです』


 いのりがそう言うと、久遠のマッチにとうとう火が灯った。


『これでもわたし、あなたには期待してるんです』


 結局対岸にたどり着く頃には、久遠の懐中時計は十四時過ぎを示していた。


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