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12:夢 -ⅱ-
……久遠は夢を見ていた。しっとりと忍び寄る夜の帳のように黒い髪、黒い虹彩。夢のなかの久遠は、白い部屋にいた。つるつるの壁面の大部分を占める、大きく湾曲した窓。まるでフラスコの中みたいだ。窓の外は真っ暗で、ときおり青白い光がちらついた。
久遠の身体は浮いていた。手足は拘束具のようなものでぐるぐる巻きにされていたが、何故か不快感は無かった。むしろ母親の子宮、羊水の中にいるような……。アルマの器に似た小さな球体や、きらきらと光る文字盤が浮いていて、久遠はそこから聞こえてくる理知的な少女の声に耳を傾けていた。無愛想だが、どこか柔らかさも滲む綺麗な声だった。
お父さん、と呼ばれた気がした。それが自分に向けた言葉なのだろうことは、少女の声音に微かに滲む親愛の色から理解することができた。
だけどおれは、お父さんと呼ばれるほど歳を食っちゃいない。そう反論しようとしたところで、夢は霧散し深い闇の中へ薄れていく。そのまま久遠は、深い眠りに落ちていくのだった……。




