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戦えない落ちこぼれは知力で成り上がる  作者: 加藤 成
第4章 武闘会&学園祭篇
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第86話 悲痛の叫び

異国交流で来ていたのが、つい最近お世話になったガルダ公国のお姫様だという。

しかも彼女は翔太達を探しているとか。



チャイムが鳴り授業が始まる。教師が近くに寄るよう指示すると、先ほどまでの人だかりが蜘蛛の子が散るようにバラけた。

翔太達はバレないよう三人ずつに別れバラけた生徒に紛れる。別れ方は翔太、ローザ、ヴァイスのいつものメンバーと、ヤーデ、グラナート、八城の三人だ。

最初は二年と三年で別れるはずだったが、ここで翔太がストップをかけた。



翔太曰く、特待生の八城と一緒だと目立つ。それならまだ前生徒会長、副会長の近くにいる方が自然。



というわけで、こう別れることになった。

八城は少し不満そうな表情を見せたが、変わることはなかった。



「よし授業を始めるぞ。今日から一ヶ月後、武闘会があるのはもうみんな知ってるな。一年生と特待生は知らないと思うから簡単に説明する。競技は二つ、学年別の個人戦と全学年混合の団体戦がある。

今日は団体戦のチームを決める!

条件は二つだ。

一つ目は全学年合同というからには一年二年三年生の織り交ぜでチームを作ること。

二つ目は人数だ、人数は七人。それ以上でも以下でも禁止だ。

今回、異国交流で来ていただいているフラン皇女様は参加しないから誘うなよ。

よし、それじゃあ決めろ!実力が知りたいときは模擬戦を行なっても構わん!」



みんなが一斉に走り出す。向かう先は現生徒会長である神坂誠也のもと。



「すごい人気やな…。そいじゃワイらもヤーデはんのとこ行こか」



「え、今から行くの?」



「……不満…?」



「不満っていうか、あの人達の周りもすぐ増えるよ?元とはいえ生徒会長、副会長だったんだし」



「それは嫌やな…。ほんなら一年生でも探さへん?どうせヤーデはん達は人だかりで動けんやろし」



「…賛成……」



「そうだね、そうしよっか」



翔太達はヤーデ達がいる方向とは反対に歩き始めた。数分後、彼女達を見ると案の定人だかりができていた。ローザとヴァイスはまだ行かなくて良かったと安堵した。



翔太達は周囲を見渡しつつ、たまに模擬戦をやってるのを覗いてみる。

そんななか翔太が声をひそめて話し始める。



「ねぇ二人とも、なんか視線を感じるんだけど…」



「…うん……私も…」



「ワイもや…後ろからやろ?…」



「…うん……振り返って…みる…?」



「じゃあ自然を装いつつ三つ数えたら一斉に、振りかえろ。

で、五秒たったらまたこっちに向き直る。OK?」



翔太の案にローザとヴァイスは賛成の意を込め首を縦に振った。



「一、ニ……三ッ!」



三人が一斉に振り返る。あくまで人を探す仕草をして。その様子はいかにもといった感じだ。

そして五秒後先ほどと同じ方向に向き直る。



「わかった?」



「…うん……」



「わかったでぇ…」



「じゃあ、せーので言おう。せーの「「フラン皇女」」」



三人の人物が一致する。

先ほど振り返ったとき、翔太はもちろんローザとヴァイスも彼女をみた。その時彼女は翔太達をガン見。それはもう食い入るように見ていた。

話し合いの結果、気づかないフリをしてやり過ごすことになった。



「それにしても、だいぶチームができて来たみたいやな」



かれこれチーム決めから一時間が経過していた。ヴァイスの言葉通り周囲には既にチームを決め、連携の練習をしている所もある。

それでも数えれる程度で、ほとんどの生徒は諦めず神坂誠也やヤーデ達をチームに入れようと勧誘を頑張っていた。



「……ねぇ…あれ…」



ローザは歩めを止め二人の袖を引っ張ると、一つの人だかりに指をさす。

翔太とヴァイスも足を止め首を動かす。

人がそこそこ多くよく見えないが、一年生同士の男女が模擬戦を行うところだった。

しかしローザが気になったのはそこでは無い。



「…ちょっと…行こ…」



彼女は二人を袖を引っ張り、模擬戦が近くで見えるところまで小走りで近づく。

初めこそローザが何を伝えたかったかわからなかった二人だが、近づくにつれ彼女が伝えたいことが理解した。



「炎の槍にて敵を貫け。火属性初級魔法『フレイムランス』」



「や、やめ…キャッ!」



「へへっ、次は俺の番だ!痺れ振るえ。雷属性初級魔法『サンダーウィップ』」



「キァァァァァ!」



彼らの目に飛び込んで来たのは無抵抗の少女に交代で魔法を当てていく、模擬戦と言う名の“イジメ”だった。少女は大きくはないが教師には十分聞こえるほどの悲鳴をあげた。

しかし肝心の教師は助けに来ない。それどころか少女を横目にニヤついていた。

イジメは尚も続く。



「次はアタシィ!水よ、集いて牢となれ水属性初級魔法『アクアプリズン』」



「イヤ…もう許して……」



水が少女を取り込むように渦巻く。

それを黙って放っておく彼らではない。



「は?」



水の牢が少女を包み込む瞬間、パンッと音をたて弾けた。

魔法を発動した少女は唖然とする。



「…退いて……」



一言、その一言が聞こえた途端イジメをやっていた者や見ていた者は体が重くなり立っていられなくなった。

そこに立つのは三人のみ。



“魔力抑圧”



ローザが一時的に魔力を操作し、その場を支配した。

水牢が壊れたの翔太がヴァイスに魔法の核の場所を教え、薄く練った風属性の魔法で破壊したからであった。

一年生は何が起こったのか、何が起きてるのか全く理解できなかった。先ほどまでニヤついていた教師も何が起こったのか分からずこの状況に愕然としている。

そんななか、翔太達はゆっくりと、この中で唯一被害者である少女の元に近づく。



「ヒィ…ッ!」



そんな彼らを少女は怯えて涙目になる。

可愛い少女に怯えられたローザは膝から崩れ落ちる。ショックで心が折れたのだ。

“こんな状況”では怯えてられても仕方ないが、それでも彼女はショックは隠しきれなかった。

そんな彼女を翔太とヴァイスが励ます。



「だ、大丈夫!ローザは可愛いよ!」



「せ、せやせや!そない俯いとったら可愛い顔が台無しやで?!」



「…うん…。私……頑張る…よ…ッ!」



こんな茶番をしている中でも魔力抑圧が消えていない所が、彼女の実力を物語っていた。



「フフッ……あっ」



そんな下らない茶番を見ていた少女が少し笑みを浮かべた。しかしそれも一瞬、すぐに失礼な事をしたと口を抑える。

ホントに心が折れたローザはなんとか二人を励ましで立ち上がり、ボロボロになって立っている少女を優しく抱き締めた。ローザは平均より小さいほうだが、少女はもっと小さい。百五十センチ無いくらいだろう。

そのおかげかローザちょうど胸を貸す感じになっていた。



「……え?」



「…もう…大丈夫……だよ…。……私達、が……いる…から…ね…」



ローザは少女の頭を撫でながら耳元で優しく、ゆっくりと語り掛けた。

それを聞いた少女は目を見開き、そしてその目から涙が流れ出す。



「も……もうぅ…我慢っ……しなヒック…しなくてもぉぉ……いいん…うぅ…ですかぁ…」



「うん」



「うぅ……う、あぁあ…」



少女の頭の中にこれまでの人生の事が蘇る。何も悪いことはしてない。

ただ“魔力は沢山あるのに魔法が使えない”というだけで親に虐待を受け捨てられ、拾われた孤児院の中でも虐待やイジメにあっていた。逃げるためにやっとの思いで入った、このセント魔法学園でも孤児院と変わらない毎日。神を恨んだ。もう何処へ行ってもこの日々は変わらないと諦めていた。

でも彼女達は違った。何もヒドい事をしない。それどころか優しく包み込んでくれた。

そんな優しい彼女達に許して欲しかった、涙を流す事を。我慢しなくていい事を。



止め処なく涙が溢れ出す。彼女はもう我慢しなかった。



「うぁぁぁぁぁああああん!!あああああぁぁぁぁああああ!!

うぅ…怖がったぁぁ…いたっ、痛かっだぁぁああ…ヒグッ……寂じがっだよ゛ぉぉぉぉおおおお!!」



そんな少女の悲痛の叫びは訓練場全体に届いた。

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