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戦えない落ちこぼれは知力で成り上がる  作者: 加藤 成
第4章 武闘会&学園祭篇
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第87話 居場所

その後、少女とローザは大変だった。

色々な学年の教師に囲まれて事情聴衆をされた。そこに神坂が加わる。それに続き取り巻きが集まる、といったことになり翔太とヴァイスはその場をローザに任せヤーデ達の元に戻った。

そこで事情を話し、八城に少女の治療を頼むと二つ返事で少女の元に向かった。



「で、翔太。実際のところはどうなんだ、本当にその子は魔法が使えないのか?」



「うーん…“視た”感じではなんとも言えないです。ただ…」



翔太は少しいい淀む。そんな彼は不思議なものでも見たような顔をしていた。



「なんや、なんかあったんか?」



「……いくら初級でもあの子のダメージが少ない気が……」



「魔法で身体強化してたんじゃないか?それなら多少は抑えられるだろう」



ヤーデの言ったことは間違ってはいない。だが、それでも何処か腑に落ちない翔太は渋い顔をしていた。

ヤーデは翔太から視線を外しヴァイスとグラナートほうを見る。二人は首左右に振り肩を竦めた。



「治療終わったわよ」



今しがたローザ達の元へ向かった八城が治療を終え戻ってきた。

彼女の後ろにはローザと先ほどの少女もいる。



「お疲れ様、ローザも。そして君がさっきの少女か。

初めましてだな、先ずは自己紹介からするとしようか。

私はヤーデ=ルーファスだ。そこの赤い髪のやつがグラナート=ロイズ、白い髪のやつがヴァイス=ジーザス。そして黒い髪の奴が翔太=瀬戸だ。気軽に名前で呼ぶといい」



「あ、クロナ=エルシェ、です…。えっと…ヴァイスさんセトさん、ローザさんから聞きました。先ほどは助けて頂き有難うございますです!」



クロナは自己紹介を済ますとヴァイスと翔太に深く頭を下げた。

ヴァイスと、いつの間にか考えるのをやめていた翔太は笑いながら「気にするな」と言って頭を上げさせる。

黄緑色をしたボブカットヘアとネコを彷彿とさせる大きな瞳。小柄で顔も幼く、中等部と言われても通じるだろう。

それが改めて彼女を見た翔太の印象だった。



「さてクロナ、これでも私は元生徒会長だ。少し話を聞かせてほしいが、回りくどいが嫌いだからストレートに聞く。

君はなぜイジメを受けていたんだ?」



クロナの表情が暗くなる。そして彼女は小鳥が鳴くような小さな声でポツポツと喋り始めた。



「私、魔力はあるのに魔法が使えないんです…。だからみんなに蔑まれてて…」



予想どおりの答えだった。



「なるほどな」



「私、去年まで孤児院いて、ソコで鼻摘にされてたので出たくてここに入ったんです…。でも結局何処にいても変わらない私の居場所は無いんです…。

すみません、私なんかがこの学園に居て…」



「…ヤーちゃん」



ローザがヤーデに目で訴えかける。

彼女が何が言いたいのか理解していたヤーデは黙って頷く。



「…クロナ、居場所が無いなら私達とこないか?私達は君を歓迎する」



「…え?どう…して、魔法が使えない私が気持ち悪くないんです…?」



「いや全然。それに翔太だって使えないしな」



「…でも、なんで…」



「君は質問ばかりするな。クロナ、私達が聞きたいには質問じゃない。一緒に来るか、来ないか。そのどちらかだ」



翔太達は見守るだけで口は出さない。

そんななかクロナは目を伏せる。彼女は迷っていた。今まで居場所が無かった彼女が、居場所を掴むか否か。間違いなくこの選択は人生を左右するものの一つだ。

欲しい…でも怖かった、得てしまったことでまた蔑まれ居場所を追い出されるのが。それなら最初から無い方がいい。

ふとクロナの右手が熱くなる。目だけそちらを向けるとローザが手を握って、その手は少し震えているようにも見える。クロナはその手を握り返し口を開いた。




「……です…。居場所が欲しいです…。私も皆さんと一緒に居させて下さいですッ!」



クロナは深々と頭を下げて願った。居場所が欲しいと。自然と周囲の目が集まる。

ヤーデはそんな事は気にせずにクロナの頭に手を置いた。そして優しく撫でる。



「あぁ、ようこそ。女王陛下の膝下に。さっきも言ったが私達は君を歓迎するよ」



「ありッ……ありが…とう…うぅ…ございます…ですぅ…」



クロナはその言葉に自然と涙が溢れでる。



「ヤーちゃん……泣かした…」



「えっ!?いや、私はそんなつもりは…っ?!」



「はぁ、それでも元生徒会長ですか?大丈夫ですよクロナ。ヤーデ以外は貴女を泣かせたりしませんから」



「グラナートはんの言うとおりや。ヤーデはんと違ごうてワイら“は”クロナの嫌なことせえへん」



「グラナート!ヴァイス!それでは私がいつも嫌なことをしてるように聞こえるぞ!?」



「「だってそういう風に言ったし」」



「貴様らァ…!な、翔太。私はそんな酷い人間じゃないよな?」



「はい!ヤーデさんはそんな酷い人じゃないですよ!」



「翔太…。ほら見ろ!やっぱり私はーーー」



「ただちょっと…………フッ、残念なだけです」



「ーーーおい待て翔太。今何処を見て笑った?お前らも納得するかのように頷くなァ!

お前達はこの私のセクシィーさが分からないのか?!」



「「「「せ、せくしぃ…?」」」」



「…………ぶっ殺す」



翔太達は蜘蛛の子が散るように一目散に逃げた。それをヤーデは二本のダガーを構えて追いかける。

そんな彼らを見てクロナは笑っていた。

今まで無かった居場所がやっと手に入るかもしれない。

今まで人を信じては嫌われ暴力を振るわれてきた。信じるのは怖い。でも最後にもう一度だけ信じてみよう。



「さて、これで団体戦のメンバーはあと一人だな」



処刑鬼ごっこから帰ってきたヤーデ達は授業に戻る。その際、若干四名の頭にタワーが出来ているがクロナはそれを見なかったことにした。



「せやな、あと一人探さへんと」



クロナと八城が首を傾げる。



「あ、あのー…もう七人いるですよ?」



まだ少し緊張しているのか恥ずかしがるようにクロナが意見する。

その言葉に今度はヤーデ達は首を四十五度傾ける。



「?まだ揃ってないよ、だってヤーデさんにグラナートさん、ヴァイスにローザ、そしてクロナと僕。ほらね、一人足らないでしょ?」



「ちょっと待ちなさい瀬戸君。なんで私が入ってないのかしら!?」



まさか名前を呼ばれないと思わなかった八城は、翔太の肩をギュッと握りしめる。



「いだだだっ!ギブギブ!」



「じゃあ理由を話しなさい」



「落ち着け八城。理由はアレだ」



ヤーデが後ろから八城を宥めるとそのまま左親指で後ろを指す。

ヤーデの身体がバリケード代わりになり見えにくいが、彼女の後ろの方では神坂誠也が此方を睨むように見ていた。



「翔太も私達もあいつがキライ。君がいると鬱陶しいほど絡んでくる。

だから私達は考えた、八城を向こうに引き渡せばいいんだと!という訳だからバイバイ」



「イヤですよ!私の意見はどうなるんですか!?あなた達も手を振らない!

なんて酷い人達なの…いいクロナ、貴女はああなっちゃダメよ………ってもう染まってる!?」



翔太達は目元にハンカチを当て手を振って見送る。その中にはクロナも混ざっていた。



「とにかく私はここに入りますからね!」



「じゃあ……アレ…よろしく…」



ローザのいうアレとは今にも怒鳴り散らしてきそうな神坂誠也のことだ。八城が酷い目に遭っていると思ったのだろう。



「わかったわ。すううぅぅぅぅーーー」



八城は大きく息を吸い込んだ。

何をする気かは分からないが、これからやろうとしてることは分かった。取り敢えず耳を塞いでおこう。

翔太はクロナにもジェスチャーで耳を抑えるように伝える。

クロナが耳を塞いだ直後、訓練場内に八城の声が響いた。



「ーーー私ィィィィ!貴方達とはチーム組まないからアアアアァァァァァァ!

ふぅ…これでいいかしら?」



「「「「「あ、はい…」」」」」



「あ〜〜〜…」



予想以上の大きな声に翔太達は驚き、クロナは耳を塞いでいたにもかかわらず、目を回していた。

こうして団体戦にチームが決まった。

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