第69話 擦り合わせ
「そんな可能性ホンマに考えられるんかいな」
ヴァイスは椅子に座り天井を仰ぎながら、翔太の仮説をその場にいる全員に聞き返す。
翔太はジル国王との謁見後、一度宿屋に戻り別行動をとっていたヤーデ、グラナート、ローザ、ヴァイスの4人と集めた情報を擦り合わせていた。
「ありえない…とはいえんだろう。翔太がいい証拠だ。
それに大昔に召喚された勇者の数は4人。まぁ知ってるのは賢者であるアスカ様だけだが。
逆にいえば他の3人の事は何も知らないという事だ。その3人の内の誰かが召喚魔法陣を知っていた、或いはそれ以外の方法を知ってたとしてもおかしくはない」
ヤーデの言うことはもっともだ。
しかしまだ信じられない。仮にも異界から召喚されたと言うことは、勇者になれる力を秘めているということ。それを壊す側で使われるとしたら、これ程厄介なことはない。
戦ったとしても翔太以外は負けることはないだろう。
だが出来るならその仮説は外れて欲しいものだ。
面倒だから。
「メンドくさい…」
ローザがお菓子をかじりながら呟く。
「それ言わないで下さいローザ。みんな同じ気持ちですから…」
4人のため息が重なった。部屋中に憂鬱な空気が漂う。
その中で唯一ため息をついておらず、また憂鬱な空気も感じられない人物ーーー翔太は手をパンッと叩き立ち上がった。。
自然と全員の視線が翔太に向く。
「皆さん………ガンバって!」
4人のこめかみかブチッと何かが切れるような音がした。
そこからの記憶はない、のちに翔太の出す報告書にはそう書いてあったそうだ。
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「話を戻そう、まだ異界人と決まったわけではない。それよりこれからどう行動する予定なのだ翔太?」
「ハッ!本格的に行動するのは夜であります!場所はグラナートさんが戦ったという西の森!コレを拾ったオバさんも西の森の中だそうなので、何かあるとしたらそこが1番可能性が高いと思われまぶぅぅぅぅうう!」
「五月蝿い」
ヤーデのキレイなアッパーカットが翔太の顎に決まった。
しかも喋っている途中の攻撃でそのまま舌を噛んでしまい、口を押さえてのたうち回っている。
「〜〜〜〜ッ!!」
「翔太君。ヤーデのことを睨んでるんでしょうけど、仰向けで口のあたりを押さえながらだと、女性のスカートの中をのぞいて鼻血が出た変態のようにしか見えませんよ?」
「ーーーッ!?………」
グラナートの言葉に撃沈。
うつ伏せになり泣き真似を始める翔太。
ヴァイスが仕方ないといった感じで慰めに向かう。ローザはお菓子に夢中だ。
「大丈夫かいな翔太、ちょい口見してみぃ。おい、暴れんなや!………ん?」
翔太を仰向けにしようと手を取った。が、翔太はそれを抵抗。
そしてその手で床に口から出ている血で文字を書いていく。
「えっと…“怪力雌ゴリラに裁きを”ねぇ。…ヤーデはん」
「誰が貧乳怪力雌ゴリラだァァァァァァアアアア!」
「え!?貧乳書いてなアアアアアァァァァ!」
うつ伏せになっている翔太をヤーデはおもいっきり踏みつけた。
元々ヒビが入っていたのか、はたまた踏みつける力が強かったのか床が抜け、翔太はそのまま1階へと落ちていった。
もちろんこの後、宿主にこっ酷く怒られたのは言うまでもない。




