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異世界行ってもデイサービスで働きたい!  作者: 硬めのバケツプリン
異世界行ってもデイサービスで働きたい!

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第七話 老護者の仕事とは

「お前らか。老護者志望の二人ってのは」


僕たちの前に立っていたのは――


美しく、そして強そうな女性だった。


白髪のストレートヘアに整った顔立ち。


僕たちと同じ軍服を身にまとい、肩には大きな剣を担いでいる。


体型は華奢なのに、絶対に強い。


見ただけでそう感じる。


これが……オーラってやつか?


それにしても――


大変立派なものをお持ちでいらっしゃる。

目の前の女性のお腹の上にある大きな2つのお山を見てそう思った。


「きもいにゃ」


「ギクッ!」


「老護施設の主任を務めているロアー・アストレアよ! ロアーって呼んでねっ! まあ、一緒に楽しく働こうねっ!」


……あれ?


最初の「お前らか」という言い方から、もっとお堅い人を想像していた。


「君たちの名前は?」


「和 霜村――なぎ・しもむらです!」


「茉椰 霧藤――まや・きりふじです!」


異世界に来て、初めて苗字を名乗った気がする。


「それでは、和、茉椰。中についてきて」


ロアーさんに案内され、僕たちは施設の中へ入った。


歩いている途中、ロアーさんが質問をしてくる。


「二人は、なぜこの仕事を志望したの?」


まるで面接のようだ。


異世界に来てから、この質問は少々難しい。


大まかな仕事内容は多分分かっている。


でも、まだ詳しいことまでは分かっていない。


僕から答えることにした。


「以前、老護者に似た仕事をしていて……また同じような仕事がしたいと思いました」


そう答えると、ロアーさんは嬉しそうに笑った。


「そうなんだね! かなり珍しい仕事だけど、経験があるなんて……期待できるね!」


しまった。


仕事の内容をちゃんと理解していないのに、期待させてしまった。


すると、先輩が続けて答える。


「私は、おばあちゃんやおじいちゃんが大好きなので、この仕事を選びました!」


……なるほど。


仕事内容が分からない今なら、その答えが最適解なのかもしれない。


「そうなんだね! 私もおばあちゃん、おじいちゃんが好きでこの仕事に就いたんだよ。一緒に頑張ろうね!」


やっぱり、これだったか。


施設内を案内してもらう中で、いくつか分かったことがある。


ここは、おそらく通所施設と入所施設が併設されている。


現代でいうデイサービスと老人ホームが、同じ建物の中にあるような感じだ。


いくつかの居室があり、室内にはベッドも見える。


ここで生活している人もいるのだろう。


そして、もう一つ。


ここは軍が運営しているらしい。


施設内の職員が着ている制服は、バウワウ卿から僕たちが渡されたものと同じだった。


それから――


僕たちが渡された武器。


あれは施設内で使うものではないらしい。


施設内で見かける人たちは、誰一人として武装していなかった。


……まあ、あくまで僕の推測だけど。


「着いたよ。座ってね」


案内された部屋には、長いテーブルといくつかの椅子が並んでいた。


僕と先輩は適当に腰掛ける。


ロアーさんが僕たちの前に腰を掛け、話し始めた。


「まずは二人とも、この仕事を志望して、うちに来てくれてありがとう」


「現在、うちは人手不足でね。猫の手も借りたいくらいなの。同時に二人も入ってくれたら、かなり余裕ができるわ」


やはり、この世界でも介護業界は人手不足なのか。


「和くんは分かっているかもしれないけど、改めて仕事内容を説明するね」


「……や、やったことがあるのは、あくまで似た仕事で……」


「あら、そうなの? 老護者ではないんだね」


そう言って、ロアーさんは仕事内容を説明してくれた。


「基本は老人のお世話よ。お風呂に入れたり、爪を切ったり、髭を剃ったり。あとは、一緒にお話をしたりね」


ここまでは、現代のデイサービスとそれほど変わらない。というか、かなり物足りない。


……と思っていた。


「そして、なんと言ってもこの仕事のメインは――送迎よ」


「送迎……」


「そう。利用者さんを自宅まで送り届けるために、いろいろな場所へ出向くの」


そこまでは、現代のデイサービスと同じだ。


しかし――


「ただし、道中ではモンスターを討伐しながら進まなければならないわ」


「…………はい?」


思わず聞き返してしまった。


「冒険者がモンスターを討伐するより大変なのよ。なにせ、利用者さんが乗っている馬車を守りながら戦闘をしなければならないから」


「……メ、メイン、ですか?」


流石にメインは高齢者の介護だと思ってた。


モンスターを討伐。


それが、老護者の送迎の仕事らしい。


「そう。特にここで人手が足りていないの。あなたたちの強さはまだ分からないけど、ここが一番頑張ってもらいたいところね」


全く経験のないモンスター討伐。


異世界に来てすぐ現れたモンスターは、仔虎が倒してくれた。


正直、自信がない。


すると、先輩が元気よく答えた。


「頑張ります! 皆さんの役に立てるように!」


……やっぱり先輩は心が強い。


そういえば、先輩は異世界に来てから何度も戦闘を経験している。


あとで稽古をつけてもらおう。


「和くんは、モンスターとの戦闘に自信がないの?」


「……はい」


「大丈夫よ。最初は一緒に行くメンバーについて、少しサポートしてくれればいいから」


サポート……。


具体的に何をすればいいのかは、まだ分からない。


でも――


僕は利用者さんの介護や機能訓練の仕事を頑張ろう。


今までやってきた仕事を、この世界でも役立てる!


「分かりました。頑張ります!」


「よし!」


ロアーさんが笑顔になる。


「じゃあ、二人ともこれから送迎があるんだけど……一緒に来る?」


「はい! 同行させていただきます!」


先輩は即答だった。


さすがだ。


「は、はい。では僕も行きます」


「和くんは自信なさそうね」


ロアーさんがクスッと笑う。


「安心して。今日は見学だけにするわ」


「ありがとうございます」


するとロアーさんが、僕の隣を見た。


「それと、その仔はテイムモンスターか何か?」


「そうみたいです……。最近現れたというか、勝手についてきてます」


「そっかそっか。なぎくんも、よく分かってないのね」


ロアーさんは仔虎を見つめる。


「かわいいわね。その仔は戦うの?」


「はい。僕よりも役に立てると思います」


「悲観的ね」


ロアーさんは笑った。


「これから仕事をこなしていけば、自信も出てくるわ。じゃあ、行きましょ」


そして、僕たちにそれぞれ指示を出した。


「和くんは私についてきて!」


「茉椰ちゃんは、これから来るもう一人について行って!」


「グラウル!」


「はいっ!」


施設の奥から、男性の声が聞こえた。


振り返ると、そこには大きな斧を背負った男性が立っていた。


「この二人が新人さんですか?」


「そうよ!」


男性は僕たちの前まで歩いてくる。


「期待できそうですね!」


「グラウル・ローデンだ。斧を使った近接戦闘が得意だ。よろしく頼む!」


老護者は自己紹介で、まず戦闘の話なのね……。


「よろしくお願いします!」


僕と先輩が頭を下げる。


「それじゃあ、二人とも頑張ってね!」


こうして――


僕たちの異世界での、初めての仕事が始まった。


そして僕はまだ知らなかった。


送迎の過酷さを。

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