第六話 ノクターン
「いらっしゃいませ!ワクドキハッピー武具店へようこそ」
名前ダサすぎるだろ。どうにかならんのか?
「ここはバウワウ卿御用達のお店ですか?」
「そうだ。」
ちゃんとした武具が売っているのか不安になるネーミングだ。
「今回ご案内をつとめさせていただきます。ダイヤモンド・グレイと申します!」
店内には、剣、斧、弓、銃、杖など、様々な武器が並んでいる。
「今まで武器を使うようなことは全くありませんでした。どんなものを選ぶといいのでしょうか……」
「基本的には、パーティを組んで戦うことになるかと思いますよー。」
ダイヤモンドさんが説明を始めた。
「その場合、前衛、中衛、後衛に分かれて戦うのが一般的です」
「前衛は剣や斧などを使った近接攻撃を担当する」
「中衛は弓や銃などの飛び道具を使い、半近接、半遠距離から前衛をサポートする。また、後衛を敵から守る役割もある」
「そして後衛は、杖や魔導書などを使って魔術を行使する。攻撃魔術や回復魔術、能力強化魔術などで前衛と中衛を支援するんです。遠距離用の銃で敵を狙撃する場合も後衛ですね」
「なるほど……」
そのくらいはアニメやゲームで知っているけど…。
「お客様はどれが向いていそうですか?」
老護者って、そこまで本格的に戦闘することがあるのだろうか。
そんな疑問はあるが、まずは武器を選ばなくてはいけない。
「僕は射的がとても得意だったので、銃が合ってそうです!」
「射的?」
「僕の生まれた世界で、銃を模したおもちゃでコルク栓を撃って、的を狙う遊びです」
「遊びってお前……」
バウワウ卿が呆れたような顔をする。
「戦闘経験が皆無なもので……。でも、今は遊びのつもりはありませんよ!」
「なら、いいんだけどよ」
店内を見渡す。
そのとき――。
「あ……」
僕は、一つの銃が気になった。
ショーケースの中に置かれた、二丁拳銃。
深い黒色の拳銃。
そして銃口付近とグリップには、紫色の美しい石があしらわれている。
「これがいいです!」
僕が指差した瞬間、ダイヤモンドさんが驚いたように目を見開いた。
「……本当に、これでいいんですか?」
「はい!」
バウワウ卿がダイヤモンドさんに声をかける。
「これをもらえるか? それと、こいつに使い方を教えてやってくれ」
「かなり高価ですが……よろしいですか?」
「構わねえ」
「えっ? そんなに高価なものなんですか!?」
慌てて僕が口を挟む。
「もう少し安価なものでいいです!」
「気にするな。それをくれ」
「承知いたしました」
「……ありがとうございます」
ダイヤモンドさんが拳銃を僕に渡して説明を始める。
「こちらの拳銃ですが、グリップの下からマガジンを入れます」
言われた通りにマガジンをセットする。
「自動装填されますので、あとはトリガーを引くだけで連続で撃てます!」
「なるほど……」
「また、魔力を込めることで、弾丸の性質を変化させたり、威力を強化したりできます。弾丸がなくても、魔力そのものを弾丸として放つことも可能です!」
「魔力を込めると、この紫色の魔石が発光します!」
魔力……。
僕には魔力なんてものはない。
普通の撃ち方しかできないかもしれない。
「他の拳銃との違いはありますか?」
「使い手の魔力を反映させられる拳銃は、とても珍しいんですよー!」
「試し撃ちされますか?」
「はい!」
◇
店の奥には、広い練習場があった。
ここでは様々な武器の使い心地を試せるらしい。
練習場には、銃を撃つ場所。
その先には、銃弾が飛んでいくための通路。
さらに奥には的があり、その背後には銃弾を受け止める大きな石壁がある。
僕は射撃位置に立った。
的までの距離は三十メートルほどありそうだ。
右手で銃を構える。
的を狙った、その瞬間――。
「……あれ?」
紫色の魔石が、淡く光った。
「僕、魔力使えないのになんででしょう?」
「いいから、的目掛けて撃ってみろ。」
「はいっ!」
「それでは、思いきって〜!一発ぶち込んでください!」
ダイヤモンドさん急にテンション高いな…。
僕は銃を握り直した。
絶対に真ん中を撃ち抜く。
遠くの的にも届くように、強い威力で撃ち抜く。
そんな強い気持ちを銃に込める。
そして――。
トリガーを引いた。
パァァーーーンッ!!!
大きな発砲音が響き渡る。
同時に、銃口から紫色の閃光が一直線に伸びた。
「――っ!」
メキメキメキッ!!
弾丸は的のど真ん中を撃ち抜き、そのまま背後の石壁に大きなヒビを走らせた。
「わーお! 和くん、すごいね!」
「いい腕してるじゃねぇか!」
「さすがあたちのご主人にゃ」
「そうでしょうか?」
僕は自分の手にある拳銃を見る。
「この銃がすごいんだと思います」
実際、僕自身には、的の中心から少しズレたような感覚があった。
なのに――。
銃から放たれた紫色の閃光は、まるで僕の狙いを読み取ったかのように軌道を修正し、的のど真ん中へと吸い込まれていった。
「上手く撃てていますよー。使えるじゃないですか、魔法!」
ダイヤモンドさんが嬉しそうに話す。
「初めて使う銃で、魔力による威力強化と軌道修正を同時に行えるなんて……素晴らしいです!」
え、これで使えてるのか、魔法……。
「こんなすごい銃、ありがとうございます! バウワウ卿!」
「ダイヤモンドさん!この武器の名前ってあるんですか?」
「そちらはノクターンと言います!」
ノクターンか。めちゃくちゃかっこいいけど、体がゾワッとする厨二感だ。
「バウワウ卿!こんなに素敵な銃をいただきありがとうございます!一生大切にします!!」
「おう。その一生が短くならないように頑張れや」
「……はい!ダイヤモンドさん、練習場もうしばらく貸してください!」
◇
翌朝。
僕は茉椰先輩と二人で、老護者として働くため、指定された老護施設へやって来た。
「お前らか。老護者志望の二人ってのは」
僕たちの前に立っていたのは――。
美しく、そして見るからに強そうな女性だった。




