第五話 異世界での職業
「今回はお前らの罪は問わない。ただし、ちゃんと働け。それで勘弁してやる。これからギルドに連れて行く。ついてこい」
ギルド?
なんの仕事をすればいいんだ?
そもそも、この世界で僕は働けるのか?
そんな疑問が頭の中を駆け巡る。
「ただ、その前に二人ともこいつに着替えろ。その格好じゃ目立ってしょうがない。うちの軍服だ」
そう言って渡された服に着替える。
白いシャツに灰色のパンツ。
そして、紺色のローブ。
両肩には軍のマークのようなものが付いていて、グローブとブーツまで支給された。
ものすごくファンタジーな服装だ。
まるでコスプレ。
「待てよ……ここで二人で着替えるのか? いいんですか? 神様ありがとう。先輩の恥じらいながら着替える姿を目の当たりにできるなんて! 異世界来てよかったーーー!!」
「きもいにゃ」
「茉椰はこっちの部屋で着替えろ」
「和くん、今いやらしいこと考えてたでしょ」
「……」
頼んでくれれば、着替えくらい見せてあげるのに。
……そうだよなー。
そんな上手い話、あるわけないよなー。
それにしても、バウワウ卿も俺の心の中が見えるのか!?
「そんなわけないにゃ。ご主人と違って紳士なだけにゃ」
「くー……」
涙が出そうになった。
◇
着替えを終えると、バウワウ卿に連れられて監獄の外へ出た。
ギルドへ向かって街中を歩いていく。
街には食料屋、アクセサリー屋、武器屋などの露店が並んでいる。
「おお……」
こんな光景を見ると、やっぱり異世界に来たんだと実感する。
けれど、ギルドに加入して働くとなると……。
僕の中にある異世界の仕事のイメージは、モンスター討伐。
討伐じゃなかったとしても、危険な場所へ植物を採りに行ったり、魔物から村を守ったり。
仕事というより、ほとんどクエストだ。
……実際、僕は一度モンスターに襲われている。
できれば、全然危険じゃない仕事であってほしい。
そんなことを願いながら歩いていると――。
「着いたぞ。ここだ」
ギルドに到着した。
受付で加入手続きをするらしい。
「お名前を教えてください」
「和です」
「ご希望の職業はございますか?」
「デイサービスなんてないですよね?」
「デイサービス……ですか? それはどういった職業でしょうか?」
やっぱりないよなー。
きっと、この世界で聞かれている職業っていうのは、戦士とか僧侶とか魔法使いとか、そういうものなんだろう。
「主にご老人を家まで迎えに行って、施設に連れて行って、ご家族の代わりにお風呂や食事、トイレの介助なんかをする仕事です。……ないですよね?」
「老護者のことですね! ございますよ。そちらでよろしいですか?」
「……え?」
「老護者です」
「それでお願いします!」
あるんだーーー!
それなら僕でもできる!
できれば機能訓練の仕事が一番いいけど、介護士のような仕事があるなら、それでもいい。
モンスターなんかと戦う仕事じゃないなら、僕は大歓迎だ。
「こちらが案内書です。こちらに記載してある持ち物を持って、記載されている日時に、こちらの老護施設へ行ってください」
「承知しました!」
よかった……。
また、デイサービスで働ける!
ふと隣を見る。
先輩はもう手続きを終えたようだ。
「せんぱーい! 何にしました?」
「私は老護施設で働くよ!」
「えっ?」
「こっちに来てから、老護施設の馬車を見たの。だから、働くとしたらそこだなーって決めてた!」
「先輩らしいですね。僕も老護施設を紹介してもらいました! 案内書、見せてもらってもいいですか?」
「もちろん」
二人で案内書を見比べる。
……どうやら内容は全く同じらしい。
また先輩と同じところで仕事ができる。
そう思った瞬間、少し嬉しくなった。
「……って、先輩。持ち物のところ、よく見てください」
「持ち物?」
「『使い慣れた武器』って書いてあります」
「……武器?」
僕と先輩は顔を見合わせる。
「老護施設に武器なんて必要あるんですか?」
「この世界は、みんな武器を持ち歩いてるから、持っていて当たり前ってことなんじゃない?」
「当たり前なら、わざわざ持ち物に書きますかね?」
「……確かに」
「バウワウ卿に聞いてみましょう」
◇
「老護者? すまん。知らんな」
バウワウ卿は案内書を見ながら首を傾げた。
「また、珍しい職業を選んだんだな。まあ、ちゃんと働くなら問題ない。二人とも頑張れよ」
「あまり知られていない職業なんですね」
「少し不安ね……」
「僕、武器を手に入れないといけません」
「就職祝いだ! 俺が好きなの買ってやる」
「えっ?」
この人、本当に見た目からは想像できないくらい優しいな。
でも……本当は武器なんて使いたくない。
「この世界のお金も持っていないので、本当にありがたいです」
ということで、武器を仕入れに行くことになった。
街の武器屋へ向かって歩いていると、僕は露店を指差した。
「バウワウ卿、あの武器屋じゃないんですか?」
「ああ?」
「あそこにも武器が売ってますけど」
「お祝いに買う武器だ。あんな露店にあるような武器では不十分だ。もっといいものを買ってやる」
そう言うと、バウワウ卿は露店ではなく、立派な建物の中にある武器屋へと僕たちを連れて行った。
「いらっしゃいませ!」




