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酒場に二人はいた。
なぜならば、パーティーを組むことになったからだ。
スカルの誘いにフランは乗った。
なぜならば、彼女の夢に共感したからだ。
酒場にはハンターばかりがいる。
この場所はかなり男臭い場所だった。
もちろんここには女性もいる。が、ハンターになると、女性だろうが、フェミニンな男性だろうが、みんなすべからく男臭くなるのだった。
酒場でできることはいくつかある。依頼を受注すること、本日のダンジョンの様子や、フィールドの様子を確認すること、天気予報を見ること、そして、なによりも大事な機能としてあるのは、パーティーを組むということ。
酒場以外でパーティーを組むことは許されていない。
ハンターは国家資格なので、勝手なことを勝手にやっていいわけではないのだ。必ず、酒場にパーティーの記録を残してから、冒険に出なければならない。
なので、二人はここに来ていた。
ここで、パーティーになろうとしていた。
彼女の夢は、憧れのハンターのようになりたいというものだった。
明らかに自分に向いていないことをしている理由はそれだった。
そして、偶然にも、フランがこれをしている理由もそれだった。
だから、二人は一緒のパーティーになることにした。
スカベンジャーをやる前のスカルはその見た目から多くのパーティーに入れてもらうことができていた。が、その実力から追放されることばかりだった。本当に、ハンターとしてはギリギリの実力しかないので、普通にしているだけでも追放されてしまうのだ。
追放されてもハンターを続けたかったスカルはスカベンジャーになった。
「本当にいいんですか?スカベンジャーですけど、私」
「ならやめるか?」
「やめないです。やりましょう」
「そうだ。最後に言っておくが、俺と一緒にハントをするのは、それなりに面倒だと思うぞ。特に、君みたいな人はそうだ」
「どういう意味ですか?」
「シンプルな話だ。俺は、理由はわからないが、女性に嫌われている。だから、俺が女性と一緒に何かをしていると、必ず何かしらの邪魔が入るんだ。俺としては、性別なんてどうでもいいんだが、どうしても俺の近くにいると、その性別のせいで面倒なことに巻き込まれることになるが、それでもいいか?」
フランの事情は彼女も知っていた。
あまりにもモテすぎている彼の近くにいると、嫉妬から面倒なことになることも知っていた。が、どうせスカベンジャーなんて面倒事の連続でしかない。
そんなことを思った彼女は、その優しさを無視することにした。
「問題ないです。逃げるのは得意です」
「別に得意なようには見えなかったがな」
実際、スカルはフランの気配に気付くことができなかった。
その指摘をされて、ギクッと言ったような反応をするスカル。
それは何かの舞台のようで、とても華やかだった。
さっきからずっと彼女のことを見ていた、酒場の男たちの数人。彼らはその仕草によって、彼女のことを好きになってしまうのだった。
未だに完全防備のフランは憎まれていた。
彼がフランであることを知らない人から憎まれていた。
つまりは、どっちもどっちだということだ。
フランにも、スカルにも、厄介なファンがいて、それによって一緒にいる異性が面倒なことに巻き込まれるということが良くあるのだった。
会話は進み、結果的にパーティーになった二人。
ちょっとした書類にサインをし、魔法印を押す。
魔法印とは、印に魔力を残すことによって、個人を特定できるようにした道具。
魔力は人によって性質が異なるので、個人を特定することができる。
さらには、魔法印は捏造することができない。
「じゃあ、これからよろしくお願いします」
「よろしく」
「早速、明日にでも行きましょうか?」
「そうしようか」
そんな二人の元に近付く男が一人。
筋骨粒々な肉体はよく鍛えられていた。
ハンターなんて粗暴な人間がほとんどだ。
だから、気に入らなければすぐにそこへ首を突っ込む。
さらにはアルコールも入っていた。
「おい!なんか楽しそうにしてるじゃねぇかっ!?」
「そうか?」
「イチャイチャしたいんだったらラブホテルでも行ったらど――」
フランは挑発されていることに気付いた。
なので、ピストルを取り出し、相手の頭に突きつける。
そうすることで、初めてその人物がフランであることが伝わった。
「お、お前、フランじゃねぇか……」
「で?どうする?俺は撃てる人間だぞ」
ハンター同士の喧嘩、殺人は罪に問われない場合の方が多い。
もちろん、裁判もあるが、それを経れば問題がない。
フランがしているのは脅しではなかった。
決闘を受けるのかどうかのチェックであった。
「……まぁ、今日のところはこれぐらいにしておいてやるよ」
「それならよかった。今度からは相手を選んで喧嘩してくれ」
そうして、この場は丸く収まった。
近くにいたスカルは(まただ)と思うのだった。
二人とも似たような境遇だったので、分かり合える部分もある。
しかしながら、まだその事には気付いていないのだった。




