4、探索者証明カード習得その2
連れられた武器が置かれている場所は槍やハルバード(槍と斧の複合体のような武器)のような長柄武器、刀剣系の両刃剣や刀、さらには投擲武器が乗せられていた。流石に火器は無かった。街中で撃つものではないからだ。
「この武器の中から選んでください。うっかり破損させてもライさんからお金を貰いますので大丈夫ですよ」
「木製だからな。折れたら炭にでもすれば良い」
つまり、破損しても使い道があるから気にせずやれ、ということである。ここまで来ればブライアンのツンデレの具合が分かってきた。
スタッフは片隅に集められて置かれていた両刃剣のうちの一本を手に取る。
「カタナがあるよ」
「刀な。使わないからな」
「それはさておき、どれにしよう」
「どれにされますか?」
「一個だけ選ばないといけないんですか?」
「複数選ぶことも可能です」
「そうなんですか」
どれか一つにしようと悩んでいたアイザックとセドリックにスタッフは助け舟を出されたことで二つまで選ぶことに決めた。
「どれ使う?」
「ナイフは使わせてくれ」
「じゃあ、短剣はもらうな」
セドリックはアイザックの左側から右側にあった三本ほとあった短剣の内一本を手に取る。そのことにアイザックは気にもとめず短剣の左側にあったナイフの柄を掴む。重さを重心を確認して使いやすさを確認する。比較的やりやすい事を確認すると懐に忍ばせた。
「長い物は?」
「じゃあ、ハルバードをもらおうかな」
「僕は弓矢をもらうな」
セドリックは壁に立てかけてあったハルバードを手に持って軽く振る。ある程度振って慣らしたのち手元に持ち直した。武器はそれに決めたらしい。
アイザックは弓と矢の入った矢筒を手に取った。矢の作られ方を見るに作って飛ばしたことがある作り方だ。枝の削り方も羽の付け方も近い。これならば少し射っていれば扱いに慣れるだろう。矢尻の部分はスポンジのような物に塗料が染み込まれている。矢で怪我をすることの防止の為だろう。十本ほど入った矢筒を背中につけ、取り出しやすさを確認する。初めて見た下から取り出せるタイプなのでやり方は何回も確認する。
「では、お相手を致します。この広場から出ること、武器破壊は禁止。終了時はライさんが止めに入ってください」
「おい! その辺りは職務範囲じゃないからって全部投げるな!」
「あっはっはっはっはっは」
軽やかに笑うのは女傑のようで、はじめに会った時のスタッフのうちの一人のような印象とはかけ離れていた。
その掛け合いを終わらせるとアイザックとセドリックの前にいつでも剣が抜けるように構える。
「それでは、始めます。お好きな時に打ち込んでください」
抜かれた剣の刀身は大体片腕ほどの長さだった。
剣先がぶれる事なくセドリックに向けられている。長物を持っているからこそ警戒されているのだ。
互いに一歩も動かず互いの動きを瞬きなどせず警戒しあたりには沈黙が広がっている。
この重い沈黙を先に壊したのはスタッフだ。
細身だというのに驚くべき瞬発力でセドリックの間合いに入り込む。下から剣を振り上げたスタッフの剣を受け止める為にセドリックはハルバードを振り下ろす。
激しく火花が飛び散りスタッフとセドリックが向き合う。
アイザックは横から矢を飛ばす。別方向から攻撃が加わったことでスタッフはハルバードを押しのけ少し後ろに飛ぶ。
「あっ、ぶね!」
「大丈夫か?」
「なんとか」
急に接近されたことで反射的に動かなければセドリックの身が危なかった。
それだけにアイザックに怪我はないか心配されているが、打ち合っただけなのでそこまで言うほどの怪我はない。
もちろん、一撃だけでスタッフからの攻撃が終わるはずもなく、攻撃が再開される。
今度はアイザックに向けて近づき剣を体の後ろに隠した低い姿勢からの高速移動、からの左側から剣で薙ぎ払おうとする。それに気づいたアイザックはセドリックの肩を掴んで後ろに逃げる。セドリックはハルバードを左側に立て剣を受け止める。着地したアイザックが矢を撃つとスタッフは左に避けた。
避けた先で方向を変え、またセドリックに向かう。今度は突きだ。それを紙一重で避けて斧の部分を振り下ろす。かなりの風圧があたりスタッフはハルバードから離れるように飛び退いた。その際少しの髪が切れたようだ。
もう一度とばかりに駆け出したスタッフが剣を振り下ろす。
「そこまで」
ブライアンが間に入り、双剣でそれぞれの攻撃を受け止める。
「終わりだ。矛先を納めろ」
「はーい」
止められたことで湧き上がっていた血の気が引いたスタッフは素直に剣を下ろす。もうこれ以上の攻撃はされないと判断し、警戒を解いた。先ほどまで打ち合っていたのだからどれほどの刃こぼれがあるのか確認する。それほど刃こぼれは無さそうなのを確認すると元あった場所に戻す。アイザックは放った矢を回収している。
「一つ、気になることがあったのですが」
「何でしょう?」
先ほどの戦闘で疑問があるのかスタッフはセドリックに尋ねようと話しかける。
「あなた達に教えたのは一体誰なのでしょうか? よく見たことがあるようなやり方で、少し気になって」
「オリビア先生です。現在は実家に帰っているらしいですが」
オリビア、の名を聞いたブライアンは目を見開き、スタッフは頭にハテナを浮かべた。
「おりびあ?」
「ああ、オリビアか」
どうやらブライアンは心当たりがあるらしい。
「ライさんは知っているんですか?」
「昔はクレアと名乗っていた人だ」
「クレアさん!? あのクレアさん!?」
「そのクレアさん」
どうやらオリビアはこの世界に来たことがあるらしい。その時はクレアと名乗っていたことも
「本名オリビアって言うんですか?」
「クレアは家名の一部から取ったって言ってたぞ」
「へー、そうなんですね」
クレアのー? なんとかかんとか、という家名だったはずだ。
「あー、なるほど。クレアさんのお弟子さんですか」
「それで納得するのか」
「だってあのクレアさんですよ。あの一人で一つの街を救ったって言われているクレアさんですよ!? それなら変な技術を教えていることにも納得しますよ」
スタッフさんの言葉にブライアンはなんとも言えないように斜め下の方を見る。
「変な、ねえ」
何か思い当たることでもあったのか少し暗い表情になった。だが、それも一瞬で元通りの表情に戻った。
「まあ、普通に生きている上で役に立つと言いくるめられて覚えるものでは無いのは確かだな」
「そうですね」
それで疑問は晴れたようだ。
「分かりました。カードを発行しておくので、受付でお待ちください」
「「ありがとうございました」」
しばらく待つとカードを二枚持ってきてアイザックとセドリックに渡してくれた。
スタッフさんの名前はチェルノさんです。本編ではスタッフとしか名乗らなかったので出てきませんでした。




