3、探索者証明カード習得その1
しばらく道沿いに歩いていると大きな館に着いた。昔、別荘として作られた館を全ギルド長とやらが買い取り、改修工事でこうなったと聞いた。
デーヴィッドは顔を出すと面倒ごとになるからと、いつの間にかお面をつけて深くフードを被って気配を消している。
「じゃあ、私は待ってますね」
「ありがとうございます」
行ってらっしゃい、とデーヴィッドは手を振って人波に紛れていく。よほど見つかることを嫌っているらしい。そんなデーヴィッドから目を離し、ギルドへと向かう。
少し気になることがあるように二人に目を向けた。
「お前たち」
「イザとセドですね」
「分かってますよ」
「なら良い」
そう言って、前を向き直した。
ブライアンはギルドの扉を手で押して中に入る。それに続いてアイザックとセドリックも中に入る。半分酒場、半分案内所のような一階と上に続く階段がある内装だ。かなりの人がいる。それでも着られている服は革装備や動きやすそうな服ばかりで甲冑装備とかは無い。
カウンターで事務作業をしていた受付嬢の人がブライアンに気づいて姿勢を整える。
「ライさん、いらっしゃいませ。本日は何のご用で?」
「この二人にカードを渡してやって欲しい」
この二人と紹介された相手を受付嬢は確認する。
この辺りではあまり見られない整った服装、綺麗に手入れされた靴、そしてそれらに似合わぬ雰囲気と佇まい。明らかに只者ではないと理解しつつもここに来る人が持つべき技術では無い為そこらの一般人と同じと心配する。
「腕は確かなんです?」
「そこらへんの不審者ぐらいは自力で撃退できるぞ」
「なるほど」
特にその辺りの話はしていないのだが、情報が回っていると言うことはリサが話していたのだろう。そこら辺にいる不審者と言っても様々なバリエーションの人間がいた。
「実力は証明する。ただ、探索者としては向いていないと聞いているから護衛役とでも」
「分かりました。武器などの所持はどうしますか?」
カウンターの中から一枚の紙を取り出し、インク壺に羽ペンの先を付け、さらさらと何かを書き込んでいく。
「どうする?」
「どうしたらいいんですか?」
質問に質問を返されてその辺りの説明はまだしていないことに気づいた。
温泉から出てくる硫黄を使って作られる火薬を使った火器というのもあるが扱いは極度に難しい。と言うにも使用に気を配らなければいけないことが難しい。高速で飛ぶ弾に火を使う。かなり危険であるから使う人がかぎられている。
「お前は火器の類いは使うな。危なっかしい。お前は、好きなの使え」
「いや、好きなの使えって言われても」
「…………実物を見ていないか」
ブライアンは二人が好きなのと言われてもどんなものがあるか知らないことにも気づいた。明らかな説明不足である。
この後どうするか受付嬢とブライアンは目線だけで会話する。
受付嬢は、はあ、と通話器でどこかに連絡を入れる。一言二言話した後、通話を切った。
「わかりました。手配しましたので訓練所に来てください」
「助かる」
どうやら訓練所というところを手配してくれたらしい。
そこまではブライアンガ案内してくれるらしい。
「受付嬢って忙しいんですか?」
「あの人だかりを見ていなかったのか?」
「忙しいんですね」
ギルドの中は常に人がいるような状況だった。その人達の相手をしたり、話を通したりしている分を考えると忙しいのは間違いないだろう。
「それで、何をしたら良いんですか?」
「特に。いつも通り動け」
「そんな大雑把な、」
いつも通り、とはいえ何がいつも通りか知らないのにそんな話をしてくる。
「おそらく弟子とでも思われているから、壊さない程度に好きにやれ」
「雑じゃ無いですか? そんな感覚で行っていいんですか?」
その言葉にブライアンは何も話さなず前を見るだけだった。アイザックは何も答えてくれることはないと察してため息が出た。
「分かりましたよ」
アイザックが答えるとブライアンの表情が少し緩んだ。だが、幻だったかのように元の顔に戻ってしまった。
「武器は支給されたものを使え」
「持ち物は」
「預かるか、置いておくか、どちらがいい?」
「預かっておいてください」
「持っておこう」
などという茶番劇のような会話があった。とは言っても渡す荷物はほぼ身ひとつであった為、軽くした旅支度の道具ぐらいでしか無い。
そんな事を話していると訓練場に着いた。着くと待っていたスタッフがブライアンを見つけて寄ってくる。
「ライさん。お久しぶりです。いつものお連れ様は」
「外で待ってる」
「ああ、なるほど」
よほど親しいのかスタッフさんは適度な距離を保ちつつ、ブライアンの近くにいる。
「えっと、お知り合いですか?」
「そうです」
「いいや、別に」
正反対の返答にアイザックとセドリックは困惑する。
「うちのおばあちゃんの歳の離れた友人と聞いています。私的には昔からいるたまに顔を出す親戚のおじちゃんみたいな感じです」
「そんなに行ってた覚えはないぞ」
だが、何回かは行っていたらしい。
「それでもあなたの綺麗な姿は小さい頃の私にとって天使様みたいだったんですよ」
「そんなものに例えてほしくないがな」
天使という存在はそんなものと、言えてしまうほどには知っているのか。
「さっさと確認してくれ。まだ用事あるからな」
「この人達の家探しに行かれるんですね。了解です」
「…………いつの間に翻訳機能身につけたんだ?」
信じられないとばかりにブライアンは目を開く。
「お連れ様に、子供の頃「こいつはツンデレと呼ばれる種類の人間だから翻訳機能は身につけたほうがいいよ」と言われて身につけました」
「あの野郎」
本当に余計なことだと思っているのかブライアンは盛大なる舌打ちを披露した。それをスタッフは涼しい顔で受け流す。
「では、お話を聞かせてもらいます」
「「お願いします」」
スタッフによる聞き取りが始まった。
「不審者から逃げ回ったことは何度かあると聞いていますが、本当ですか?」
「本当ですね」
不審者とは、リペル目当ての変態や、アイザックに付き纏っている者や、セドリックにつけ入ろうとした者の事だ。全て未然に防いでいる。リペルに関してはリペルに接触する前にアイザックか、セドリックか、保護者がボコボコに潰している。
「自力で壁登りとかは」
「子供の頃にやれと言われて」
「練習させられた覚えが」
アイザックの家の近くに下が海の崖を安全装備付きではあるが登ったことがある。登る時に作るべき形状の結界、道具、動き方それらを経験と称して教えられていた。今思い出しただけで半分地獄のような日々でアイザックとセドリックそろって遠い目をする。
「他にはどんなことができますか?」
「崖登りとか、森の中の歩き方とか、縄の作り方、結び方あとは何があったっけ」
「対人戦、対軍戦、人外の対応、急所、怪我の対処法とかか」
何でそんな事を教えられているんだと言う目で見られる。小さい頃にオリビアから覚えていたら絶対将来役に立つと言いくるめられて覚えた技術だ。現在進行形で役に立っている。
「得意な武器とかは?」
「ナイフとかの片手剣」
「同じくナイフとか、あとは槍」
「ふむふむ」
スタッフはさらさらと紙に書き込んでいく。そんな事を知って何に使うのか。
「お二人の関係は?」
「兄弟弟子かな」
「分かりやすいのなら多分そう」
他にも一番の友人や、昔なじみ、上司と部下などがあるが、この場合一番わかりやすいのは兄弟弟子だ。
「では、実戦に移りましょう」
「「分かりました」」
そして、武器が置かれていた場所へと案内された。




